ミュージカル『GIRLFRIEND』キャスト6名による開幕記念会見&まずは高橋健介・萩谷慧悟ペアがゲネプロを実施
90年代のパワーポップシーンにおいて最も輝いたアメリカのシンガーソングライターのマシュー・スウィート。91年に発表したCDアルバム『GIRLFRIEND』は甘く切ないメロディとパワフルなサウンドで高い評価を得た。このアルバムをベースに、ネブラスカ州の小さな町で繰り広げられるドラマを描いたジュークボックスミュージカル『GIRLFRIEND』が、日本初演を迎える。
脚本家のトッド・アーモンドは、男性から女性に向けた歌詞に自身の経験を織り交ぜて見事に融合させ、たった2人の役者で紡ぐミュージカルに仕立てた。演出には小山ゆうなを迎え、高橋健介/島 太星/井澤巧麻(トリプルキャスト)、萩谷慧悟/ 吉高志音/木原瑠生(トリプルキャスト)と、フレッシュな6名が東宝ミュージカルに初登場。
6月14日(金)の初日を前に、キャスト6名による開幕記念会見とゲネプロが行われた。
ーー初日を前にした今のお気持ちを色に例えて教えてください。
高橋健介:まっしろかもしれないですね。
萩谷慧悟:それ、セリフ飛んじゃってない?
一同:(笑)。
高橋:今までクリエイターの皆さんにいろんな色を足してもらいました。でも、お客様が入って完成するものだと思うので、いい意味で一回忘れて。まっしろな状態からお客様に色を足してもらって、みんなで作り上げたいと思います。
萩谷:完璧! 素晴らしいです。僕はギラギラに燃えているので赤と言いたいところですが、オレンジですかね。みんなで作ってきたものをやっと見てもらえるからほっとしている気持ちもあります。
島 太星:綺麗なピンクですかね。心臓がバクバクしていて、ドキドキで楽しみ。心臓でお願いします!
一同:(笑)。
吉高志音:ちょっとくすんだオレンジをイメージしています。前に公式アカウントで太星と配信をした時に、僕はピンク、太星はオレンジと言っていたんです。入れ替わっていてびっくりしました。僕は太星がイメージしている色をずっと思い浮かべながら稽古してたから。
島:本当に? ごめん!
吉高:(笑)。キラキラした青春もあるし、この時しか感じられない気持ちを感じています。
井澤巧麻:草色です。僕らの初日は19日なのでまだ落ち着いているのもあるし、やってやろうという雑草魂的な気持ちもあります。
木原瑠生:淡いオレンジです。青春っぽい描写がたくさんあって、酸いも甘いもいろいろな経験をする2人の話なので。
ーーご自身が演じるシーンの中で一番の注目ポイントはどこですか?
高橋:はっきり言うと、僕から始まります! そこが見どころというか、物語にうまく入れるよう、集中して見てほしいなと思います。
萩谷:2人の距離がグッと近づく星空のシーンは、一連の雰囲気をすごく繊細に作っています。全チーム違うのでぜひ注目してください。
島:ネタバレになっちゃったら申し訳ないんですけど……。一幕の59ページとか。
高橋:僕らもわからない(笑)。
島:ウィルとマイクが楽しそうに過ごす時間が、僕自身も演じていてすごく楽しいですね。
吉高:楽しいシーンもたくさんあるけど、緊張感があるシーンも多い。学生である2人にしか出せない独特な間や会話のスピード感を思い出しました。その初々しさや緊張感はぜひ楽しんでほしいです。
井澤:前半、2人で座って話すシーンが結構あって、目線などの細かい部分までこだわって作っています。そこを見てほしいですね。
木原:大体言われてしまったんですが、一個言うなら、同じ場所に何回か行くシーン。その空間で起きる出来事はかなり繊細に描かないといけない。注目してほしいです。
ーー日本初演ということで、ディスカッションしながら作ってきたと思います。苦労した点、演出の小山さんから言われて印象的だったことがあれば教えてください。
木原:僕と巧麻くんで通したあと、小山さんから「木原くんのマイクは狂気的なところがあるから」と言われて、そう見えていたんだと。嬉しかったけど最初はちょっと戸惑いましたね。
萩谷:稽古が始まった頃、小山さんから、2人の関係性や90年代における同性愛の扱いについて聞きました。しかも2人は心も未成熟。相手に視線を向けるタイミングなどにも深い意味が出てくるから、たくさん計算して繊細に演じてほしいと言われました。そこから自分の中で“目線”というものをすごく考えましたね。
高橋:小山さんから、お休みの日に「ここはどうしたいですか?」と連絡をいただいたことがあるんです。少ししてから、「ごめんなさい、息子をイベントに連れて行かないといけなくて遅くなりました」と返信がきて。母親をしながら僕らのことも考えてくださっていて、本当に感謝だなと思いました。
吉高:太星と通したあと、小山さんから「応援したくなる2人」と言っていただきました。僕は太星の演じるウィルが大好きなんですが、もっと自信を持っていいんだと感じられて、関係性も深まっていったと思います。
島:出演が決まった時、小山さんについて調べたら、すごい方すぎて恐怖が湧いたんです。
一同:(笑)。
島:でも、すごく人間味があって。健介さんがお話ししていた仕事とプライベートを両立されているところもそうですし。僕、2週間ほどものもらいが治らなかったんですが、小山さんがくださったカレーとお味噌汁を食べたら、次の日に治ったんですよ! 演出家であると同時にお医者様かもしれないと思いました。
一同:(笑)。
島:役者の気持ちも考えつつ現場作りをしてくれた。顔が上がらないです。
吉高:頭ね。
高橋:それだけじゃないと思うな。治った日、志音がものもらいになってたもん。
一同:(笑)。
井澤:個人の個性を大切にしてくださっていて、同じ役でも全然違うんですよ。最初は役を作らなきゃと思っていたけど、自然体でいいと言っていただいて。稽古中はいらないものを削っていく作業でした。今後の作品にも通じるアドバイスをたくさんいただいたと思っています。
ーー特に好きな楽曲があれば教えてください。
萩谷:この話が決まった時に「Girlfriend」のCDを繰り返し聴き、その後でミュージカルの曲を聴きました。「We're the Same」が全然違っていて、どちらもいいなと。オリジナルと劇中歌を比較するのも楽しいと思います。
井澤:「You Don't Love Me」が好きです。原曲とアレンジが違うんですが、淡々とした伴奏に対してメロディがエモーショナル。その温度差が切ないし、歌っていて気持ちが入ります。ハーモニーも綺麗で見どころが多いですね。
高橋:「Evangeline」で、理由はクリエイター陣がすごく褒めてくれるから。シーンとしても楽しいし、最高に好きですね。
木原:「Evangeline」はペアごとに違う表現をしているのが楽しい。あとはシンプルにサウンド感が好き。楽しいシーンです。
吉高:僕は「Girlfriend」。この作品は音楽の力を借りて距離が縮まっていくことが多くて、この曲もそう。聞いていてもリズムをとりたくなるようなナンバーです。
島:「Girlfriend」です。これも劇中で歌いますから、ぜひ聞いていただけたら嬉しいです。
萩谷:絶対歌うでしょ、『GIRLFRIEND』なんだから(笑)。
ーー楽しみにしているお客様に向けて一言ずつお願いします。
木原:キャストによって違うウィルとマイクが見られます。シャッフル公演もありますから、可能ならばいろいろな回を見ていただきたいです。
井澤:舞台上には2人しかいませんが、バンドの皆さんも素敵なサウンドを鳴らしてくれますし、ハッとするような演出もあり、要素が盛り込まれた見応えのある舞台になっていると思います。
吉高:改めて音楽と愛の力の偉大さに驚いています。そこから生まれるものをぜひ劇場で楽み、味わってください。
島:恋というのは何種類もある中で、今回は同性愛をテーマにした物語。お互いの緊張感、距離が縮まっていく様子から、皆さんもいろいろ感じられると思います。2人の世界観を大事にお届けしたいですね。
萩谷:音楽の力があるミュージカルで、お芝居の部分も繊細に作られています。今回はU25チケットもあるので、若い方にぜひ見ていただきたいなと。カセットテープなど、アナログなものがたくさん登場するんですが、僕らもその重みを知って感銘を受けました。いろいろな方に見てもらえたら嬉しいです。
高橋:僕はこの作品にすごくかけています。どれくらいかけているかというと。この作品のために人生で初めてパーマをかけました。ここまで守ってきた髪をいじる覚悟、女性の皆さんならわかると思います(笑)!
≫ゲネプロレポート
ゲネプロレポート
この日行われたのは、初日に登場する高橋健介・萩谷慧悟ペアのゲネプロ。
高橋は、学校に馴染めず進路も決まっていないウィルを意外と思い切りの良い青年として描き出す。マイクからドライブインシアターに誘われて大喜びしたり、緊張のあまり喋りすぎたりと、初々しさが可愛らしい。
萩谷演じるマイクはスポーツ万能、成績も悪くなく友人も多い人気者。順風満帆な人生を送っているように見えるが、様々な悩みを抱えて揺れる思春期の青年を、萩谷は等身大で演じている。
マシュー・スウィートの楽曲を使用したジュークボックスミュージカルのため、会見であがった曲をはじめとする魅力的な楽曲が次々に登場。
明るく深い響きが印象的な高橋と、高音から低音まで甘く柔らかい声で歌う萩谷のハーモニーの美しさに聴き入ってしまう。2人を支えるバンドメンバーの生演奏とコーラスも聴き応えたっぷりだ。しっとり聞かせる曲から元気なナンバー、マイクのギター演奏、2人のアドリブ感ある掛け合いが楽しい曲まで多彩で、他のペアやシャッフル公演はどんなふうに印象が変化するのだろうとワクワクした。
そして、今でこそプレイリストの共有などで簡単に好きな音楽をシェアできるが、彼らはカセットテープで音楽を聞いている。1曲ずつ録音してミックステープを作る手間、シェアする手間を考えると、2人だけで共有している特別感が印象的だ。
2人の思いは主に楽曲に乗せて語られており、それぞれの本音や心境の変化がわかりやすく説明されているとは言い難い。だが、時代や小さな街という閉鎖的な空間、思春期……といった要素を考えると、2人が思いをはっきりと言葉にできないのも頷ける。高橋も萩谷も、ちょっとした視線や動きで相手に対する思いを表現。見る者の想像力を刺激し、細かな部分まで見逃すまいという気持ちにさせる。
2人の青年の恋愛を描いた作品だが、好意を抱いた相手の気持ちを探る緊張感、「もしかしたら」という期待と「拒まれたら」という不安は、多くの方にとって共感できるものではないだろうか。だからこそ、自分の心と相手に向き合おうとする彼らの姿が眩しく、愛おしく感じられる。
“青春”の甘酸っぱさと少しの苦さが詰まった本作。フレッシュなキャストによる魅力たっぷりのミュージカルを、ぜひ劇場で見届けてほしい。本作は2024年6月14日(金)から7月3日(水)までシアタークリエにて上演。6月21日(金)~29日(土)昼公演まではペアをシャッフルして上演するほか、上演回によってトークショーや様々なイベントが予定されている。詳細は公式HPをチェックしよう。
取材・文・撮影=吉田沙奈