キモカワ寄生生物『ウオノエ』を美味しく食べるなら素揚げと炊き込みご飯がオススメ
魚の口の中に寄生する不思議な生物ウオノエ。見た目は最悪ですが、その味はなかなかのものです。
キモカワ寄生虫「ウオノエ」
魚につく寄生虫の中にはアニサキスやシュードテラノーバ、クドアなどのように人体に被害をもたらすものがおり、嫌われています。しかし中には我々には直接被害をもたらさないにも関わらず、嫌われているものがいます。その最たるものが「ウオノエ」です。
ウオノエは魚の舌に付着し、吸血するタイプの寄生虫です。寄生された魚の舌はやがて壊死し、ウオノエはまるで自らがその舌であるかのように居座ります。
魚を捌こうとすると口中から突然現れるため嫌われており、見かけた瞬間に調理ができなくなってしまったという話もよく聞きます。しかしよく見ると可愛らしい顔をしており、個人的には見つけるとほっこりした気持ちになります。
名前の由来は「魚の餌」
ウオノエの仲間は魚の体表に寄生するタイプの寄生虫の一群で、体側に取り付くウオノコバン属、えらぶたからはみ出るように付着して寄生するエラヌシ属などが含まれます。その中で、魚の口腔内に寄生するいくつかの種を総称してウオノエと呼んでいます。
ウオノエとは漢字で書くと「魚の餌」。まるで咥えられた餌であるように見えるからこのような名前がつけられました。釣りをしているとしばしば、大きなアタリと強い引きの後でフワと軽くなり、魚が逃げてしまったかな…と思いながら巻き上げてくると、針にこれが引っかかっている…ということがあります。一瞬「あれ、こんな餌つけたっけな」と思いますがすぐに「魚が釣れたが、針がウオノエにかかってしまいこれだけが魚から外れる形になった」のだと気づき悔しい気分になります。
ちなみにいくつかの種は特定の魚種に多く寄生することがわかっており、例えばアカムツに寄生するものはアカムツノエ、トビウオにつくものはトビウオノエと呼ばれています。
食べたらめちゃ美味い
そんな魚にとってもヒトにとっても厄介な存在であるウオノエ。しかし、実は知る人ぞ知る「美味しい食材」だったりします。
まるでダンゴムシのような見た目からは想像ができませんが、加熱したウオノエはぷりっとした身質とエビやカニのような食欲の湧く甲殻類の香りがあります。そしてその味はシャコのように濃厚で、臭みは全くありません。産卵期には卵のぷちぷちとした食感も楽しむことができます。
殻も柔らかいので、素揚げにするとスナック菓子のようでビールとの相性は抜群。また出汁も美味しいので、数が集まれば半割りにしてご飯に炊き込んでも乙な味です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>