「ダンカンがいた時のように…」琉球ゴールデンキングスのジャック・クーリー、広島戦で“キャリア最多タイ”のOR11本を奪取できたワケ
プロバスケットボールBリーグ1部(B1)西地区の琉球ゴールデンキングスが上々なスタートを切っている。今月開幕した2024-25シーズンにおいて、10月に行った9試合は6勝3敗。首位を走る島根スサノオマジックと2ゲーム差の2位につけている。 多くの主力が退団し、新チームとして熟度を高める途中段階にあるキングス。開幕戦でいきなり新加入のPG伊藤達哉が負傷離脱したことも考えれば、上出来と言えるのではないだろうか。 B3の横浜エクセレンスから期限付き移籍で加入したPG平良彰吾は早速2番手のガードとして定着し、強烈なディフェンスや勝負強いスリーポイントシュート(3P)などで存在感を発揮。ヴィック・ローや岸本隆一、ケヴェ・アルマら5人が平均で二桁得点を記録し、チームスタッツの平均87.3点、リバウンド平均44.1本はいずれもリーグトップだ。 23日の島根とのアウェー戦で61ー98で大敗を喫するなど波こそあれど、チームで戦えている時の力はリーグ屈指のレベルにある。 そのような中、キングスが100ー82で勝利した10月26日の広島ドラゴンフライズとのホーム戦では、試合後の記者会見で印象的な話題が出た。この日、17本ものリバウンドに加え、キャリアハイの33得点という“怪物”スタッツをたたき出したジャック・クーリーに関する事である。 この一戦におけるクーリーのスタッツで、もう一つ輝きを放ったのが、オフェンスリバウンド(OR)11本という数字だ。リーグ全体で歴代最多となる3度のリバウンド王に輝いているクーリーにとっても、キャリアハイと並ぶ本数だった。 クーリー自身と桶谷大ヘッドコーチ(HC)が、これだけの数を奪取できた理由に触れた。
「生き返る試合に…」チームスピリット取り戻す
まずは26日の広島戦から振り返りたい。 スタートは岸本、松脇圭志、脇真大、アルマ、クーリーの5人。島根戦の悔しい負けから3日後の試合とあって、締まったディフェンスでゲームに入る。3Pの確率はなかなか上がらないが、前半からクーリーが13得点、8リバウンドとゴール下を制圧し、セカンドチャンスポイントを連発して51ー38で折り返した。 後半、広島はニック・メイヨが負傷離脱して苦しい戦いとなり、クーリーの存在感が一層増す。岸本も勝負所で連続3Pを沈めるなど勝負強さを発揮し、じわじわと引き離して逃げ切った。 殊勲の活躍を見せたクーリーは「(昨シーズンの)チャンピオンシップで自分たちを破ったチームに勝つことができてうれしいです。水曜日の試合がタフだっただけど、良い試合を見せることができた。ハードにプレーしたチームを誇りに思います」と振り返った。 チームは島根戦後、1日のみの練習を経て広島戦に臨んだ。その練習では、広島のスカウティング以上に重視したことがあったという。桶谷HCが明かした。 「大敗した前節も含めてここ何試合かずっとそうでしたが、点数は取れてるけど、試合の入りで点数を取られてる。今まで自分たちが良くなかったところをもう1回正そうという準備をして、今日を迎えました」 その上で、内容を高く評価した。 「最終的に82点取られましたが、最初の5分でみんながやるべきことを徹底してくれました。誰が味方で、誰が敵かということも、もう一回はっきりさせようという話をして、今日はしんどい時間帯もネガティブなアクションをする選手がいませんでした。このチームがもう1回生き返るための試合になったと思います」 得点が100点に乗った要因についても「チームスピリットです。良いスペーシングを取って、良いシュートを打つ。ボールが動いていることが理由だと思います」と語り、チームで戦う重要性を強調した。
ケヴェ・アルマの加入で「リバウンドが取りやすくなってる」
冒頭で触れたクーリーのオフェンスリバウンドに話を移す。会見でこの話題にまず触れたのは、先にメディアの前に姿を見せた桶谷HCだった。今シーズン新加入した身長206cmのビッグマン、アルマの名前を挙げながら、こう言った。 「ケヴェのところでピックを使い、そこからシュートを打ちに行ったりしますが、そういう時は必然的にジャックが下にいるわけです。その時にリバウンドを取りやすくなっているのは良いところですね。今日はそのシーンがかなり多かったと思います」 さらに続ける… 「ジャックを外に引っ張っているのに、ジャックがダイブしていない状況でシュートを打ったりするシーンも結構ありますが、そういう時はやっぱりリバウンドが取れない。ケヴェが上でプレーできることによって、ジャックが下にいるっていうのは大きいと思います」 アルマをマークするのは、サイズ的にほぼ相手のビッグマンの一人になる。そのため、アルマがアウトサイドにポジショニングすることでマークマンが外に引きづり出され、インサイドが手薄になってクーリーがリバウンドが取りやすくなるという理屈だ。 クーリー自身も、アルマがいる事による「やりやすさ」を感じているよう。 「自分がインサイドにいる時に、ペリメーター(ペイントエリアと3Pラインの間のエリア)に他の選手がいるのは良いことです。ジョシュ・ダンカンが外でプレーし、私がインサイドでプレーしていた時と似ているので、スペースが広くなり、よりハードにプレーしやすいです。ケヴェと一緒にプレーするのはとても楽しいです」
アルマが3Pを決め、沸くキングスベンチと観客
クーリーのコメントに出てきた「ジョシュ・ダンカン」。ファンにとっては説明不要だろうが、千葉ジェッツとキングスを優勝に導いた身長205cmの優秀なビッグマンだった。 キングスには、チームが初のBリーグ制覇を成し遂げた2022-23シーズンのみ所属し、それを最後に現役を引退した。このシーズンのスタッツは11.0点、6.3リバウンド。インサイドの強さに加え、3P成功率が驚異の46.5%(159本中74本)に達し、安定感抜群のプレーでチャンピオンシップ獲得に大きく貢献した。 巨漢のプレーヤーが多いバスケットボールという競技において、選手同士が適切な距離を保ち、それぞれがプレーしやすいスペースを作る「スペーシング」は質の高いオフェンスを構築する上で重要な要素の一つだ。 当時、ダンカンはクーリー、アレン・ダーラムという重量級のビッグマンとコンビを組んでいたが、自らがアウトサイドでもプレーすることで良好なスペーシングを維持する役割を担っていた。つまり、クーリーはアルマに対して同じような能力を有していると評価しているのだ。 実際、今シーズンのアルマの3P成功率はこれまで42.1%(38本中16本)と極めて高い。45度やトップの位置を中心に、キャッチ&シュート、プルアップのどちらでも打つことができ、高い打点から放つため相手からすると止めづらい。このシュート力が相手ディフェンスに対して吸引力を生み、空いたポストのスペースで面を取ったクーリーやカークにいいタイミングでパスを送ったり、ローにアリウープパスを供給する場面も見られる。 逆に、クーリーとカークはインサイドでの吸引力を持っているため、アルマとローは3Pや飛び込みリバウンドなど能力の高さを生かしたプレーがしやすい側面もある。 ビッグマンに限った話ではなく、お互いの強みを引き出し合うような戦い方をさらに追求していけば、チームのレベルもそれに比例して向上していくに違いない。その精神こそが、桶谷HCの言う「チームスピリット」の根幹をなしているはずだ。
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