陶芸家 村山恵子さん NHK会長賞に 日本新工芸展で新境地
伊勢原市石田在住の陶芸家、村山恵子さんの作品「生命の木・II」が、「第47回日本新工芸展」においてNHK会長賞を受賞し、その造形と深い精神性が、多くの人々の心を捉えた。
日本新工芸展は、単なる伝統工芸の継承にとどまらず、現代の生活空間や美意識に調和する新たな工芸の創造を目指す展覧会。陶芸、染織、漆芸、金工、人形など、多様な分野の作家が参加し、それぞれの素材と技を駆使しながら、自由な発想と斬新な表現を追求している。公募展としての性格を持ち、若手作家の登竜門としても重要な役割を果たす。
3月23日に行われた審査会で村山さんの作品は、「自然の力で上に伸びてゆく樹のように、又、時々つまずきながらも天を目指していく造形の抽象的な陶芸作品だが、形は有機的な人体や自然の形を連想させる」と高く評価された。
立体的な視点取り入れ
村山さんは愛知県出身で24歳の時に上京し、作陶を開始。結婚を機に伊勢原へ転居し、1989年の女流陶芸展で初入選を果たすと、日展をはじめとする公募展で入選してきた実力の持ち主。
近年、作風には顕著な変化が見られる。以前は左右対称で安定感のあるフォルムが多かったが、現在は360度どの角度から見ても異なる表情を見せる、複雑で有機的な形が特徴となっている。この変化について村山さんは、「作品を立体として捉え、鑑賞者が様々な視点から作品と対話することを意識するようになったため」と語る。
作品に施された繊細な模様も、村山芸術の重要な要素。これらの模様は、暗闇の中で見るイメージを形にしたものだという。具体的なモチーフを持たない抽象的な文様は、見る者の想像力を刺激し、内面に深く響く。村山さんは、これらの模様について「架空のもの」であり、「説明できない」と語っており、作品に神秘的な魅力を添えている。
受賞作について村山さんは、「うれしい」と素直な喜びを語った。自身の新しい挑戦が、公の場でどのように評価されるのか関心を持っていたという。
村山さんは伊勢原美術協会会員として市展のサポートのほか、市内で陶芸教室を開くなど、精力的に活動を続けている。村山さんの作品は、5月12日(月)から18日(日)に東京都美術館(東京都台東区)で開催される日本新工芸展で展示される。