「金融経済教育」に前向きな企業は4社に1社にとどまる 金融リテラシー推進を阻む三大要因とは
東北電力および東北電力ネットワーク(宮城県仙台市)は11月28日、2025年度より退職年金制度の見直すことを発表した。従業員一人ひとりの多様なキャリアやライフプラン、価値観に適した資産形成を目的とするもの。
一方、帝国データバンクが1万1133社を対象として実施した調査によると、従業員への金融経済教育の内容を知っているかを聞いたところ、「知らない」と回答した割合がまだ3割近くあることが明らかになった。
従業員一人ひとりの年金資産を2025年度よりDCへ一本化
同社は2025年度以降、現役従業員が積み上げる「確定給付年金」(DB)分の年金資産を、「確定拠出年金」(DC)へ一本化。
従業員それぞれが運用できる割合を高めることで、ライフプランに合致した資産形成を実現するとともに、現行以上の資産形成も可能な退職年金制度に見直す。また、2025年度以降に入社する従業員は、すべてDCで年金資産を積み上げていくことになるとも明かした。
「金融経済教育」に前向きな企業は4社に1社にとどまる
東北電力などの企業がこうした年金制度の見直しを進める中、政府は「貯蓄から投資へ」の動きを促す一環として「金融経済教育」の充実を推進している。従業員への金融経済教育は、社会的な意義とともに従業員エンゲージメントの向上につながると考えられ、企業にはより積極的なかかわり方が求められている。
帝国データバンクが1万1133社を対象として実施した調査によると、金融経済教育の内容を知っているかを聞いたところ、「知っている」企業は62.1%と6割を超えた。一方、「知らない」は28.6%、「分からない」は9.3%となった。
金融経済教育への取り組み状況では、内容を「知っている」企業6913社のうちで「すでに取り組んでいる」は12.4%、「取り組みたいと考えている」は14.7%。両者を合計した取り組みに前向きな企業は27.1%で4社に1社にとどまった。
また、「取り組んでいない」は56.3%となり、認知していても取り組みを進めていない企業が半数超え。さらに「(今後とも)取り組む予定はない」とする企業も16.6%あった。
教育の困難や人材不足、時間不足が金融経済を阻む三大要因
金融経済教育の認知度を従業員数別に見ると、内容を「知っている」企業は「101〜300人」が70.6%で最も高く、「301〜1000人」は70.0%。ともに7割台となった。
一方で、「5人以下」は55.5%と、唯一5割台にとどまった。従業員の規模に比例して認知度は高まるものの、100人を超えると7割台で頭打ちとなっている。
また、金融経済教育の内容を「知っている」企業6913社に、金融経済教育に取り組む上での課題について尋ねた。回答としては「社員のニーズにバラつきがあり、まとまった教育が行えない」が39.5%で最も高かった。また、「教育を行う人材がいない」が38.5%、「教育を行う時間が割けない」が34.2%がいずれも3割台で続いた。
こうした金融経済教育を阻むものとして、従業員のニーズのバラつきによるまとまった教育の困難や人材不足、時間不足が三大要因としてみられる。
日清製粉ホールディングスでは産前産後の従業員向けに金融経済プログラムを導入
当メディアでは、産前産後の従業員を対象に資産運用プログラムを導入した日清製粉ホールディングス(東京都新宿区)について紹介。金融リテラシーの向上のほか、収支管理能力の向上・習慣化やライフプランニングスキルの習得などが主な内容。導入の狙いとして「前向きなキャリア設計に貢献できる」としている。
なお、東北電力の発表については同社公式サイトから、帝国データバンクの調査についても同社公式サイトから確認できる。