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岐阜が誇る「養老サービスエリア」に徒歩で行ってみた結果 → 悠久の時を感じた / 歩いて訪ねるSA・PA 第10回

ロケットニュース24

高速道路のSA(サービスエリア)ってなんか良い。遠距離移動であればあるほどそのひと時の開放感が染みわたる。で、必然的に決まりがちなのが必ず寄るSAだ。

東名高速道路だと海老名SAに必ず寄る人は多いのではないだろうか。大阪出身の私(中澤)としては、これが養老サービスエリアである。

名神高速道路を使って東に行く時は絶対寄りたい。昔からあって家族旅行でも寄っていたというのも大きいだろうが、私にとって岐阜と言えば養老SAだ。ああ、麗しきかな養老SA。そんな養老SAに歩いて行ってみたところ……ファ!? こんな場所やったんか

・最寄り駅

岐阜県養老町にある養老SA。最寄り駅を調べたところ、養老鉄道の美濃高田駅になるようだ。この養老鉄道、現在三重県から岐阜県を直結する唯一の路線であるらしい。

にもかかわらず、本数は1時間に1~2本。毎日新聞の記事によると、廃線の危機に直面したこともあるという。隣り合う県を繋ぐ唯一の路線が廃線危機ってなかなかだ

・ローカル線

そんな養老鉄道はJR桑名駅から接続されている。ちゃんと連絡改札口もあって、自動改札だ。

と思いきや、自動改札を抜けた後に切符を購入して、その先で駅員さんが切符を確認するシステムであった。自動改札をくぐるとグッとローカル線度が増す。

桑名から美濃高田は700円区間で50分くらいかかるようだ。養老山地の麓を走っていく電車は、基本的には進行方向左手の車窓が雄大な山、右手の車窓が平野の街を見下ろすロケーションでとても「旅してる感」がある。

・自分を探さずにはいられない

車内は空いているが、寂しくない程度には人の乗り降りがあって、生活の息遣いも感じられる。夏の1人旅とか合いそう。めっちゃ自分を探せそうだ。

事実、特に自分探しの旅ではなかったはずなのに、「俺、このままで良いのかなあ」と考えてしまったレベル。自分探しを通り越して自分を探させる鉄道と言えるかもしれない。

美濃高田駅もその鉄道の駅だけあって、自分を探してしまう雰囲気に満ちあふれている。向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにいるはずもないのに。

・ついに歩く

最寄り駅までが旅すぎて歩きだす前に900字も書いてしまったが、そんなこんなで出発! ついに歩くで!!

真っすぐな道が伸びる駅前からすでにちょっと良い感じ。ただの路地にも連綿と息づいてきた重みを感じる。そんな駅前の住宅街を抜けたところに、大きな橋があったのだが……

ロケーションがヤバすぎる。

はるか彼方まで続いていく広大な河原は、よろめきそうなほど強い風が吹き抜けている。おそらく、遠くに霞む山まで障害物がないからだろうが、見通しが良すぎるその景色には雄大さを感じずにいられない。岐阜のスケール感がエグイ……!

・襲い来る岐阜

その河原に沿うように道がずっと続いていて、どうやら養老SAはこの先にある……らしい。道を歩き出した現時点では、全くそういう商業スポットの気配はない。丘の向こうから羽のないかげろうが虹を下さいと水芭蕉呼びそうなレベル。

さらに歩いていくと涙枯れた六地蔵的なノリで灯篭が立っていた。完全に里である。観光的演出一切なしの素でこれだけがあるガチ感

岐阜ってこんなことになってたのか。ただただ圧倒されながら15分くらい歩いたところ、山の方にSAの看板が見えた! あったァァァアアア!!

・コンクリート獣道

って、本当にあそこまで行くの? 不安になるくらい看板が遠くに見えたのだが、一本道なのでひたすら歩くしかない。そこでさらに10分くらい歩いたところ、入っていいのかどうか微妙なラインの脇道があった。一応、コンクリート舗装された獣道みたいである。

コンクリ獣道の先には道路をくぐる巣穴みたいなトンネル。さらに先に進んでみたところ……

高速道路に平行して一般道があって……

ぷらっとパークの入口があった。

着いた

養老SAに徒歩で来たァァァアアア!!

上りはその広さに解放感を感じ、下りはその光に温かさを感じて「帰って来たなあ」と安心感を覚えていた養老SA。しかし、久しぶりに来る養老SAはなんだかちょっと小さく見えた。大きいSAを知りすぎたせいかもしれない。

・変わったもの、変わらないもの

印象の変化に寂しさを感じなくはないんだけど、中に入ってみるとグルメの充実度の印象は変わってなかった。食堂のメニューには、カレー、ハンバーグ、トンカツ、ラーメン、そば、うどんなど華やかで、飛騨牛や養老山麓豚と素材的にも目移りする。

また、その他にもたこ焼きやカレーパンなどテイクアウト系のグルメの店も建ち並ぶ。どれ食べようかな~! 子供の時と同じ悩みを抱かずにはいられない充実度である。

・飛騨牛丼

悩んだ末、購入したのはテイクアウト弁当の「飛騨牛 黄金の牛めし」。『近江スエヒロ養老茶屋』という牛めし弁当屋で売ってました。並盛税込1200円で大盛税込1410円。

私が購入したのは大盛で、店員さんに聞いてみたところ「大盛は並盛の3割増し」なのだとか。ご飯も具も増量されているとのこと。

味は牛の旨みが強く、ご飯を包むように肉の味がする。すき焼きっぽい味がついているけど、牛の味がその味付の甘みに負けていないのが印象的。くぅ、染みます。

疲れた時はやっぱり肉。ちなみに。飛騨牛丼が販売されているのはこの店だけではなく、前述の食堂や、上りにあるレストランなど、そこら中で微妙に違う飛騨牛丼が販売されていたので、好みにあったものを選ぶことができる。

なんなら、下りにある『豚包』では「松坂牛まん」も販売されており、グルメの密度自体は印象よりもずっと濃かった。子供の頃の印象ほどじゃない部分もあれば、新しく魅力が理解できることもある。大人になるってそういうことだ

・来る時は気づかなかった

また、そういった成長を経ても、違う発見が見つかったこの場所はやはり良いSAだと言えるだろう。そんな養老SAを出ると、陽が傾いていた。

道に伸びる影。その中を帰っていると、来る時は気づかなかったある物の存在に気づいた

それは関ケ原の戦いに関連する石碑である。そう言えば養老町は関ケ原のすぐ近く。そのため、関ケ原の戦い時にここでも合戦が起こっており、この碑はそんな金屋川原の合戦の石碑なのだという。

まさしく、国破れて山河あり、城春にして草青みたり。夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡──。斜陽に色づく雄大な景色はただ変わらない時を見つめるようで、揺れる夏草に悠久の時を感じたのであった。岐阜って凄い。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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