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北の巨大怪魚<オオカミウオ>を食べてみたら美味だった 欧州では重要な食用魚?

サカナト

オオカミウオ(提供:椎名まさと)

北の冷たい海には南のサンゴ礁ほど多くの種の魚がいるわけではないのですが、個性的な魚と出会うことができます。そんな魚の一種がオオカミウオです。動物食性で甲殻類や貝、ウニなどを捕食しますが、おとなしい性格で、水族館でもよく飼育されている魚です。

【画像】北の巨大怪魚<オオカミウオ>のフルコース? 刺身・ステーキ・皮・肝臓を実際に食べてみた!見た目の印象とは違い身は綺麗なピンク色

そして、この魚は食用魚としても知られており、実際に欧州地域ではこの仲間は重要な食用魚となっています。

しかし、日本での食用魚としての評価は残念ながら高いとはいえません。

オオカミウオとは

オオカミウオAnarichas orientalis Pallas,1814はスズキ目・オオカミウオ科・オオカミウオ属の魚です。

日本においては、東北地方や北海道に分布し、海外ではオホーツク海の北部やアラスカ湾にまで分布しています。

北海道根室産のオオカミウオ(撮影:椎名まさと)

沿岸性の魚としては大きくなる魚で、全長が1メートルを超えることもあります。上記写真の北海道根室産個体は残念ながらメータークラスには達しなかったのですが、それでも96.8センチもありました。

茨城県・新潟県以北の各地沿岸、ロシア、オホーツク海、ベーリング海、北米西海岸北部に生息します。

ゲンゲ亜目の魚とオオカミウオ科の特徴

オオカミウオ科はスズキ目のなかでもゲンゲ亜目に含まれており、この仲間には食用でおなじみのギンポナガヅカゲンゲ科の魚、磯あそびの際に出会えることが多いダイナンギンポなどさまざまな種が知られています。

ゲンゲ亜目の魚は体が細長いものが多く、一部の種は尾鰭が背鰭や臀鰭とつながり、ウナギ目魚類にも似た形状をしています。そのような種は、ウツボの幼魚などと誤同定されることもあるようです。

コモンイトギンポ。しばしばウツボの幼魚と間違えられる(撮影:椎名まさと)

なお、このゲンゲ亜目に含まれる魚には、「コモンイトギンポ」や「ダイナンギンポ」、「フサギンポ」など種の標準和名に「~ギンポ」とつく魚が多数含まれているのですが、「ギンポ亜目」とは別物なので注意が必要です。

ギンポ亜目はコケギンポナベカイソギンポカエルウオなどが含まれるグループです。

オオカミウオの歯(撮影:椎名まさと)

オオカミウオ科の魚は大きな犬歯状歯を有しているほか、後方に臼歯状歯を持っていることによりほかの多くのゲンゲ亜目魚類と見分けることができます。

同じゲンゲ亜目のボウズギンポ。歯が小さい(撮影:椎名まさと)

また細長い体には多数のしわがあることも特徴とされ、このしわは写真でも確認することができます。

浅海から水深100メートルほどの岩礁にまで見られ、ウニや貝類、甲殻類などを好み、これらの餌を捕食するときに大きな犬歯状歯と臼歯状歯が役に立っているようです。

水族館でのオオカミウオ

オオカミウオは、水族館でもよく飼育されている魚です。北方の海を再現した水槽には必ずといっていいほど同種や、おなじゲンゲ亜目のフサギンポ、さらにソイ類などが飼育されています。

オオカミウオは大きく、顔がよく見るとかわいいので、昔からよく飼育されていたようです。

水族館で撮影されたオオカミウオ(提供:PhotoAC)

また、大きくなる魚としてはあまり動かず、また、水温にさえ気を付ければ飼育はしやすいということもよく飼育されている理由なのかもしれません。

オオカミウオは日本で食用にされない?

オオカミウオは、日本では一般的に食用にはされないと言われています。

実際に書籍等でも「日本ではほとんど食用にしないが北欧産の近縁種を(略)くん製などにする」「日本では食用にしないが、ヨーロッパでは近縁種が食用にされる」など欧州産の近縁種を食する記述はあるものの、日本では食用魚でないような扱いがされているような内容が多いです。

しかしながら、オオカミウオは実際には美味しい魚であり、そしていろいろな料理に使うことができるのです。

オオカミウオを実際に食べてみた! 刺身にステーキ、内臓も

オオカミウオのお刺身は脂がよくのっていて、美味しいものです。

オオカミウオの刺身(撮影:椎名まさと)

完全に真っ白、というわけではなく、うっすら赤い身が美しいです。

オオカミウオのステーキ(撮影:椎名まさと)

オオカミウオのステーキは、ただ大きな切り身をフライパンで焼いただけという単純な料理法ですが、厚い身に弾力があり、切って食べると美味しいです。

オオカミウオの皮(撮影:椎名まさと)

オオカミウオの皮は、茹でて細く切って、ポン酢で食べると最高です。

コラーゲンたっぷりで、ぷりぷりとしています。

オオカミウオの肝臓(撮影:椎名まさと)

カワハギやマトウダイなど肝と身をセットにして食べたりしますが、オオカミウオの肝臓も同様にして食べることができます。

オオカミウオの肝臓をつぶしたものを食べてみると、味は濃厚で非常に美味しかったです。

海外産オオカミウオの近縁種

日本からは1種のみが知られているオオカミウオ科魚類ですが、世界には2属5種のオオカミウオ科魚類が知られています。

この科の魚の分布は北半球の高緯度地域にのみ生息しており、日本をふくむ北太平洋に2種、北大西洋に3種が知られています。

その中でも、シロオオカミウオモンガラオオカミウオという北大西洋に広く分布する種が食用魚として重要とされており、これが先述した「欧州で食用になっているオオカミウオ属の魚」です。

主に沿岸の延縄漁業で漁獲され、スープに入れたり揚げたりして食べられるほか、保存食にも用いられるなど用途が広いようです。

一方、大西洋に産するもう1種のクロオオカミウオは、肉がゼリー状で食用には向かないとされます。

この種は底生とされていますが、水深2500メートルの水域の中層110~450メートルの場所でも漁獲されており、ほかのオオカミウオ属とは異なった生態をしている可能性があるようです。

もう一種、アメリカ西海岸には非常に細長い体の「ウルフイール」という魚がいます。オオカミウオに似ていますが、非常に長い尾部を有しているのが特徴で、その全長も2メートルを超えます。

尾鰭は小さくその点でもオオカミウオとは容易に見分けることができます。

(サカナトライター:椎名まさと)

文献

尼岡邦夫・仲谷一宏・矢部 衞(2020)、北海道の魚類 全種図鑑、北海道新聞社

北川大二・今村 央・後藤友明・石戸芳男・藤原邦浩・上田祐司(2008)、東北フィールド魚類図鑑、東海大学出版会

中坊徹次(2018)、小学館の図鑑Z 日本魚類館、小学館

岡村 収・尼岡邦夫・武田正倫・矢野和成・岡田啓介・千国史郎(1995)、グリーンランド海域の水族、深海丸によって採集された魚類・頭足類・甲殻類.海洋水産資源開発センター

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