障がい者の学び支える 「訪問カレッジ」文化祭
重度障がい者が特別支援学校などを卒業した後に途絶えがちな「学び」を支援する取り組みが、全国に広がっている。その取り組みの現状と学びの成果を披露する「学びの実り文化祭」が、10月26日(土)と27日(日)に新百合トウェンティワンホール(麻生区)で開かれる。
任意団体「重度障害者・生涯学習ネットワーク」が主催する第3回「訪問カレッジ学びの実り文化祭」。26日には神奈川県立麻生支援学校(麻生区)高等部の卒業生による「アンサンブル麻生OBOG会」が演奏を披露するほか、県内で活動する障がい者ダンスサークルのパフォーマンスなどがある。27日は文部科学省の障害者学習支援推進室長の基調講演などがある(要予約)。
医療的なケアが必要なため通学が難しい障がい者は、特別支援学校の訪問教育で学びをつないでいる。卒業後は社会との接点が希薄になりがちなため、退職教員らが訪問して学習を支援する「訪問カレッジ」活動を進めている。
もっと学びたい
県内では、麻生支援学校の元校長で、NPO法人「フュージョンコムかながわ・県肢体不自由児協会」理事長の成田裕子さん(69)が中心となり、2019年に「訪問カレッジenjoyかながわ」を始めた。現在、川崎市内の8人を含む計22人の「カレッジ生」が教育を受けている。
発端は6年前、麻生支援学校高等部に在校した朝比奈祐輔さん(24)の「学びたい」という思いだった。
朝比奈さんは「脊髄性筋委縮症」という神経疾患のため、小学校低学年から麻生支援の訪問教育で学んだ。全身の筋力がないが、視線を動かし表情で意思表示をする。教師の話に特に興味を抱くと瞳をくるくる動かし「もっと」とアピールする。そんな朝比奈さんの探究心は、校内でも有名だった。
退職から数年後。成田さんのもとに、後輩教員から「朝比奈さんが卒業後も教育を受けたがっている。力になってもらえないか」と相談が寄せられた。入学直後から朝比奈さんを見守った成田さんの心が動いた。「彼の学びを絶やしてはならない」。卒業後の学びを支える活動が始まった。
「文化祭」は、同様の活動を各地で続ける17の団体で連携し、学習発表と情報交換の場として22年に始めた。過去2回は横浜市で開催したが、3回目の今回は麻生支援学校の地元・川崎市で初めての開催となった。
成田さんは「気楽に参加して頂き、障がい者の『学び』への切実な思いと、支援活動について知ってもらえたらうれしい」と話している。問い合わせは「フュージョンコムかながわ」(【電話】045・311・8742、【メール】jimukyoku@kenshikyou.jp)。