開校!釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」 1期生23人、夢への一歩踏み出す
エンターテインメントでまちを盛り上げよう―。釜石市初のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」が開校した。20日に入校式を開催。演技やダンスなど芸能活動に生かせる知識や技能を学ぶ基礎科(1年)に1期生23人を迎えた。「演劇人に」「音楽のプロデュースをしたい」「憧れに挑戦」など、思い描く未来は人それぞれ。個々の希望に寄り添った多彩なカリキュラムを提供し、夢の実現を後押しする。
養成所は、同市の芸能事務所「FUKUプロモーション」代表の菊池由美子さん(57)が芸能の世界を夢見る人たちの応援に加え、“地方だからできる”芸能活動の創出やエンタメによる地域活性化、若者が住みたくなるまちづくりなどを目指して立ち上げた。思いに賛同する地元の企業や劇団代表者、演出家らと実行委員会を組織して運営する。
30年以上、芸能界のさまざまな仕事を経験してきた菊池さんが校長に就任。実行委メンバー、民謡やダンスの指導者らに講師になってもらい、それぞれで培ってきた育成ノウハウを生かしたレッスンを提供する。基礎科修了者の次なるステップとして研究科も用意。さまざまなことに前向きにチャレンジできる環境を整え、生徒一人一人と向かい合いながら個性、魅力を伸ばしていく。
入校式は大町の釜石PITで行われ、約60人が出席。校長としてあいさつした菊池さんは「さあ、いよいよ始まりますよ。1年後、どんな自分になっていたいですか」と問いかけた。プロとして芸能界入りを目指すだけでなく、「自分の殻を破りたい」「人生を楽しみたい」など年齢も社会経験も異なる人が集まっているとし、「目標や夢は一人一人違うから、人と比べる必要はありません。戦う相手は自分。それぞれのペースで焦らず前に進みましょう」と助言。全力でサポートすると強調し、「ここ釜石から、夢の扉を一緒に開いていきましょう」と呼びかけに熱を込めた。
実行委の坂本由加さん(三陸ブロードネット代表取締役)が「やってみたいという気持ち、挑戦に遅すぎることはない。新たなスタートは皆さんの人生を豊かにすると信じる。いつか一緒に仕事ができる日が楽しみ」と激励。演技部門の講師を務める小笠原景子さん(劇団もしょこむ主宰、脚本・演出家)が「アカデミーに入ることで本当に必要なこと、得られる情報の質は変わる。進む道を自分で選択する力をつけてもらえるようサポートする。きょう踏み出した一歩を自信に、どんどん挑戦して」と促した。
1期生は、7~76歳と幅広い。地元釜石を中心に、岩手県内8市町から集まった。演劇専攻の大学進学やエンタメ業界での活躍を目指す釜石高3年の森美惠さんは「歌って演技もできる俳優に。さまざまなレッスンを通して自分の表現の幅を広げたり、コミュニケーション能力や人間性を高めるような1年にしていきたい」と意欲を見せる。
「首都圏などに行かないと経験はできない」と思う人が多い、タレント養成所が地元にできたことを喜ぶ声は共通。自営業(建設関係)の行森勇人さん(30)は県内での音楽プロデュース活動を志しており、「自分が経験し、学びを生かした活動をしたい。岩手だからこそ作っていけるものがあると思う。声の逸材を見つけたい」と挑む。
「やらないと後悔する」と扉をたたいたのは、紫波町のパート漆田真理さん(56)。演劇、声を使った仕事に興味があったものの、やらずに半世紀が経過。「この年だからできることがある」と挑戦を決めた。すると、入校前にCM出演のオファーが舞い込み、撮影を経験。「無駄にせず頑張りたい」。これから先の学びの刺激になったよう。レッスンには高速道路の釜石自動車道で約1時間半かけて通う。「何かあれば皆さんも釜石から盛岡に出かけていたと思うので、逆もありかなと」。明るい笑顔を見せた。
式の後には、講師陣が指導する団体による民謡・民舞、ダンスのパフォーマンスが披露された。菊池さんは日本舞踊「藤間流」の名取でもあり、藤間宣福として長唄「越後獅子」を紹介。1期生は真剣な表情で見つめ、レッスンのイメージを膨らませた。
レッスン開始は24日から。俳優や声優、アイドルなどを目指す人が多く、ボイストレーニングにも力を入れる。アカデミーの構想を2年間あたためた菊池さんも夢を一つかなえた。感慨に浸りつつ、「大事なのはこれから」と気を引き締める。実行委メンバーや協力・協賛企業の力を借りながら、生徒一人一人の背中を押し、熱いハートで引っ張っていく。