カニだけどカニじゃない?ヤドカリの仲間<タラバガニ>の秘密 お腹に隠れた小さな2本の脚
タラバガニが美味しい季節になりました。
焼いたりしゃぶしゃぶにしたりなど大活躍のタラバガニですが、実は「カニ」ではないことを知っていますか。
かくいう筆者も、知人から教わるまではダラバガニのことを完全にカニだと思っていました。
タラバガニは何者?
タラバガニの見た目はまさにカニですが、分類学ではヤドカリの仲間とされています。
実は分類学でカニと呼ばれる生物は、エビ目カニ下目であり、ヤドカリはエビ目ヤドカリ下目に属しているのです。そして、タラバガニは後者のヤドカリ下目に属しています。
タラバガニとヤドカリの共通点
タラバガニの外見はカニにそっくりですが、ヤドカリと同じ特徴をいくつか持っています。
1つは脚です。
成体ではとても小さく裏側にしまいこまれているため見逃しがちですが、タラバガニにはヤドカリに非常に似た“曲がった脚”がお腹に付いています。
もう1つは、幼生の時の形態です。
ヤドカリの仲間は成長の過程で「グラウコトエ」と呼ばれる期間がありますが、グラウコトエ幼生の姿はヤドカリもタラバガニもよく似ています。形態を見ればヤドカリの仲間というのも納得でしょう。
このように、私たちが良く知るヤドカリの姿に非常に近しいのです。
脚を観察してみるとより「ヤドカリ」
タラバガニの脚もよく観察してみてください。
カニとヤドカリはどちらとも、エビ目もとい十脚目というグループに属しています。これは脚が5対10本(うち1対はハサミ)あることが由来です。
カニの代表ともいえるズワイガニは5対10本。タラバガニも大きく太い脚は4対8本しかないように見えますが、普段はお腹に隠されている小さな1対の脚を有しているのです。
これもまさにヤドカリの特徴と一致しています。この小さな脚はお腹の掃除などに使われているそうです。
ヤドカリなのにカニの名前がつく生き物は他にも
ヤドカリの仲間なのにカニと名前がつくものはタラバガニだけではありません。
大きく異常な存在感を有するヤシガニも、カニと付くのにヤドカリの仲間。タラバガニと同様に見た目が似ていることから、名前にカニとつけられています。ただし、こちらは成体でもヤドカリの雰囲気がありますよね。
他にもハナサキガニやアブラガニなど、食用とされている「カニ」には意外とヤドカリの仲間がいます。カニを食べるときは是非、その分類や体の構造を確かめながら食べてみてください。
(サカナトライター:バノレイ)
参考文献
国立開発研究法人 水産研究・教育機構-おさかな瓦版(No.12 2006年8月刊行「タラバガニ」)