藤沢出身画家・山内若菜さん 「他者と共存」伝える絵 第五福竜丸展示館で展覧会
都立第五福竜丸展示館(江東区夢の島)で10日から、藤沢出身の画家・山内若菜さんの作品展「ふたつの太陽」が開催されている。
マーシャル諸島ビキニ環礁で米国が行った水爆実験により、近海の自然や第五福竜丸をはじめとする日本の漁船が被ばくした事件から今年で70年になることを記念した絵画展。「西から昇った太陽」と称された水爆の光や海、漁船などを描いた『ふたつの太陽』や『神々の船』のほか、江島縁起の五頭龍伝説を題材とした『竜と天女』が展示されている。
作品は日本画の技法で描かれており、貝殻から作られた白色絵具である胡粉を、放射能を含んで空から降り注ぐ「死の灰」に見立てた。「日本画の表現は大海原。さまざまな表現を受け止めてくれる」と話す。
会場の第五福竜丸の船体に『ふたつの太陽』を、帆には『竜と天女』を掲げるコラボレーションとなった。幼少期から同館を何度も訪れていたという山内さんは「被ばくして、ボロボロになっても残る木造船からは、いつも勇気をもらえる」という。
山内さんはこれまでも権力に翻弄される小さな命をテーマに、創作活動を行ってきた。今回は一見関係のないビキニ環礁事件と五頭龍伝説を並べたが、「先住民としての龍と生贄にされた天女という声なき者同士の交配。権力の都合に巻き込まれた漁船たちと重なると感じた」。今回の展示については「戦争が絶えない世界に、他者との共存を藤沢から発信したい」と話した。
来年1月19日(日)まで。入館無料。作品は同館のほか、片瀬山Galleryエスポアール(片瀬山3の34の4)でも見ることができる(来年1月30日(木)まで/月・金・土・日曜は要予約)。