脳内の不調を改善する薬物療法。様々な効果がある薬について紹介【心の不調がみるみるよくなる本】
不安障害の治療方法② 薬物療法
不安障害には薬物を用いた治療方法が有効です。
薬物療法を行うことで脳内の不調を改善し、症状を抑えることができます。
薬物療法でもっともよく使われる抗うつ薬「SSRI」
不安障害の治療に使用される薬には「抗うつ薬」「抗不安薬」「β遮断薬」などがあります。どの薬も効果や安全について確かめられていますが、副作用や依存症の危険を避けるためにも、必ず医師の処方に従って服用するようにしましょう。
抗うつ薬のひとつであるSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)は、不安障害の治療にもっともよく使われる薬です。日本語では「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」といいます。
不安や恐怖には、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足が影響するため、この薬で神経細胞間に放出されたセロトニンが再び神経細胞に戻ってしまうのを防ぎ、セロトニンの量を減らさないようにします。個人差はありますが、不安や緊張の緩和といった効き目が出るまでに数週間はかかるとされています。
一方、抗不安薬には即効性のあるもの、効果が長く続くものなどの種類があるので、SSRIの効き目があらわれるまで補助的に使われることがあります。脳の興奮状態を静める神経伝達物質ギャバの働きを増強することで不安を減らします。
β遮断薬は、震え、発汗、動悸などの身体的症状を一時的に抑える薬です。高血圧や心臓病の治療にも使われています。
薬物による安定で「成功体験」の可能性も
薬物治療は、認知行動療法と併用するのが一般的です。
認知行動療法を進める際、薬物を用いることで一時的でも安定した状態であれば、医師との対話や作業に集中できるという利点があります。また、薬の効き目で不安や緊張が弱まり、苦手な場面や行動に対応できたという「成功体験」が、患者の自信につながることも期待できます。
しばしば、「精神科の薬は習慣になってやめられなくなる」という不安の声を聞くことがあります。抗不安薬の一部には服用を続けることで効果が弱まる「耐性」を持つものや、服用をやめる際の離脱症状の恐れもありますが、いずれも、自分で勝手な判断をせず、医師の指示に従っていれば、心配する必要はありません。また、治療で中心的に用いられる抗うつ薬には、耐性や依存性はほとんどありません。
薬ごとの副作用を見てみましょう。SSRIの副作用は少ないのですが、飲みはじめにイライラや興奮が高まったり、吐き気や食欲不振が起こったりする場合があります。抗不安薬には鎮静、催眠、筋弛緩といった作用があるため、眠気やふらつきが起こる可能性があります。β遮断薬は血圧を下げるので、低血圧や低血糖に要注意です。またどの薬も服用中は原則としてアルコールは禁止です。
不安障害の治療に使用される主な薬
不安感や恐怖といった心の症状や、動悸や発汗、震え、緊張といった体の症状は、薬を服用することで改善することができます
薬
SSRI
パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)など
効果
緊張する場面での不安を抑えたり、消極的な気分を解消したりする作用がある
副作用など
吐き気、眠気、頭痛など
薬
抗不安薬
エチゾラム(デパス)、ブロマゼパム(レキソタン、セニラン)、クロ ナゼパム(リボトリール)など
効果
強い緊張を感じていた状況にのぞんでも、不安が軽度または感じなくなる
副作用など
眠気、ふらつき、脱力感など
作用時間の短い薬を必要なタイミングで服用する場合もあります
薬
β遮断薬
プロプラノール塩酸塩(インデラル)、カルテオロール塩酸塩(ミケラン)、アテノロール(テノーミン)など
効果
動悸や発汗、手の震え、頻脈といった身体症状を改善する作用がある
副作用など
低血圧(ぜんそくのある人は使用不可)
本来は高血圧症や不整脈といった循環器疾患の治療薬です
※「薬」欄の( )内は商品名
なんとなく使用すると依存が生じる場合もあるため、医師とよく相談しながら用いるようにしましょう
CHECK!
薬物療法では、脳内の伝達物質に働きかけて不安や身体症状をやわらげる
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修