【横浜市戸塚区】深谷町 消防訓練センター改修へ 多様化する災害に備える
消防士・団員らが訓練を行う戸塚区の「横浜市消防訓練センター」(深谷町777)は現在、大規模な改修工事の準備を進めている。老朽化した施設を更新すると同時に、多様化・激甚化する災害に備えるセンターとして、2028年の供用開始を予定している。
同センターは1976年から供用開始。敷地面積約5・4万平方メートルの中に多数の訓練施設が建ち、消防士らが日々の訓練を通して災害への備えを実践的に学ぶ。また、新採用職員が研修中の半年間を過ごす宿舎棟と、座学などに使用する校舎棟も完備され、初任教育のための役割も担っている。
2025年中は工事前の最終準備が行われ、26年1月に着工予定という。
能登など踏まえ
今回、老朽化を受けて大幅に改修されるのは敷地の北側にある各種訓練施設。地震や火災、倒壊などの現場を再現できる既存機能の刷新のほか、近年の災害状況などを踏まえて新設される訓練施設もある。
多くの施設はスペースが拡充され、より実際に近い火災・震災・水害などの現場が再現できるようになる。新設される施設として、浸水した地域や車両からの救助訓練ができる「風水害訓練塔」や、住宅密集地で起こった火災や倒壊などを再現できる「街区訓練施設」がある。
同センターの職員で、工事計画の担当者である吉泉航さんによると「東日本大震災や能登半島地震を踏まえ、土砂を積み上げたエリアも新設する。重機を使った訓練も実施予定」と話す。
求められる「実践」重視
同じく工事計画を担当する斉藤翔さんによると、2010年代に団塊の世代が大量退職を迎えたことにより、現場経験と技術を持ったベテランの消防職員が減少。さらに家屋の火災耐性が向上したことで、火災件数は減少傾向にあるため、経験の浅い若手職員が消火活動にあたる実践的な機会が減少しているという。
そんな中、2015年には消防学校の施設や教育訓練の基準が一部改正された。斉藤さんは「火災に限らず、激甚化・多様化する災害に対応できるよう、実際に近い現場をつくれる訓練施設が求められている」と背景を語る。
また横浜市は災害時の出場部隊数が多く、現場の指揮や統率力も問われる。そのため改修後の各種訓練施設では、さまざまな状況判断を必要とする複雑な現場再現が可能になる。
斉藤さんは「次の50年間にどんな災害が起こるかを見据えて、柔軟に使い続けられる施設となるよう計画を進めてきた」と語る。
工事中は南側の既存施設や市内各区にある消防署で、訓練および初任教育を継続する。