倉敷アフタヌーンティー(2024年夏) 〜 岡山産フルーツを味わうプチぜいたくなイベントを「倉敷の食文化」へ
「フルーツ王国」と呼ばれる岡山県。夏には白桃やシャインマスカット・ピオーネといったぶどう、冬にはいちごなど、次々とおいしい果物が旬を迎えます。
「倉敷アフタヌーンティー」は、そのような旬の果物が味わえる、2015年にスタートしたイベント。
夏と冬に定期開催されており、店それぞれのスイーツが贅沢(ぜいたく)に味わえると人気を博しています。
「『倉敷といえば倉敷アフタヌーンティー』といったイベントにしたい」と運営しているのが、参加店舗を中心に構成する倉敷アフタヌーンティー実行委員会です。
実行委員長・森田 美紀(もりた みき)さんと、キャンドル卓 渡邉邸の店長・井上良治(いのうえ よしはる)さんに、これまでの取り組みや思いを聞きました。
岡山産フルーツをゆったり味わって 倉敷アフタヌーンティー
フルーツ王国ならではのアフタヌーンティーを提供する「倉敷アフタヌーンティー」。
特徴や2024年夏の参加店舗について紹介します。
倉敷アフタヌーンティーについて
アフタヌーンティーとは19世紀頃にイギリスで生まれた喫茶習慣で、紅茶とともに軽食やスイーツを楽しむ優雅なお茶会のこと。
夜に開催される晩餐会(ばんさんかい)に向けておなかを満たすという、貴族たちの午後のひとときだったようです。
アフタヌーンティーを倉敷らしくアレンジした「倉敷アフタヌーンティー」は、岡山産の新鮮なフルーツを使ったスイーツの数々を、倉敷のお店でゆったりと味わえるのが特徴です。
夏の倉敷アフタヌーンティーではぶどうか桃を、冬の倉敷アフタヌーンティーでは、いちごを必ず盛り込んでいます。
ゆっくり過ごしてほしいという思いから、どのお店でもドリンクは「2杯付き or おかわり自由 or ポットで提供」。
アフタヌーンティーらしく2段以上に重ねての、華やかな盛り付けです。
工夫を凝らしたメニューも盛り付けも、各店舗でまったく異なり、店それぞれの独自性を目でも舌でも楽しめます。
2024年夏の倉敷アフタヌーンティーについて
第20回となる、2024年夏開催の倉敷アフタヌーンティーは28店舗が参加しています。
開催期間などは以下のとおりです。
倉敷国際ホテルとくらしき桃子 倉敷市民会館店のPetit Afternoon Teaを除き、予約が必要です。
▼参加店舗一覧はこちら。
2024年夏の初参加店は以下のとおりです。
通常のアフタヌーンティーに加え、2023冬開催時に誕生した「Petit Afternoon Tea(プチ アフタヌーンティー)」も提供されます。
「量が少なめのアフタヌーンティーを食べたい」や「価格を抑えてほしい」というお客さんの要望から誕生したPetit Afternoon Tea。
量を少なめにし、ドリンクを1杯にすることで低価格に抑えています。
2024年夏は3店舗が提供します。
▼くらしき桃子 倉敷市民会館店のPetit Afternoon Tea(一人税込2420円)
▼72cafeのPetit Afternoon Tea(一人税込2200円)
▼Happy supply cafe spicaのPetit Afternoon Tea(一人税込2000円)
参加店舗や予約時間など詳しい情報については、倉敷アフタヌーンティー公式サイトで確認してください。
倉敷アフタヌーンティーの歩み
第1回の倉敷アフタヌーンティーは、2015年の夏(7月10日~9月30日)。翌年の2016年からは夏と冬の年2回開催となりました。
開始当初は倉敷美観地区を中心とした9店舗の参加でしたが、倉敷市全域にエリアが広がり、第20回(2024年7月1日~9月30日)は28店舗が参加しています。
行政主導でスタートした倉敷アフタヌーンティーは、当初継続期間は3年となる予定でした。
しかし、3年目の終了が近づいた2017年、「注目度や人気も高まっているときに、やめるのはもったいない」と好評で2年の追加継続が決定。
そして5年目となる2020年冬、行政の支援がなくなりました。
すると、終了の危機を知った多くのファンたちから「もっと続けてほしい!」という声が寄せられたのです。
その声に背中を押され、参加店舗にも「このまま終わるのはもったいない、続けよう」という想いが生まれていました。
そこで、継続するために新たに発足したのが「倉敷アフタヌーンティー実行委員会」です。
2015年イベント立ち上げ時、倉敷観光コンベンションビューローの職員として携わっていた森田美紀さんが実行委員長となりました。
そのほかの実行委員は、倉敷アフタヌーンティーの参加店舗である以下のかたがたです。
・キャンドル卓 渡邉邸:井上良治さん
・くらしき桃子:楠戸敦郎さん
まずはホームページの開設と2020年夏の開催へ向けて、2020年3月16日~4月30日の期間、クラウドファンディングに挑戦。
クラウドファンディング(crowdfunding)とは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語で、インターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募るしくみ。
「毎回とても楽しみに参加しています」、「応援しています!」などの温かいメッセージとともに、支援は着々と集まりました。
そしてクラウドファンディングスタートからおよそ一か月後、目標額に達したのです。
支援していただけるのだろうか…
そんなことも考えていた心配性な私(たち?)ですが、継続したい思いは強く、クラウドファンディングに挑みました。
結果、始めてみるとこんなにも継続を望んでくださる方々がたくさんいらっしゃって、みなさんも不安な世の中なのに逆に励まされて…
あぁ、なんて倉敷アフタヌーンティーのファンの方々は心が温かいのだとしみじみ思いました。READY FOR「終了の危機を乗り越え倉敷アフタヌーンティーを継続していきたい」達成報告より
2020年夏以降は倉敷アフタヌーンティー実行委員会が、年に2回の倉敷アフタヌーンティーを主催しています。
ファンとともに作り上げてきた「倉敷アフタヌーンティー」。
これまでの道のりや今後への思いを、実行委員長・森田美紀さんと、キャンドル卓 渡邉邸の店長・井上良治さんにお話を聞きました。
倉敷アフタヌーンティー実行委員会 これまでの道のりや今後への思い
インタビューは2021年12月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
──倉敷アフタヌーンティーはどのような経緯で始まったのですか
森田(敬称略)──
今では地元のかたにも多く楽しんでいただいているのですが、もともとは観光客のかたに倉敷をより楽しんでもらうには、と考えて生まれたイベントでした。
岡山といえば、果物。ぶどうや桃がたくさん生産されているのに、美観地区で食べられる場所はそんなになかったんです。
ワンプレートのデザートだとどこにでもあるし、何かインパクトがあるものができないかと考えていました。
そんなときに雑談中、「この間、アフタヌーンティー食べたんだよね」という人がいて。
「アフタヌーンティーって何?」とその場でインターネット検索すると、段になったお皿に盛りつけられたスイーツの写真が出てきて、「うわー! これいいんじゃない?」と盛り上がったんです。
フルーツが味わえるだけでなく「感動体験」も生み出せるから、ぴったりだなと。
2015年にスタートして以降、倉敷アフタヌーンティーでは、夏はぶどうか桃を、冬はいちごと温かいメニューを必ず味わえるようになっています。
こだわりは新鮮な生の岡山産フルーツをメニューのどこかに使ってもらうこと。
また、ドリンクは「2杯付き or おかわり自由 or ポットで提供」というルールも、当初から変わっていません。
たとえば、キャンドル卓 渡邉邸さんでは、キャンドルの空間に身を置きながら、食事を楽しめます。
そういった時間を思う存分に楽しんでもらうには、ドリンク1杯だと足りないですよね。
そして、この感動体験を記録に残してほしいので、SNSでのフォトコンテストも毎回開催しています。
──倉敷アフタヌーンティーの参加店・キャンドル卓 渡邉邸の店長でもある井上さんは、これまでいかがでしたか。
井上(敬称略)──
キャンドル卓 渡邉邸は2014年12月にオープンし、倉敷アフタヌーンティーには2015年夏の初回から参加しています。
ですが、私が店長になったのは2016年で、初回にはあまり関わっていませんでした。
聞くところによると、森田さんの倉敷アフタヌーンティーへの参加のお誘いに「こんなん広まるわけないだろう」と、当時の担当責任者はなかなか厳しい対応だったようですね。
森田──
何度か通ったと思います。実は、そういった対応のお店が多かったんです。
アフタヌーンティーをご存じないですし「参加をお願いします」と言ってもやはり、すぐに「参加します」とはなりません。
什器(じゅうき)を準備したり、メニューを考えたり、お店の負担も多いでしょうし。
井上──
けれど年を重ねるごとに、当店には「アフタヌーンティー」のイメージで来られるお客さまが増えてきました。
「今のシーズンはないのね」と残念に思われないよう、倉敷アフタヌーンティーを開催していない秋と春にも、独自のアフタヌーンティーのメニューを作ったほどです。
同じように通年でアフタヌーンティーを提供するようになったお店がほかにもあると聞いています。
メニュー自体もどんどん進化中です。
当店では2016年頃まではデザート中心のメニューだったのですが、営業時間がランチ時の午前11時30分から午後2時ということで、食事半分、デザート半分に変えていきました。
今はオードブル、スープ、肉・魚の選べるメインディッシュ(両方も食べられるコースや牛フィレ肉コースも)、デザート10品というスタイルが確立しています。
それぞれのメニューは、シェフとパティシエが頭を悩ませながら、毎年・毎シーズンで変えているんですよ。
ゆったりとした時間を過ごしていただくために飲み物を切らさないようにと、当店はコーヒー・紅茶はおかわり自由にしています。
8杯くらい飲んでいるかたもいらっしゃいましたよ。
──2020年春、実行委員会を立ち上げて民営化してからの変化を教えてください。コロナ禍も重なりましたね。
森田──
まず挑戦したクラウドファンディングでは、予想よりも大きな金額での達成となり、本当にありがたかったです。
ファンのかたが多くいらっしゃることがわかり、応援の声をたくさんいただけて、とても励みになりました。
また、地元企業のかたも助けてくださって、倉敷アフタヌーンティーへの期待を身にしみて感じました。
同時にコロナ禍となり、外食そのものが貴重な体験となったと思います。
不安もありましたが、皆さんのエールのおかげでやってこられた部分が大きいです。
2020年はやはり提供食数はぐんと落ちたものの、驚いたことに、2021年夏には2019年を上回ってご利用いただけていたんです。
夜、外食や飲みに行きづらくなった分、「ランチで豪華に」と考えられるかたが増えたのかもしれません。
一人で来店できるお店もありますし、大人数でわいわいというよりも、少人数で楽しめるという点も後押しとなっていそうです。
残念ながら休業となったお店もありますが、がんばって営業しているお店も多くあります。
今回(2022年冬)は、民営化してから過去最高の27店舗の参加となりました。
井上──
お客さまの層も変わってきたように思います。
当店では県外から多くいらっしゃっていましたが、今は、地元での認知度が上がったこともあってか、県内のかたからの予約が増えました。
といっても、東京、大阪、香川から、季節が変わるごとに来てくださるお客さまもいらっしゃるんですよ。
森田──
お店のファンのかたがアフタヌーンティーのファンになってくださったり、アフタヌーンティーを通してお店のファンになってくださったり。この広がりがうれしいです。
倉敷アフタヌーンティーが、倉敷の食の選択肢のひとつというか、「定番」になってくればいいなと思います。
民営化してからは、新しいチャレンジもしています。
応援してくださっているピープルソフトウェアさんのアプリ「ポークン」でプレゼントに応募できるスタンプラリーを開催中です。
現在、スタンプラリーはポークンではなく、紙のスタンプカードを用いて実施
アプリを使って、1シーズンに10店舗巡ってくださっているようなかたもいらっしゃいました!
1シーズンに2店舗以上行くかたも、たくさんいらっしゃるんですよ。
そういったことが目に見えてわかるようになり、うれしいです。
そのほか、日本旅行さんとタッグを組み、倉敷アフタヌーンティーに行ける旅行プランが誕生しました。こういった冊子ができたのは初めてです。
2022年冬からはアンバサダー制度を開始しました。
特典として一部の参加店舗で使えるペア食事券を進呈したり、倉敷アフタヌーンティーのメニューを撮影する現場を見られたり、運営メンバーとのミーティングに参加できたり。
応援してくださるファンのかたたちと一緒に、倉敷アフタヌーンティーを成長させていけたらと思っています。
個人的な夢は、マルシェのような場の開催です。いろいろなお店がひとつの場に集まって、お客さまがぐるぐるまわってオリジナルのアフタヌーンティーを作っていくような。
井上──
おもしろそうですね。いろいろなお店の味が味わえる!
──おふたりから倉敷アフタヌーンティーへの愛情が伝わってきます。お客さまにはどんなふうに楽しんでほしいですか?
森田──
お店の空間や接客など、食べているときの時間そのものを楽しんでほしいと思っています。
お気に入りのお店を見つけて、ぜひお店のファンになってほしいです。そして良かったら、アフタヌーンティーのファンにもなってほしいなと思います。
あと、何回も来てほしいんです。メニューが毎回変わるので、何度でも新鮮な気持ちで楽しめますから。
井上──
新しいかたはもちろん、今来てくださっているかたの期待を超えるものを提供し続けないと、と思っています。
当店のシェフとパティシエふたりも「後ろは見ない」と言って、やる気に満ちているんですよ。
かつて提供した人気メニューのリバイバル案を出したことがあるんですが、「新しいのを出し続ける!」、「そのときそのときで、ベストを出し続ける!」と言っていて、レシピづくりにやりがいがあるようです。
森田──
次々と新しくなるメニューの背景には、そのようなやりとりがあったんですね!
写真だけ見ても「すごいなぁ」と幸せな気持ちになりますが、実際お店に来ると「こんなに量があったんだ」、「めちゃくちゃおいしい」のように、何倍も感動します。
一人で利用できるお店もあるので、お一人でも行きやすいかと思います。
ぜひいろいろなかたに足を運んでほしいです。
おわりに
お話を聞き、倉敷アフタヌーンティーへの熱い思いは、実行委員会を中心にお店のかたやお客さまにどんどん広がっているとわかりました。
倉敷ならではの素敵なお店で、岡山産フルーツで彩られたデザートや食事が味わえる、倉敷アフタヌーンティー。
私もときどき「自分へのごほうび」として、こっそり「一人倉敷アフタヌーンティー」を楽しんでいます。
次はどこのお店に行こうか…。パンフレットを眺めているだけでうっとりしてしまいますが、ぜひ予約して足を運んでくださいね。