おうちで気軽にできるアート教育のアイデア3選!モンテッソーリから学ぶ感性と創造力の育て方
モンテッソーリ教育は、100年以上も前から、世界各国の教育現場に取り入れられている教育法です。成長に必要な能力は子ども自身に備わっており、「適切な時期に適切な環境が与えられれば、自ら成長する」(※1)という考え方に基づき、様々な実践のアイデアを提案しました。 日本でも、「子どもの自発性を育む教育」として注目されていますが、「何だか難しそう」「何から始めれば良いか分からない」と戸惑ってしまうこともありますよね。 そこで、この記事では、主に0〜6歳のお子さんをお持ちの方に向けて、モンテッソーリ教育について分かりやすく解説します。 また、アートの側面にフォーカスし、筆者が4歳の娘と取り組んだレポートを交えて、おうちで気軽にできるアイデアをご紹介します。親子でアートを楽しみながら、モンテッソーリ教育に触れる参考にしていただけたら幸いです。
(※1)参考文献:〔月刊クーヨン〕編集部『0〜6歳の「伸びる!」環境づくり おうちでできるモンテッソーリの子育て』株式会社クレヨンハウス、2019年(初版:2013年)、p.1
モンテッソーリ教育とは?
マリア・モンテッソーリ博士(1870〜1952)
「モンテッソーリ」という言葉は、マリア・モンテッソーリ博士(1870〜1952)の名前と功績に由来しています。
モンテッソーリ博士は、1896年にローマ大学を卒業し、イタリアで初めての女性医師として活躍しました。そして、心身のケアが必要な子どもたちが、熱心に手を動かす姿を見て、彼らの潜在能力を発見します。
子どもたちが自由に身体を動かしたり、集中して作業したりできる環境を整えたところ、彼らは優秀な成績で試験に合格したそうです。彼女の業績は、マスコミからも賞賛されました。
この経験をきっかけに、モンテッソーリ博士は、ローマのスラム街に設立した「子どもの家」で試行錯誤を重ねます。そこから生まれた独自のメソッドが、モンテッソーリ教育です。
成長過程に現れる法則とは?
モンテッソーリ教材の活用に関するストックホルムのモンテッソーリ保育園における事例研究, Användning av Montessorimaterial i en Montessoriförskola i Stockholm
モンテッソーリは、多様な実践を通して、人間の成長過程に法則を見出しました。ここでは、彼女が発見した「敏感期」と「人間の傾向性」について、簡単に解説します。(※2)
(※2)参考文献:〔月刊クーヨン〕編集部『0〜6歳の「伸びる!」環境づくり おうちでできるモンテッソーリの子育て』株式会社クレヨンハウス、2019年(初版:2013年)、pp.1, 2, 12〜20
乳幼児期に現れる「敏感期」
乳幼児の時だけ現れるのが、感受性の強い時期である「敏感期」。「敏感期」の子どもたちは、特定のことに強い関心を示し、遊びの中で自然にスキルを身につけていきます。
たとえば、以下のような能力が発達します。
・言語:アクセントやイントネーションまで真似できる
・感覚:手で触ったり、においをかいだりと、五感を活用する
・小さなものへの興味:絵本の隅に描かれた動物など、小さなものを発見する
モンテッソーリが重視したのは、映像などのバーチャルなものではなく、実際に体験すること。
色々な画材を使ったり、自然の中で遊んだりと、身体の感覚を養い能力を伸ばそうと考えました。また、子どもたちが自ら活動を選べる環境を推奨し、周囲の大人は援助する姿勢で臨んでほしいと求めました。
アートの側面に注目すると、モンテッソーリ教育を実践している園では、自由にペイントできるスペースや、粘土など様々な素材に触れる時間を設けているそうです。
生涯を通して現れる「人間の傾向性」
モンテッソーリは、誕生から24歳頃までの期間を6年ごとに分け、「発達の4段階」という法則を確立しました。
・0〜6歳(乳幼児期)
・6〜12歳(児童期)
・12〜18歳(思春期)
・18〜24歳(青年期)
さらに、「発達の4段階」とは別に、生涯にわたって現れる「人間の傾向性」も発見しました。
「人間の傾向性」には、たとえば、次のような種類があります。
・探究心:新しいものごとを調べたい
・コミュニケーション:会話を通して人とつながりたい
・向上心:もっと上手くやり遂げたい
このような能力を養う時にも、アートがひとつの役割を果たします。いくつもの画材を使って表現を試みたり、制作した作品を発表したりすることで、もともと備わっている力がより一層伸びていく可能性があるのです。
おうちで気軽に始めよう!アート教育のアイデア3選
ここでは、モンテッソーリの教育法を参考に、ご家庭で気軽にできるアート教育のアイデアを3つご紹介します。
筆者が4歳の娘と実践した内容を、写真を交えてお届けしますので、取り入れられそうなものから始めてみてくださいね。(※3)
(※3)以下の書籍を参考にアイデアを考案しました。
・大豆生田啓友、大豆生田千夏『非認知能力を育てる あそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』講談社、2019年
・〔月刊クーヨン〕編集部『0〜6歳の「伸びる!」環境づくり おうちでできるモンテッソーリの子育て』株式会社クレヨンハウス、2019年(初版:2013年)
アイデア(1)色ごとに画材を分けてお絵描き
最初に取り組んだのは、色鉛筆を種類ごとに分ける方法です。レッド系、グリーン系、ブルー系の3つに分類し、お絵描きをしてみました。
「敏感期」には、順番や作業の進め方、ものの位置など、秩序を重視する傾向が強く現れます。モンテッソーリ教育を行う園でも、色の系統ごとに画材を分ける方法を取り入れているそうです。
わが家では、12色セットの色鉛筆を2組用意して、そこから好きなものを選んで使っていました。
色をきちんと分類したことで、「水色は青の仲間だからここだね」など、どこにあるのか理解しやすくなり、迷わず色を選べるようになったのです。子どもが選択しやすい環境を作ると、よりスムーズにお絵描きを楽しめると分かりました。
また、同じ赤でも、オレンジがかったものもあれば、ピンクに近い色もあると気づきがあり、色彩感覚も養えると感じました。
アイデア(2)色彩の観察を楽しむ押し花
モンテッソーリ教育では、五感を使って体験することを大事にしています。そこで、押し花を水に入れて、色彩を観察する遊びを試してみました。
まずは、庭などに落ちている花を探すところから始めます。日常で見過ごしてしまう小さな花にも目を向けて、一生懸命に集めている姿が印象的でした。ティッシュで包んだ花を分厚い本に挟み、1〜2日ほど置けば、押し花の完成です。
次に、ガラス瓶に押し花と水を入れて、割り箸で優しく押しながらかき混ぜると、だんだんと色がにじみ出てきます。5月頃に採取したツツジを使ったところ、オレンジがかった茶色が出来上がりました。
ゆっくりと色が抽出されるので、娘は何度も観察しては、「茶色になってきたよ!」と報告してくれました。
自分で押し花を作ったことで、「あそこに赤い花が咲いているよ」など、普段の生活でも植物に興味を持つようになっています。
自然と触れ合いながら、色彩も楽しめる遊びとしておすすめです!
アイデア(3)言葉と表現に触れる絵本の読み聞かせ
「敏感期」には、言葉の習得に加えて、読み書きを通じた解釈力も伸びていきます。さらに、鋭い観察力が現れ、小さなものへの関心が高まる時期でもあります。
そこで、おすすめしたいのが、絵本の読み聞かせです。親子で絵本を楽しむことで、読み書きの土台ができるだけでなく、観察力や想像力も養われます。
アート教育に焦点を当てると、次のような楽しみ方ができます。
・小さな虫や動物、部屋に置かれた小物を探してみる
(例)「このページにはどんな動物が隠れているかな?」と探し当てゲームをする
・作者の表現(色、線、形など)に注目してみる
(例)「どの色が好き?」と尋ねて、親子で会話を楽しむ
・登場人物の気持ちを想像してみる
(例)「このキャラクターはどんな気持ちかな?」と、一緒に考えてみる
こちらの記事では、子どもがアートを感じられる絵本をピックアップし、作者の表現やその背景について、分かりやすく解説しています。
お子さんとのやりとりのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
アートの入り口となる絵本を通して、言葉への興味や豊かな想像力・観察力が育まれるでしょう。
まとめ
この記事では、主に0〜6歳のお子さんをお持ちの方に向けて、モンテッソーリ教育について解説しました。お子さん自身が持っている力を伸ばすためのポイントは、環境作りにあることが分かりましたね。
また、モンテッソーリ教育をより身近に感じられるよう、アートの側面にフォーカスし、おうちで簡単にできるアイデアを3つ紹介しました。
お子さんの年齢や興味に合わせて、できることから試すことで、幼い頃から感性と想像力が養われていくでしょう。日々の遊びにちょっとした工夫を加えて、親子で楽しみながらアートに触れてみてくださいね。
《参考文献》
・大豆生田啓友、大豆生田千夏『非認知能力を育てる あそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』講談社、2019年
・〔月刊クーヨン〕編集部『0〜6歳の「伸びる!」環境づくり おうちでできるモンテッソーリの子育て』株式会社クレヨンハウス、2019年(初版:2013年)
・藤原愉美監修『0〜6歳の子育てで気づきたい100のコト モンテッソーリ子育て 〜はじまりはお家から〜』学校法人文化学園 文化出版局、2018年