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「武道館やアリーナで会いましょうーー。」新たなシーンの胎動を象徴するSATOH、メジャーデビューを経てさらなる高みへ

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SATOH

SATOH『Monkeys Release Tour』2024.08.3(sat)SHIBUYA WWW

熱帯夜に喘ぐ8月3日の夜、SHIBUYA WWWでSATOHを観た。TOY’S FACTORYからのメジャー第一弾リリース『Monkeys』のリリースライブだ。そういう意味では新人だが、数年前から東京アンダーグラウンドのライブパーティー「FLAG」を主宰する、新たなシーンの胎動を象徴する存在だ。一体どんなライブをするんだろう。先入観無し、初見ゆえのまっさらな感性でしっかり観よう。

「WWW、調子はどうですか。『Monkeys』のリリースパーティー、よろしくお願いします」

オープニングアクトのラッパー・aryyが温めた場内に、ピンク色の短髪のボーカルと、金髪にキャップをかぶったギタリストがふらりと現れる。ベースとドラムはサポートだ。ぶっきらぼうだが丁寧な言葉で挨拶すると、エレクトリックギターをつま弾いておもむろに歌い出す。1曲目は「Taxi」。ノイズまみれの破壊的なギターロックに、ループするダンストラックを混ぜ合わせた、激的なサウンド。コール&レスポンスを呼び掛けてフロアの熱気を高める、ふてぶてしい態度と個性的低音ボイスが特徴の、ボーカルはLinna Figg。

Linna

kyazm

「俺の大好きな女の子に作った曲です」

「you hate caffeine」のソリッドで中毒性の高いリフを繰り出す、ストイックなギタリストはKyazm。たぶんポップと言ってもいい、メジャーコードのキャッチーなメロディが耳に残る曲だ。4曲目「OK」まではニューEP『Monkeys』からの曲を畳みかけて一気に飛ばす。ギターを外してマイクで歌う、Linna Figgの細身の身体にはいかしたパンクスのムードがある。ただし楽曲のイメージはパンクというよりはニューウェーヴ、いやノー・ウェーヴか。ひきつったノイジーなギター、執拗に繰り返すシンプルなコード、時にポエトリーに聴こえるラフなメロディ、ラップを感じるフロウ、そして叫び。「pink head」のような、内省的でメランコリックなミドルチューンも含め、新世代ミクスチャーの香りがぷんぷんする。アコースティック・ギターの弾き語りで「7」をやったのは、意外だったがはまっていた。ライブだと意味まで伝わりにくいが、Linna Figgが詩人であることはよくわかる。

SATOH

「次の曲はみんなで飛び跳ねる系なんですけど、行けますか」

「ON AIR」ではラブリーサマーちゃんがステージに飛び込み、一緒に飛び跳ねる。オープニングをつとめたaryyが再登場し、「I think I’m drunk」「Seventeen」を共に盛り上げる。aryyと同じくHEAVENに所属するRYON4が「Paypay」でフロアを煽る。ゲストを迎えると、Linna Figgのパフォーマンス能力がワンランク上がる気がする。ステージ上でのコラボやバトルが根っから好きなんだろう。

kyazm / aryy / Linna

RYON

日本のロックを俺によこせ。そんなリリックが突き刺さる未発表の新曲「Save this universe」を経て、ギターロック色の濃い激しい楽曲を連ねてぶっとばす。「Rainbow」から「Monkeys」へ、テンポがぐんぐん上がる。ニューヨーク在住のHarry Teardropと共作した「Aftershow」は、インディーロックの香り高いハイトーンのきれいなメロディが心に残る。

「残り3000キロの夜間飛行、一緒に飛んでくれる人はどれくらいいますか」

who28の「夜間飛行」はSATOHをフィーチャリングした曲だったが、今夜はSATOHのステージにwho28が飛び乗って共にロックする。フロアには一行目からリリックを全力歌い続けるオーディエンスが溢れてる。

who28 / Linna

熱気の中でふと我に返ったように、メジャーデビューに至るまでの過去1年間の焦りや苛立ちを、詩をつぶやくようにぽろぽろと語るLinna Figg。そんな気分の中で、「大きな会場で、一緒にモーメントを共有できたら」と思って作った曲「ゆらせJP」も、のっけから大合唱が沸き上がるアンセムだ。リリックの力が、オーディエンスにぐさりと刺さっているのがよくわかる。スタイルはロックだが、言葉のチョイスと意味とリズム感はラップに聴こえる。計算ではないナチュラルなハイブリッドが、焦りと苛立ちと希望をまぜこぜにした、若くフレッシュな世代の言葉として力強く響き渡る。

「みんなと一緒に歌えば、これを作った時の俺が喜ぶと思います」

「Fuse」もまた、オーディエンスとの完璧な掛け合いコーラスが決まる代表曲。Linna Figgのパフォーマーとしてカリスマ性、世代を代弁するようなリリックのチョイス、ヒップホップとロックとダンスを横断するKyazmのサウンドメイク、オーディエンスの熱いシンパシーが生む、ベタつきのない独特の一体感。「Welcome to life」から「TOKYO FOREVER」へ、ロックサウンドの強みを最大限に生かして盛り上げる。オーディエンスをしゃがませてから跳ばせるパフォーマンスも交えて、最後までしっかり惹きつける。

Linna

「カマシと思われたくないんだけど、俺らマジで、日本のロックのトップを取ろうと思ってます」

 武道館やアリーナで会いましょうーー。照れも驕りもなく、淡々とした口調ででっかいことを言ってのける、それがSATOHの生きる道。アンコール「Big Man」を歌いながら、Linna Figgがフロアに飛び込んでオーディエンスに紛れ込んだ。元気なバンドキッズともやんちゃなヒップホップヘッズとも違う、SATOHのオーディエンスはとてもジェントルで優しい雰囲気がある。彼らと共に、東京アンダーグラウンドからライブハウスを経て、どこまで行けるのか。メジャーデビューを経てさらなる高みへ、SATOHの存在の新しさとポテンシャルの高さがしっかりと感じ取れたライブだった。

取材・文=宮本英夫 撮影=Soh Syutetsu

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