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ホームスパン体験、3日間でマフラー作成

まきまき花巻

ホームスパン体験、3日間でマフラー作成

明治時代に伝えられたとするホームスパンは、今も岩手の誇るべき産業の一つです。(まきまき花巻にも記事が掲載されています。「日本ホームスパン」)

祖父が東和町で長らくホームスパンに関わっていて生前はジャケットやハンチングなど身に着けていたので、その独特の風合いと色合いに、子供心にも何となく親しみを感じていました。今は迷いに迷って選んだストールを何年も愛用していますが、ふわりと軽くて暖かく、冬のファッションのポイントとして欠かせないアイテムです。

ホームスパンを愛用すればするほど、もっと知りたい、自分の手で作ってみたいという気持ちが高まり、6月の終わりに「日本ホームスパン」の3日間体験コースを友人と一緒に受講しました。

講習1日目「染色とカーディング」

事前にご連絡いただいた通り汚れても良い動きやすい服装にエプロンをつけて、10時に東和町の「日本ホームスパン」の工場に伺いました。

3日間の工程を説明していただいた後、染色された羊毛サンプルの中から3色選びます。頭の中では素敵なマフラーのイメージがたくさんあるのに、そこに到達するための道筋が全く見えません。色の染まり具合、糸の紡ぎ方、織る時の縦・横の糸の使い方など、多くの事が影響するそうです。「正解はないです」という菊池社長の言葉を聞いて、組み合わせてみたい好きな3色をシンプルに選択しました。

シャンシャンとリズミカルな織機の音が響く工場エリアを抜け、長靴に履き替えて、お湯を沸かしている大きな釜、脱水機、ガスコンロがある、染色用の建物に移動。

染色前の準備として、手渡されたビニル袋から白い羊毛をカゴに移してほぐし、お湯をかけて長靴で軽く踏んで水分に馴染ませます。選んだ色に合わせて調合された粉状の染料を大きな鍋に入れてお湯で溶き、その中に羊毛と酢酸を入れて、温度を上げるために火にかけます。

   

お湯をかけて羊毛を水分に馴染ませます。

染めムラができないよう、かき混ぜて鍋全体の温度を均一に。

羊毛が染め上がるまでに、植物性と動物性染料の違いや、羊毛を取る羊の種類など広くお話をききました。また、鍋で煮る時に温度が高い場所があると色むらが出てしまう事、複数の色を混合していると羊毛に入っていく速度が異なる事など、実際に羊毛の染まり具合を見ながら、伺いました。ビーカーで染料をすくってみて透明に近づいていれば、染料が羊毛に移った証拠です。網が付いた平たい枠に羊毛を移して天日乾燥させている間に次の色と、3回繰り返しました。

染まり具合を見ながら3色分続けます。

染め上がった羊毛を乾かします。

お昼休憩の後は、染めた羊毛からゴミなどを取り除いて繊維を整える「カーディング」です。細い針金が何本も埋め込まれたローラーがゆっくりと回る機械に、少しづつ羊毛が入っていくようにかたまりを置いていきます。羊毛が反対側から出てくる時はふわふわと綿あめのようになって、ローラーに巻き付いていきます。厚さが4センチ程度になったら、ローラーと羊毛の間に腕を滑り込ませて切れ目を入れて、平たくなった羊毛を取り外します。

羊毛を少しづつ入れていきます。

針金付きのローラーを通ると・・・

羊毛がふわふわになって出てきます。

一緒に受講している友人の分も含めて全部で6色。色を変える時にできた羊毛のグラデーションがとても美しく、テンションが上がりました。1日目はここで終了です。

講習2日目「手紡績」

1日目に作ったふわふわの羊毛を、工場内の電動紡ぎ機で糸にしていきます。

電動紡ぎ機の回転を一番ゆっくりに設定していただき、左手で細長くまとめた羊毛を持ち、右手で紡ぎ機の中に吸い込まれていく羊毛の速度(巻き具合)を調整します。社員の方が見本を見せてくれたのですが、羊毛がクルクルと縒られて糸になっていく様子は、原理としてはシンプルですがとても不思議でもあります。

社員の方がやるとスムーズに糸が出来上がります。

なんとか紡いだ糸を糸巻きに移します。

縦糸は糊をして乾燥させます。

早速自分でやってみたら、極細になったり極太になったり、ゆっくりと紡ぎ機に入るよう力をかけたら植物の弦のようにらせん状になってしまったり。翌日の機織りまでに十分な量が紡げるのかとにかく不安でしたが、社員の方の多大なご協力によりなんとか十分な糸が紡ぎあがりました。縦糸に使う分のみ糊がけして終了。

朝の10時からランチとおやつ休憩をはさんで4時過ぎまで、こんなに集中したのは久々です。

講習3日目「整織」

いよいよ楽しみにしていた機織りです。糸の太さのばらつきも手作りの証。社員の方がお手伝いくださった部分との差は歴然ですが、気になりません。糸を受け取って早速機織り機がある部屋に移動して、縦糸を機織り機にかけていきます。

縦糸を何にするかで印象が大きく変わります。

不揃いな糸もちゃんとそれなりに見えます。

手織りの機織り機は2台。急ぎで見本を作成する時などまだ手織りで作るそうです。手際良く模様入りのマフラーを織っている社員の方の手元に目が釘付けですが、時間が心配です。早速貸していただく機織り機の下に潜り込んで、縦糸を取り付けていきます。ここは社員の方にご協力いただいて、糸を手渡してもらい二人で進めます。やっと結び付けたら、一本一本を「綜絖(そうこう)」に通していきます。集中力が切れたのか数か所飛ばしてしまい、やり直しする事2回。

やっと準備ができました。

座る位置の反対側から。

一本一本、飛ばさずに・・。

一番シンプルな平織りです。ここからは落ち着いて1段1段織っていくだけ。時間一杯、カシャンカシャンという音を楽しみにながら織り進めます。縦糸と横糸がどんな感じに見えるのか、色合い風合いを見ながら横糸を変えるタイミングを考えます。

終了時間ギリギリで仕上げ、端のフリンジの始末をして袋に入れたら、なんと素敵に見える事か(と3日間の苦労を思って自画自賛です)。

糸がだんだんとマフラーになっていきます。

なんとか完成!

あとは自宅で縦糸の糊を落として、フリンジの長さを整えれば完成です。10%程度縮むというので短めのマフラーになりますが、ブローチで留めてもいいかなと冬が楽しみです。

今回、染め、糸紡ぎ、手織りと一通り体験した事で、さらにホームスパンとこの手仕事が岩手に根付いていった歴史にますます興味がわいています。3日間で何とか仕上げられたのは社員の方々のおかげと感謝しつつ、また機会があれば次は何色にしようかな(染めた羊毛もまだ残っているし)・・・と、考え中です。

ぜひ、手仕事に興味がある方、ホームスパンが好きな方、おすすめです。

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