これで「子どもの読書感想文」問題は解決! 【親子インタビュー式読書感想文】の「感想インタビュー」「質問シートの整理」を実践〔文章力養成講座の専門家〕
文章力養成講座「カキマクル」のゆか先生こと松嶋有香さんが、2週間7つのステップで「読書感想文」を完成させることができる「親子インタビュー式読書感想文の書き方」を教えてくれます。今回は感想インタビューと質問シートの整理について解説します。
「頭がいいから中学受験する」はもう古い! 「勉強が苦手な子」こそ輝く場所がある“新しい中受”とは夏休みの宿題のラスボス「読書感想文」を、読書時間も含めて1日1〜2時間、2週間で計画的に完成させる、ゆか先生の「親子インタビュー式読書感想文の書き方」。読書感想文を完成させるまでには、7つのステップがあります。
〔おさらい〕2週間7つのステップでできる「親子インタビュー式読書感想文の書き方」
準備:計画を立てる
ステップ1:本を選ぶ
ステップ2:心が動いた文やシーンがあるページに、心が動いた理由などをメモした付箋をはる
★いまココ→ステップ3:メモをしたふせんを元に質問シートを作って、大人が子どもにインタビューをする
ステップ4:インタビューの答えを読んで、近い内容をまとめて文にする
ステップ5:まとめた文を組み立てる
ステップ6:原稿用紙に書く
ステップ7:時間を置いて見直して、書き直す
今回紹介するのは、ステップ2で書いた感想メモを元に、親が子どもにインタビューをして、子どもの気持ちを深掘りし、感想をふくらませていく【ステップ3:感想インタビュー】と、インタビューしたないようを整理して「文章」を作っていく【ステップ4:質問シートの整理】です。
──インタビューなんてできるかな、やったことがないから不安という場合、なにかコツがありますか?
ゆか先生:親が緊張すると子どもも緊張してしまうので、仕事ではなく親子のおしゃべり時間だと考えて、リラックスした気持ちで取り組みましょう。
ここからは、ぐっと深い親子ワールドに突入します。一番大切なのは「子どもの意見を、絶対に否定しないこと」。「子どもは自分の最推しである」という気持ちで、子どもと向き合ってみてください。
それでは引き続き、『ぼくの色、見つけた!』をお手本に説明していきます。
『ぼくの色、見つけた!』(作・志津栄子 絵・末山りん 講談社)
【ステップ3:感想インタビュー】インタビュー中は「子どもの言葉に全力共感!」
──ステップ2で、ふせんのメモを3つのシーンに絞りこみました。ステップ3では、そのメモを元に子どの感想を聞いていきますが、具体的な方法を教えてください。
ゆか先生:インタビューの前に、B5かA4の白い紙を用意します。ノートは、ページを並べかえたり、まとめたりできないので、おすすめしません。
ここでひとつ、重要なことがあります。
ゆか先生:子どもにインタビューをする時に重要なのは、座り方です。
──えっ、座り方が読書感想文に関係あるのですか?
ゆか先生:どちらかというと、子どもに話を聞くときの「姿勢」ですね。まずは、親と子は同じ方向を向くように、隣に並んで座ってください。同じ方向を向くと、ふしぎなことに子どもを問いつめる行動が激減します。
並んで座ったら、ふせんにページ数が書いてあることを確認してからはがして、紙に貼っていきます。ふせん1枚につき紙1枚(1ページ)を使うので、ふせんが3枚だったら、紙(ページ)も3枚になります。
そうしたら親も、本のふせんが貼られた部分を読んで、子どもに質問していきましょう。キーワードは次の3つです。
親……「なんで、ここで感動したの?」
「どうして、そこが気になるの?」
「もし自分だったらどうする?」
ゆか先生:子どもが2〜4歳ごろに、「なんで」「どうして」と質問攻めにあったことはありませんか? あのころのかわいい我が子とのやりとりを思い出しながら、今度は逆に親が「なんで」「どうして」と聞いてみましょう。聞かれた子どもは、一生懸命答えを考えます。その考える時間こそが「自分の心と対話する時間」になるのです。
注意することは、思ったような答えが子どもから返ってこないからと、問い詰めるような雰囲気になってしまわないようにすること、親の考えに沿うように誘導してしまうことです。このインタビューは、正しい答えを出すためでも、子どもの考えを注意するためでもありませんので、親もかなり気をつける必要があります。
例えば、「寂しくなった」という子どものメモに対して、「それは、ひとりぼっちで寂しいのかな?」と言葉で補足するのはアリです。でも「それは寂しいじゃなくて、○○だったんじゃない」という、親の意見の押しつけはナシです。
文章力養成講座「カキマクル」の松嶋有香ことゆか先生 撮影:講談社写真映像部
ゆか先生:コツは、「大好きでたまらない“推し”になら、なにを言われても全肯定」という気持ちで、子どもの感想をきくことです。会話が弾んだところが、子どもが一番言いたいところ。子どもの声に耳を傾けて、驚いたり笑ったりしながら、会話を楽しんでください。
メモもしっかり取りましょう。小学校低学年の子は親が、自分でメモが取れる子は、自分で書いてもよいです。また高学年の場合は自問自答できる可能性がありますので、「自分だけでやりたい」と言った場合は、ぜひトライさせてください。
インタビューのメモのできあがりは、こんなイメージです。
ゆか先生が作った質問シート。余白に、子どもに質問したこと、子どもが答えたことをまとめて書いておく。
ゆか先生:メモには、子どもが言ったことは全部書き留めておきましょう。聞いていて「関係ないかも?」と思ったとことでも、子どもが口に出したということは、なにかしら意味があるからです。親の勝手な判断で、割愛しないでくださいね。
また、自分の思いを言葉に変換するのに時間がかかる子もいます。そういう子は時間をとって、優しく、質問を繰り返していきましょう。疲れてきたら、甘いものでも食べてリフレッシュ! どうしても無理なら、時間を置きましょう。寝た方が良い時もありますので、無理しなくてもだいじょうぶです。
そしてこの段階では、完璧な文章を目指さなくてもよいです。あふれる言葉を、どんどん書き留めてください。もしも話がネガティブな方向に向かってしまっても、子どもがきちんと自分の気持ちに向き合おうとしている証拠なので、大丈夫。子どもの感情を丸ごと、親が受け止めてあげてください。
〔ゆか先生の体験例〕インタビューをしたときの子どもの変化
「ちゃんと子どもの話を引き出せるかな?」と心配な方もいるでしょう。でも子どもときちんと向き合って話すだけでも、子どもにいろんな変化が起きます。講座を受けた方の感想がこちらです。
●書いてある答えが単純でがっかりしましたが、そこからさらに聞くと、ちゃんと子ども自身が思っていることが出てきました。
●最初「なんでこんなに質問ばかりするの?」と非常にめんどうがっていましたが、やり進めるうちに、答えながら、「そうそう、それとね!」など、言いたかったことを思い出してふくらませることが出てきて、スムーズになりました。
【ステップ4:質問シートの整理】近い内容のものをつなげて文にする
ゆか先生:子どもの話を聞いていると、「この子が感動したのは、ここなんだ」という場所がみえてくると思います。そうしたら、メモに書かれた言葉を少しずつふくらませながら、文をつなげていきます。子どもが「楽しい」「すごい!」などと同じ感情を抱いたところ、同じ話題について繰り返し話していると感じたところが「つなげるポイント」。
ステップ3で使った『ぼくの色、見つけた!』質問シートを元に、説明していきましょう。ピックアップしたのは、担任の平林先生が信太朗の困りごとに気づいて、放課後の居残り授業のときに話しかけてくれたシーン。
平林先生が自分の困りごとに気づいて、話しかけてくれたことがうれしかった信太朗。『ぼくの色、見つけた!』(作・志津栄子 絵・末山りん 講談社)
ゆか先生:インタビュー会話のやり取りは、こんな感じです。
親……「なぜ“本当!?”と思ったの?」
子ども……「平林先生が『言ってもどうにもならないって、もし思っているんだったら、それはちがいますよ』って言っているから」
親……「あなたは、言ってもどうにもならないと思っているの?」
子ども……「うん。だって信太朗も、絵をバカにした信行には、なんにも言わなかったよね」
親……「そうだったね。じゃああなたにとって “言ってもどうにもならない”ことはなあに?」
子ども……「えーと、男子が休み時間に教室の中を走るのは、言ってもやめないから、どうにもならないかな」
親……「そういうときは、どうしてるの?」
子ども……「私はなんにも言わない。でも、○○ちゃんは怒って注意している」
親……「そうなんだ。○○ちゃんは勇気があるね」
子ども……「この間も、走っていた子にぶつかられて転んだときに助けてくれて、“ちゃんと謝ってよ!”って言ってくれたの。私はなんにも言えなかったからうれしかった。信太朗が平林先生に言われて、じわじわうれしかったっていう気持ちと同じかも」
ゆか先生:このやりとりで「言ってもどうにもならない」と子どもが感じた、2つのシーンが出てきました。このシーンの前に、信太朗が描いた絵を信行がばかにするシーンがあって、そこには「先生にガッカリした」とメモがありました。どうやら「先生」が気になるみたいなので、つなげてみましょう。
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平林先生は『言ってもどうにもならないと思うのは、ちがう』と言うけれど、私はどうにもならないことはあると思う。実際に休み時間に教室を走っている男子に先生が注意しても、やめてくれないから。
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ゆか先生:うまくつながりましたね。さらにその後に出てきた言葉を足してみましょう。
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平林先生は『言ってもどうにもならないと思うのは、ちがう』と言うけれど、私はどうにもならないことはあると思う。実際に休み時間に教室を走っている男子に先生が注意しても、やめてくれないから。
でも、私が走っている子にぶつかって転んだとき、○○ちゃんが助けてくれたのはうれしかった。勇気があるなと思った。
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ゆか先生:このように、話をしながら子どもの気持ちを確認しつつ、少しずつ文章に肉づけをしていきます。
──文を肉づけするときのコツはありますか?
ゆか先生:次の5つを試してみましょう。
① 「ワンワン」「ドンドン」などの擬音語を入れる
② 「ひやひや」「ゆったり」などの擬態語を入れる
③ 「聞いた」を「耳を傾けた」というような大人びた言い方に変える
④ 「うれしかった」「おもしろかった」のような単純な言葉を工夫する
⑤ 「胸がドキドキした」「興奮してジャンプした」など、自分の体の変化を書く
ゆか先生:③は年齢や読書量によって、語彙量に個人差があります。知らない言葉は口から出てこないので、ほかにどんな言い方があるのか、親子で考えてみるとよいでしょう。
④は一度使用禁止にしてみるとおもしろいです。私の講座では「うれしかった」を禁止ワードにしていますが、子どもたちは「えーっ!」と言いながら、色々工夫をします。「うれしかった」場合、「他のどんなときのようにうれしかったのか」、「うれしいときにどんな行動をしたのか」などと質問を重ねて、言葉を増やしていきます。
うまく文をつなげられたり、新しい表現に書きかえられたりしたら、たくさんほめましょう。「すごいね、いっぱい書けたね」とほめてもらえたら、「がんばって書いてよかった」「次もがんばってみようかな」と前向きな気持ちになります。子どもの「書く」力を応援して、ほめて、伸ばしてあげてくださいね。
次回は最終回! いよいよ原稿用紙に感想文を書きます。さらに「読書感想文」がレベルアップする、書いた後のもう一工夫とは?