新春特別医療企画 連携強化で医療サービス向上を 小田原医師会・渡邊清治会長に聞く
感染症法上の分類「5類」への引き下げもあり、ここ数年新型コロナウイルス対応に追われてきた医療機関も一定の落ち着きを見せている。一方で高齢化の進展、労働力不足など「2025年問題」も指摘される中、持続可能な医療体制への再構築も課題だ。県西1市3町(小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町)を管轄し、地域医療を支える小田原医師会の渡邊清治会長に現状とこれからについて聞いた。
コロナ、インフルは予防が肝心「冬の脱水症状」に注意
――感染症法上の分類「5類」引き下げなどもあり、市民生活でも新型コロナへの対応に適応できている感があります。医療現場での認識はいかがでしょうか。
「確かに新型コロナは一般化しつつあり、今はちょうど沈静化しているところです。最近、ワクチンに耐性がある新しい株が出始めているとの報告がありましたが、以前に比べて重症化も少なくなっています。それほど感染は大きく増えないと考えています」
――季節性インフルエンザと同じように考えれば良いでしょうか。
「そうですね。ただインフルエンザは流行する時期がある程度決まっているので、用心するべきタイミングが分かりやすい。また症状もはっきりしている。一方で、新型コロナの流行は季節を問わず、また症状も分かりにくいのでじわじわと蔓延する点が要注意です」
--やはり予防が重要になりますね。
「毎回お伝えしていますが、石鹸での手洗いとうがい、そしてマスクが一番大切です。また咳が出るなど自覚症状がある人は、他人にうつさないためにもマスクをしてください。コロナ禍の時には、インフルエンザや風邪も非常に少なかった。みんなが予防を徹底していたからだと思います」
--ほかに冬の健康ケアのポイントは。
「冬場の脱水症状に要注意です。厚着や布団を重ねて寝ていると、汗をかいていることが多いです。喉が渇いたと感じた時にはすでに脱水状態ですので、こまめに水分を摂ってください。寝る前にコップ一杯の水を飲むのも良いですが、ホットミルクやココアなど温かいものを少し飲むと眠りやすくなります。またストレッチをしたり布団の中で肩を上下に動かすなど軽い運動で血流を良くすると、冬に低下しがちな免疫力を高める効果が期待できます」
地域医療の体制強化、将来のケアについて
――小田原市、足柄下郡の現在の医療課題は何でしょうか。
「高血圧に加え、腎臓疾患が最近のトピックです。地域に腎臓専門医も増えましたので、腎疾患予防のネットワークづくりを進めています。また昨年6月の診療報酬改定で生活習慣病(高血圧症・脂質異常症、糖尿病)については、患者さんごとに数値目標を示し療養計画を立てるよう指針が示されました。小田原医師会としても生活習慣病の予防、改善に引き続き取り組みます」
――高齢化の進展、医療費増大、労働力不足等による医療の「2025年問題」への対応は。
「県西地域は、ニーズに対してベッド数が多すぎると指摘されてきました。改善が進まず、ここで国が積極的に支援する『推進区域』になりました。いわばイエローカードですが、逆に支援が受けられるチャンスだと思っています。団塊ジュニアが65歳以上となる『2040年問題』もあります。その時、高齢によって具合が悪くなる地域の人をどう受け入れて医療を提供し、どこに戻すか。支援を受けながら将来提供するケアについて考えたいと思います」
――新しい小田原市立病院の開院予定2026年春まで1年余りとなりました。
「先進の医療機器や設備が導入されますが、それを医療現場でいかに活用できるか。また手術の前段階や後に、患者さんにどのようなサービスが提供できるかが重要です。いずれも人の育成がカギで、しっかり準備を進めてほしいと思います。また基幹病院として、地域全体への機能強化も求められます。小田原医師会の地域医療連携室が持っている豊富な情報を市立病院とリンクすることで退院管理に役立てることも可能となり、地域医療サービスの質は向上します。医師会として市立病院にさらなる連携強化を働きかけて参ります」