息子の障害、園の保護者に理解してもらえる?懇親会での説明に意気込むも……
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
保育園の保護者さんたちにわが子の障害を受け入れてもらいたい!
きいちゃんは身体が小さめなため、小学2年生くらいまでは保育園児に間違えられることも多かったのですが、小学3年生になった今はどこからどう見ても小学生!という体格にすくすくと成長中です(母はうれしい反面、ちょっと寂しい……)。
さて、前回は「新生活」をテーマにして、保育園入園時(当時きいちゃん0歳)に主に保育園や担任の先生に対し、障害のある息子を理解し、受け入れてもらうために私がしたことを書きました。
今回は、同じ保育園のクラスに通う児童の保護者さんたちにどうやって溶け込めたか、そしてどうやってきいちゃんの障害を受け入れてもらったか、ということについて書きたいと思います。
受け入れてもらえるかは私の説明次第⁉意気込むも……
きっと昔の私のように、保育園や幼稚園に通う前の障害のあるお子さんをお持ちのパパママさんたちは、ほかの保護者や子どもたちに自分の子どもを受け入れてもらえるか心配な方もいらっしゃると思います。
まずは、自分の口から丁寧にきいちゃんの障害を説明して、ほかの保護者さんたちに理解してもらわなければ……‼と当時の私は意気込みました。
しかーし‼
きいちゃんが入ったのは保育園。そう、働くパパママたちのお子さんが通う園です。はっきり言って、行きも帰りもバッタバタ。私もでしたが、みんな、仕事前や帰りに子どもをサッと預け、サッと連れて帰り、忙しくて1日1日を回していくのに精いっぱいです。
ほかのママさんたちとも、挨拶を交わすことはあるものの、少し立ち話……なんて、そんな時間はありませんでした。
しかし、保育園が始まって間もなく、その時は、やってきました……。
そう、懇談会です。
やっとめぐってきた自己紹介の機会!明るく笑顔で話そうとしたら……
やっと、やっとここで自己紹介ができる……!ここできいちゃんの障害をカミングアウトできる……!と思いました。
保育園入園当時、きいちゃんはまだ6ヶ月。私もダウン症のある子のママになって6ヶ月。まだまだ気持ちが安定していない状態でした。
でも……!暗ーくならず、障害なんか気にせずに、明るくきいちゃんのことを笑顔で話せば、きっとほかの方も構えすぎることなく自然に受け入れてもらえるはず……!元気に挨拶して頑張ろう……!と、何度もシミュレーションまでして挑みました。
そして当日、10人くらいの0歳児クラスで、保護者の方は7名くらい出席されていたでしょうか。みんな、自分の子どもの性格、好きなこと、嫌いなものなどを話して、和やかに自己紹介が進みます。
そしてとうとう私の番に……
なんと……途中まで普通に話せていたのに、きいちゃんの障害名を口にした途端、ポロッと涙が出てしまったのです…。
自分では明るくしようと思っていたのに、心はそうじゃなかったんですね。つらいという本音の気持ちが涙になって出てしまいました……。でも、見渡すと……「うん、うん」という顔で聞いて下さっている方、「頑張れ」というような気持ちで聞いてくださっている方、そこには温かい空気が流れていました。
考えてみるとみんな、ママ歴1年経ってないママさんたちなんですよね。自分の子どもに今、障害がなくても、いつどうなるかなんてわからないし、障害だけではなく、急な発熱や病気など、不安に思ったこともあったのかもしれません。だから、きっと私の気持ちや立場同じ年頃の子どもを持つ親として、分かってくださっていたのかもしれないな、と今は思います。
きいちゃんが保育園でいじめられるかも……!と思っていたのは私の杞憂でした。
そうして、きいちゃんと私の保育園生活は無事にスタートしたのでした。保育園の先生方もほかの保護者さんたちも、明るく普通に私たち親子を受け入れてくださったのでした。
これから新しく新生活を送る予定のお子さんやそのママパパたちは不安があると思いますが、こちらが心を開くと、分かってくださる方のほうがずっと多いです。頑張ってくださいね!
執筆/星きのこ
(監修:鈴木先生より)
私は障がいを持って生まれてきたお子さんの親御さんに「この子の染色体の1%には染色体異常があるかもしれませんが、99%は正常なのです」と日頃から伝えています。つまり、その1%のところは主治医が診るので、残りの99%のところは親御さんが楽しく育ててくださればいいのです。
世間ではさまざまな障がいや病気を抱えて過ごしている方々がいます。そして周りの人たちは、その障がいや病気の詳細を知る由もないのです。最近は、その子の持っている障がいや病気に関して周りの子たちにも知ってもらうために、親御さんが教壇に立って伝えることも珍しくありません。できるだけ早い時期に学校のみんなに障がいのことを理解してもらえれば、障害や特性があるお子さんも楽しい学校生活が送れるのではないかと思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。