異変を見つけたら引き返せ!観る者を試す没入型サバイバル体験。二宮和也主演・映画『8番出口』レビュー
2025年8月29日(金)に公開される映画『8番出口』は、観察力を刺激する新感覚の作品です。主演を務めるのは二宮和也。監督は『百花』で注目を集めた川村元気が担当し、原作は2023年に個人開発でリリースされ、世界中で話題となったインディーゲーム「8番出口」です。
「ただ地下通路をさまよい、異変を探すだけなのになぜかやめられない」──そんな不思議なゲーム体験を、映画という形で再構築した意欲作となっています。
地下通路をさまようだけ…なのにハマる。不気味な体験をスクリーンで再現
舞台は白く無機質な地下通路。ただ進むだけの空間ですが、観客はぼんやりと眺めているわけにはいきません。極めてシンプルな4つのルールを守らなければいけません。
【ルール】
・異変を見逃さないこと
・異変を見つけたらすぐに引き返すこと
・異変が見つからなかったら、引き返さないこと
・8番出口から外に出ること
しかし、この単純さが思わぬ中毒性を生み出しています。
視線を研ぎ澄まし、違和感を探す。それだけのはずなのに、不思議と緊張が走ります。映画でもその構造は踏襲されており、観客は、目に映る“当たり前”の中に潜む異質さを拾い上げる力が試されます。
やがてスクリーンの奥に続く通路は、観る者自身の観察力に問いかけてきます。
現代の無関心を映す鏡──『8番出口』が突きつける“見る”という行為
本作の核心にあるのは、観る者が「異変を見つけられるかどうか」という問いかけです。通路を歩くだけのシンプルな構成の中に、不穏な違和感が散りばめられており、観客には“見落とさない目”が求められます。
川村元気監督はこの映画を、現代に生きる私たちへの寓話として描いています。
SNSやニュースで目にする数々の出来事を、私たちはつい無意識にスワイプして流してしまう。見ているのに気づかない。気づいても何もしない。その繰り返しが、どこかで心に澱のようにたまり、やがて見過ごせない“異変”となって姿を現す──。
本作は、そんな“鈍感さ”や“無関心”こそが現代的な恐怖なのではないかと、観る者にそっと問いかけてきます。
セリフは少なくても印象的。二宮和也が演じる“静かな違和感”
主演の二宮和也が演じるのは、“迷う男”。セリフは控えめで、表情も大きくは動きません。それでも彼の存在は、観る者の記憶に強く刻まれます。
特に注目したいのは、異変が「起きていない」シーンでの表現力。何気ない一歩一歩に、わずかな揺らぎや違和感がにじみ出ています。まるで、自分自身に「大丈夫、異変はない」と言い聞かせているような動作が、観る側の不安を呼び起こします。
観客が“プレイヤー”になる仕掛け
本作は、主人公が地下通路を歩きながら、貼り紙やポスターの内容を読み上げていきます。観客はその行動に自然と引き込まれ、「どこかに変化がないか?」とつい画面の隅々に目を凝らしてしまいます。これは異変を探させるための演出であり、同時にゲームをプレイしているような感覚を生み出す仕掛けでもあります。
鑑賞中は、まるで“プレイヤー”になったかのような感覚に陥り、「今のシーン、何かおかしかったのでは?」と目を凝らし続けてしまいます。結局“異変”がなかったシーンでも、なぜか胸騒ぎが残る。その“疑心暗鬼”が、まるで自分がゲームの中に入り込んだかのような緊張と没入を生み出していて、自然とスクリーンに引き寄せられていきました。
映画『8番出口』は、異変を“探す”ことそのものが体験になるように設計されています。観客はスクリーンの前で、気づけば映画の中の“ルール”に従って行動しているのです。
気づくことで深まる不安。あなたの“目”が試される
『8番出口』は、ジャンプスケアや驚かせる演出も取り入れながら、それ以上に“違和感”や“気づき”がもたらす静かな緊張感で、じわじわと観客を追い詰めていく作品です。異変に気づいた瞬間、それは正しい判断か、それとも踏み込んではいけない一歩だったのか──。
スクリーンの中を覗いているはずが、いつの間にか“スクリーンの内側”にいるような感覚に陥る本作。異変に気づいた瞬間、ゾクリと背筋が震えます。この映画は、単に観るものではなく、「体験する作品」として設計されています。その結末を、ぜひスクリーンで確かめてみてください。
映画『8番出口』基本情報
公開日:2025年8月29日(金) 全国東宝系にて公開
出演:二宮和也 河内大和 浅沼成
花瀬琴音 小松菜奈
原作:KOTAKE CREAT「8番出口」
監督:川村元気
脚本:平瀬謙太朗 川村元気
音楽:Yasutaka Nakata(CAPSUL) 網守将平
公式HP:https://exit8-movie.toho.co.jp/