【劇団「ユニークポイント」新劇場「ひつじノ劇場」】 2月のこけら落とし公演を前に鋭意制作中。「みんなが集まれる場所に」
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は藤枝市の劇団「ユニークポイント」の新劇場「ひつじノ劇場」を題材に。(写真・文=論説委員・橋爪充)
1999年に東京で活動を始め、2018年に藤枝市に拠点を移した劇団「ユニークポイント」の新劇場「ひつじノ劇場」を訪ねた。2月8日のこけら落とし公演まで1カ月を切った時期。劇場はまだ「鋭意制作中」だった。
階段状の客席のしつらえは形になったが、舞台スペースの整備、照明器具の設置などはこれから。「なんとか間に合わせます」。 劇団主宰で劇作家・演出家の山田裕幸さん(焼津市出身)は宣言した。
ユニークポイントの専用劇場として約6年、多くの演劇ファンや市民に親しまれた藤枝市内の小劇場「白子ノ劇場」が閉館してから丸1年。移転先を探していたところ、藤枝江崎新聞店からかつての店舗兼住宅を紹介された。
「席数約40の白子ノ劇場より狭くはなるが、直々に声をかけてもらったこともあり、『うまくいく』という直感がありました。旧東海道筋にあること、そこに住んで『地域住民』として劇場運営ができることも大きかった」(山田さん)
もともとは新聞配達用バイクの集積地だった1階を劇場に改造した。旧劇場で使っていた資機材を移し、トイレを新設。30数席を予定する。床を新調し、スロープを付けた。階段を上る必要があった旧劇場では難しかった、車椅子での来場が可能となる。施工や内装は主に劇団員のナギケイスケさんが手がける。
劇場の名前は、刈ったあとの株から再度伸びてくる稲を意味する漢字に由来する。
「動物の羊じゃないんです。いろいろあって刈り取られた後に、再起した劇場。2番目の劇場。そんな意味を込めました」(山田さん)
こけら落とし公演では新作を披露する。「Come on with the rain」は季節外れの台風で足止めを食らった日本人旅行者たちの会話劇。
「本格的な稽古を始めたばかりですが、いつもの顔ぶれが演じてくれるので、心配していません。脚本はできているけれど、これから稽古を通じてどんどん変わっていく」(山田さん)
近隣には、ひつじノ劇場と同様に藤枝江崎新聞店の物件を活用した、人気ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」の後藤正文さん(島田市出身)による音楽制作スタジオや宿泊施設ができる予定。
「会うたびに『何か一緒にやりましょう』と言っています。音楽と演劇の違いはあるけれど、拠点作りということでは一致している。『みんなが集まれる場所』を作りたい」(山田さん)
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■劇団「ユニークポイント」の「Come on with the rain」
作・演出:山田裕幸
出演:古市裕貴、ナギケイスケ、古澤光徳、西山仁実、山田愛
会場:ひつじノ劇場(藤枝市藤枝2-3-34)
上演日時:2月8日(土)午後7時、9日(日)午後1時と6時、10日(月)午後7時、11日(火・祝)午後1時
観覧料: 一般2500円、25歳以下1000円(枚数限定)
※チケットは完売の可能性あり。予約、詳細はユニークポイントの公式サイト(https://uniquepoint.org/)を参照