第28回【キジュを超えて】私の年齢観測─萩原 朔美の日々
—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—
萩原 朔美さんは1946年生まれ、2023年11月14日に77歳、紛れもなく喜寿を超えているのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません!
連載 第28回 キジュを超えて
まったく自覚が無かった。
年齢を重ねると、頭が後退する。頭髪ではなく、歩行時のスタイルの事だ。
20代の時に、渋谷の並木橋にあった演劇実験室・天井桟敷の劇場前で撮影した写真と同じ場所で、60代、70代に撮影した。
並べて写真を見ると、60代からは、何故か足が前に頭が後方に引っ張られている感じなのだ。
という事は、足のスピードに頭がついていけないのか。
あるいは、頭は前進する行為に慎重になっていくのか。
そもそも、頭は前進する事を拒んでいるのかも知れない。頭は保守的なのだろうか。(笑)
まあ、とにかく加齢というのは、前屈みの姿勢から後ろに反っていくプロセスの事なのだ。
この身体の反応は一体何を表しているのだろうか。キジュを超えて、初めて身体から問題が出題されたのである。
20代、60代、70代の筆者
第27回 あゝ忘却の彼方よ
第26回 喜寿を過ぎて
第25回 生前葬でお披露目する「詩」
第24回 我を唱えず、我を行う
第23回 老いは戯れるもの
第22回 引きこもりの愉しみ
第21回 楽しい会議は老化を防ぐ
第20回 記録はアートになりたがる
第19回 老いが追いかけてくる
第18回 気がつけばおばんさん気分
第17回 新しい朝が来た、希望の朝だ♪
第16回 年齢とは一筋の暗闇の道
第15回 今こそ<肉体の理性>よ!
第14回 背中トントンが懐かしい
第13回 自分の街、がなくなった
第12回 渡り鳥のように、4箇所をぐるぐる
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長特別館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。