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ドローンポート(ドッキングステーション)のビジネスチャンス[春原久徳のドローントレンドウォッチング]Vol.87

DRONE

米国でBVLOS規制緩和が迫る中、鍵を握るのがドローンによる初動対応(DFR)の拡がりだ。日本でも注目を集めるDJI Dock2とSkydio Dockを比較し、ドローンポート戦略の未来を左右するISO5491の重要性と、物流用途にとどまらないドローンポートの可能性に迫る

今年、米国やカナダなどでBVLOS(Beyond Visual Line of Sight、ドローンが操縦者の視界外で飛行すること)の規制が緩和されることが予定されている。

その緩和の行方を占う意味で、現在、米国において、警察・消防の中で展開されている「ドローンによるファーストレスポンダー(DFR)」プログラム(DFRプログラムは、911[日本の110番と同様]通報があるとドローンを飛ばし、警察官が到着する前に現場を監視できるようなシステムデザインされているプログラム)の技術や運用の拡がりはとても重要だ。

https://www.drone.jp/column/20241022080909101238.html

DFRのシステム概要

このDFRは以下のようなシステム概要となっている。

1.ドローン本体:高性能カメラやセンサーを搭載し、リアルタイムで状況を把握。2.ドローンポート(ドッキングステーション):ドローンの充電やデータ転送を行うための基地。ドローンはミッション終了後にここに戻り、次の出動に備える。3.通信システム:主に5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信する。これにより、遠隔地からでもドローンを操作可能。4.運用ソフトウェア:ドローンの飛行計画やデータ解析を行うためのソフトウェア。5.緊急対応システム:ドローンが現場に到着する前に、第一応答者に重要な状況認識を提供。また、命を救う医療物資を届けることも可能。

ドローンポート

日本ではこのDFRシステムはまだ動き出してはいないが、昨年ぐらいから、ドローンポートにおいてはその検証や活用が進んできている。

現在、日本でも出荷台数を伸ばし始めているDJI Dock2およびSkydio Dockの内容を見てみよう。

DJI Dock2

DJI Dock 2は、ドローンの自動運用をサポートするために設計された高度なドッキングステーションだ。

システム概要ドローン本体:Matrice 3DまたはMatrice 3TDドローンをサポートし、高性能カメラやセンサーを搭載。ドッキングステーション:ドローンの充電やデータ転送を行うための基地で、クラウドベースのインテリジェント機能を提供。通信システム:5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信。運用ソフトウェア:DJI Pilot 2やDJI FlightHub 2などのソフトウェアを使用して、ドローンの飛行計画やデータ解析を行う。主要な仕様総重量34kg(機体を除く)サイズドックカバー開時:1228×583×412mm
ドックカバー閉時:570×583×465mm入力電圧100-240V (AC)、50/60Hz動作環境温度-25℃~45℃保護等級IP55収容可能ドローン数1最大風圧抵抗(着陸時)8m/s最大動作高度4000m充電時間32分(バッテリー残量20%から90%まで)映像伝送システムO3 Enterpriseネットワークアクセス10/100/1000Mbps イーサネットポートセンサー風速センサー、雨量センサー、外気温センサー、浸水検知センサー、キャビン内温度センサー、キャビン内湿度センサーセキュリティカメラ内部および外部に1920×1080解像度のカメラを搭載

管理ソフトであるDJI FlightHub2は、ドローンオペレーションをクラウドベースで管理するためのオールインワン型プラットフォームとなっており、以下はその主要な仕様となる。

主要な仕様リアルタイムデータ共有:ドローンで撮影した映像やデータをリアルタイムで共有可能。自動航行ルート作成:自動航行のルートを作成・編集する機能。2Dオルソ・3Dモデル作成:ドローンで撮影したデータを使って2Dオルソマップや3Dモデルを作成可能。フリート管理:複数のドローンを一元管理し、効率的に運用可能。クラウドベースのデータ保存:取得したデータを安全なクラウド環境に保存し、いつでもアクセス可能。対応機種:DJI Matrice 30/30T、Matrice 350 RTK、Mavic 3 Enterpriseシリーズなどが対応。

DJI Dock2のユーザーからは、非常に使いやすく、また故障も少ないという声も聞く。しかし、その管理ソフトであるDJI FlightHub2のクラウドベースのアプリケーションには懸念点がある。特に取得データや飛行データのセキュリティ面だ。

この懸念に対しては、クラウドAPIを使い、ドックをサードパーティーのクラウドプラットフォームに接続することで、プライベートサーバでの運用も可能だ。だが、そういった開発に投資をしていくかといった検討が必要になる。また、DJIが中国企業である限りにおいては一定のチャイナリスクの懸念はあり、企業としては何らかの対策が必要だということだろう。

Skydio Dock

Skydio Dockも、ドローンの自動運用をサポートするために設計された高度なドッキングステーションとなる。(日本では未発売)

システム概要ドローン本体:Skydio X10やSkydio X2などのドローンをサポートし、高性能カメラやセンサーを搭載。ドッキングステーション:ドローンの充電やデータ転送を行うための基地で、クラウドベースのインテリジェント機能を提供。通信システム:5Gネットワークを利用して、リアルタイムでデータを送受信。運用ソフトウェア:Skydio Remote Opsなどのソフトウェアを使用して、ドローンの飛行計画やデータ解析を行う。主要な仕様総重量約32.7kg(エンクロージャのみ)、約46.3kg(ベース付き)サイズ25.16×24.33×12.2インチ(ベースなし、アンテナを下げた状態)
ベースを取り付け、アンテナを伸ばすと幅が2.68インチ、高さが22.52インチ追加動作環境温度-20℃~50℃飛行開始時間20秒以内通信範囲Skydio Connect Access Pointsを使用して通信範囲を拡大可能センサー気象センサー、ADS-B、温度管理機能付き

管理ソフトであるSkydio Remote Opsは、ドローンの遠隔操作と自動運用をサポートするための高度なプラットフォームとなっており、以下はその主要な仕様となる。

主要な仕様リアルタイムデータ共有:ドローンで撮影した映像やデータをリアルタイムで共有可能自動航行ルート作成:自動航行のルートを作成・編集する機能。2Dオルソ・3Dモデル作成:ドローンで撮影したデータを使って2Dオルソマップや3Dモデルを作成可能。フリート管理:複数のドローンを一元管理し、効率的に運用可能。クラウドベースのデータ保存:取得したデータを安全なクラウド環境に保存し、いつでもアクセス可能。対応機種:Skydio X2、Skydio S2+などが対応。

Skydio DockはDJI Dock2と比較すると、システムの全体価格が少し高価ではあるが、必要な機能は包含している。管理ソフトであるSkydio Remote Opsも、ほぼDJI FlightHub2の機能を踏襲している。Skydioが米国企業ということもあり、DJIとは異なってチャイナリスクといった問題がないことは、今後、日本でも検討されていく余地を多く残している。

日本でのドローンポート

日本においても比較的早くから、ドローンポートの検討や開発が進められてきた。特に、国も支援をしながら進めたブルーイノベーション社のドローンポートのISOへの取り組みは戦略としても重要であった。

ISO(国際標準化機構)は、国際的に通用する標準を開発し、発行する組織となっており、正式名称は「International Organization for Standardization」で、日本語では「国際標準化機構」と呼ばれる。

ISOの主な目的は、製品、サービス、システムの国際標準を制定し、国際的な取引を円滑にし、製品の安全性や品質を向上させることとなっている。

ブルーイノベーションは2023年6月に日本発の「物流用ドローンポートシステムの設備要件に関する国際標準規格ISO5491(以下:ISO5491)」が国際標準化機構ISOにおいて正式採択・発行されたのを受け、ISO5491が定めるドローンポートシステムの設備要件に準拠したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を開発し、そのβ版の提供を物流や点検事業者、UTMサービスプロバイダー、ドローンポートおよびドローン機体メーカーなどに向けて8月より開始した。

この日本発の物流用ドローンポートシステムの設備要件に関する国際標準規格ISO5491は、2019年のISO/TC20/SC16南京総会において、日本が提案し採択され活動を開始し、2023年6月2日に正式発行された。150kg以下のVTOL電動貨物UAS(垂直離着陸式の無人航空機システム)を扱うVertiport(ドローンポート)が自動離着陸オペレーションを実現するために必要なインフラストラクチャと機器の要件を規定している。

なお、本規格は経済産業省の委託事業(省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野[新規対応分野])によって標準化されたものだ。

バーティポート(ドローンポート)に関わることを分類し、定義づけをしている。

バーティポート情報システム(Vertiport Information System<VIS>)

バーティポートにおける無人航空機システム(UAS)の運用に必要なすべての情報を集中管理するシステム 注1:各バーティポートの運用状況を管理する。 注2:バーティポートおよび外部システム(ES)と通信し、それらの仲介役を務めるが、UASとは通信しない。ESにバーティポート情報システムの機能が含まれる場合があると想定される。 注3:バーティポート情報システムと他のシステムを含めたシステム構成を以下に示す。

1 .バーティポート 2 .バーティポートシステム 3 .バーティポートオペレーター 4 .周辺機器(検出器、センサー) 5 .バーティポート情報システム(VIS) 6 .バーティポート予約システム 7 .外部システム 8 .UAS オペレーター 9 .UTM/GCS 10. UAS a ステークホルダー(SH)

また、製造業者の責任によるバーティポートの要件として、設計・安全性の確保・通信・ログ・品質管理・取扱説明書が規定されている。そして、VISのサービスプロバイダーの責任によるVISの要件として、設計・安全性の確保・通信・取扱説明書が規定されている。

そして、このISO5491をベースとし、ブルーイノベーションはドローンポートを製品化しており、また、SBIR(Small/Startup Business Innovation Research)といった内閣府を司令塔とした予算支出目標を設定、研究開発初期段階から政府調達・民生利用まで、各省庁連携で一貫支援し、イノベーション促進、ユニコーン創出を目指すプログラムにおいて、ブルーイノベーションはVFRと組んで、ドローンポートの開発に取り組んでいる。

このISO5491の採択そのものは、今後の日本のドローンポート戦略にとっても重要であるし、現在も継続してこの内容が深められていっている中で、国際標準としての骨格を今後、担うことを期待している。だが、このドローンポートのベースが物流用ということもあり、現在、世界で動き始めているドローンポートの動きと少し異なっていることも意識する必要がある。

現在、世界で動き始めている動きは、冒頭に書いたようなDFRといった駆け付け・監視・警備といった分野でのデータ取得といったものを主眼としており、ISO5491の内容に沿う部分と沿わない部分がある。

物流といった観点でいえば、ISO5491に関しては、UTM(UAS Traffic Management:ドローン運航管理システム)との連携が強いが、DFRといった観点では、UTMとの連動性は強くない。

DFRはFlight Hub2やSkydio Remote Opsにあったようなリアルタイムでの映像システムとの連動のほか、取得したデータでの2Dオルソや3Dモデル生成との連携といったデータ処理についてはきちんと織り込まれている。しかし、ISO5491においては、その部分は弱くなっている。

ドローンの物流用途は、ビジネスモデルの形成にまだ時間がかかっており、その立ち上がりがまだ見えていない。その中で、DFRをキーワードとして、駆け付け・監視・警備といった警察・消防分野だけでなく、防災や防犯での見回りや調査、定期的な工事現場や鉱山・廃棄物処理場などでの点検や進捗、計測といった分野でも、ここ1年~2年で急速に立ち上がってくることが予想され、その規模も大きくなるだろう。

そのシステムとして、ドローンポートは重要であるし、同時に機体との接続やシステムアプリケーションとの連携も重要であろう。世界のこの分野での競争にきちんとキャッチアップをしていかないと、大きなビジネスチャンスを逃すことになるだろう。

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