南の島に住む「ドラキュラ」と呼ばれるサカナを食べてみた 調理後もドラキュラ感あり?
南の島には「ドラキュラ」と呼びならわされている魚がいます。通称どおりのおどろおどろしい見た目ですが、食べることもできるといいます。
南の島の「ドラキュラ」
黒潮が当たる温暖な海域では、様々な「カラフル魚」がヒットします。その多くは体色が赤や黄、青などの原色に黄緑やオレンジなどのパステルカラーで彩られ、南国特有の明るい日差しに照らされてまさに熱帯魚といった風貌です。
そんな中、ひときわ異彩を放つカラフル魚がいます。それはアカモンガラ。名前の通りモンガラカワハギ(南の海に生息するカワハギの仲間で、カラフルなものが多い)の一種なのですが、アカモンガラという名前で呼ばれることはまずありません。
というのも、この魚を掛けた釣り人たちはみな「ドラキュラが釣れた」と口を揃えて言うのです。見てみると、その口からは恐ろしいほどにキバが飛び出しており、そしてそのキバがなんと真っ赤なのです。
なぜ「アカモンガラ」なのか
このドラキュラことアカモンガラは、日本では南西諸島に生息しています。船釣りでしばしば顔を見られるほか、きれいに伸びた尾ビレが美しいので水族館で飼育されることも多いようです。
そんなアカモンガラ、確かにキバはきれいな赤色ですが、体色は紫色。死ぬと一気に体色が変わり緑色や青色の部分が現れますが、赤いところはありません。一体なぜこのような名前になったのでしょうか。
実はもともと、この魚は「アカハモンガラ(赤歯紋柄)」という名前がつけられていたという説があります。これの「歯」がとれてしまい、アカモンガラなる全く違う意味の言葉になってしまったそうなのです。
その味は
このドラキュラ、歯はともかくとしても体色も紫色から緑色と食欲の湧くものではありません。更に全身が鱗の変化した硬い皮に覆われており、包丁が入りません。
そのため食材としては全くポピュラーではありませんが、釣り人の中には食べる人もいるそうで、その味も決して悪くないといいます。筆者も先日偶然手に入れられたので、食べてみることにしました。
硬い外皮をキッチンバサミで切り開き、むき身にして内臓を取り除きます。これを丸ごと煮付けにしてみると、その身はキュッと締まって鶏のささ身のようになり、味も濃厚でカワハギより美味しいくらいに感じました。ちなみに赤い歯は加熱しても色褪せることなく残り、調理後もドラキュラ感は失われませんでした。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>