迫るG7サミット、トランプ米大統領の存在でどうなる?
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、6月11日の放送に毎日新聞論説委員の小倉孝保が出演。6月15日~17日にカナダのカナナスキスで行われる、G7による首脳会議、いわゆるサミットについて解説した。トランプ米大統領の存在で注目を浴びるサミット、現状はどうなっているのだろうか。
長野智子「こんなに心がザワつくG7も久しぶりというか。大丈夫か、という」
小倉孝保「変な意味で注目されますね(笑)。サミットは今年50周年なんです。1975年にパリ郊外のランブイエで第1回が開かれた。G6から始まっているんです。カナダだけ次の年に入った。もともとは5ヶ国で行いたかった。まず西ドイツとフランスで行おう、と。なぜかといえば1973年ごろから世界経済が一気に冷え込んだんですよ」
長野「はい」
小倉「経済の大きい自由主義体制の国で非公式的に、もっとリラックスして首脳同士で会って、経済をうまくしていこう、と。西ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスがいて。日本を入れようとしていたんですよ。欧米だけじゃ批判される、というのと、当時の日本の経済って無視できないぐらい大きかったので」
長野「ちょうど日本は高度経済成長期でね」
小倉「入ってほしい、ということで。そうしたら構想を聞いたイタリアが招待もされていないのに『入るぞ』と来た。最初6ヶ国で、すごく話題だったのが、首脳が皆、前の年(1974年)に就任した人だったんです。たとえばフランスのジスカールデスタンさん、西ドイツのシュミットさん、イタリアのモロさん、日本は三木首相、イギリスがウィルソンさん、アメリカがフォードさん。相当珍しいでしょう?」
長野「皆さん新顔で」
小倉「それから50年経って、新しい人が何人かというと、今年も結構新しい。イタリアのメローニさん、フランスのマクロンさん、あとトランプさんは1期目がありますけど、ほかは新しい人ばかり。一時期、ロシアがいてG8になっていたんですね。西側としてはロシアの民主化が促進されることを期待していた。でもウクライナ侵攻があってロシアを排除、元のG7に戻っているんです」
長野「小倉さんの本を読むと、G8にいたプーチンさんが何を考えていたのか、と改めて思いますね」
小倉「いわゆる西側のG7各国は当時、プーチンさんに、この国を民主化するだろう、だから『一緒にやろう。世界の問題を解決しよう』と。民主化や人権の尊重、他国を侵攻しない、そういうところで話し合っていこう、と期待したけど裏切られた。G7が続いてきたけど、また危機なんですね。首脳宣言が今回、たぶん出ない。とりまとめ作業すらしていない状況。トランプ大統領の考えがほかの6ヶ国、EUと比べてかけ離れている、同じ価値観を共有していない。たとえば貿易の問題、これまで自由貿易がいかに重要か入れていた」
長野「はい」
小倉「ところがトランプ政権がしているのは正反対のこと。とりまとめようとしたら問題が起きる、ぎくしゃくする。たとえば気候変動の問題、G7なら固まっていた。でもトランプ大統領ってパリ協定から離脱などして気候変動問題にも後ろ向き。去年まではウクライナ支援で一致して対ロシアの圧力にしていたのが、トランプさんは恐らく乗ってこない。だったらG7の顔を合わせて、話し合いました、というだけでもいいじゃないですか、と。とりまとめて首脳宣言、声明みたいなものは難しいね、というのが現状なんです」