Yahoo! JAPAN

【浜松市秋野不矩美術館の所蔵品展「≪有為転変≫ 変化してやまぬ創造の源Ⅳ ~ 理 ~」 】 美術館設立に合わせて創作した「オリッサの寺院」。御年90歳で描いた横7メートルの作品

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区の浜松市秋野不矩美術館 で12月3日に開幕した所蔵品展「≪有為転変≫ 変化してやまぬ創造の源Ⅳ ~ 理 ~」を題材に。
自然光が入る第2室。入って左奥にある「オリッサの寺院」は幅7メートル超の大作である。秋野不矩、1998年の作。同じ年に開館した、自らの作品を集めたこの個人美術館のために描いた。御年90歳。人はこの年まで、創作に身をささげることができるのだ。

床面が正方形の展示室の1辺の壁に「オリッサの寺院」だけが掲げられている。白い壁に横長の画面。壁面の余白も含めて一つの作品のようだ。厚く重ねられた金箔が白の中で際立つ。寺院の塔の下には白く雲のようなものが配置されてて、風の音やにおいを喚起させる。居合わせた鈴木英司館長が教えてくれた。

第1展示室には「オリッサの寺院」の素描が2プラン、掲げられている。今回展でも出品されている「ラージャラーニー寺院」の建物を再構成して「オリッサの寺院」が出来上がっていることが、よく分かる。完成作より、建物がずいぶん混み合っている。不矩はここから「引き算」して画面をこしらえていったのか。

秋野不矩と言えば、インドの風景を題材にした作品のイメージが強いだろう。だが今回の所蔵展を見れば、この作家のモチーフの多様さに気づくはずだ。古面シリーズ(1987年)は天竜区の上阿多古に伝わる国の重要無形民俗文化財「懐山のおくない」で使われる各種の面を描く。紙をすいたのは作家水上勉だそうだ。

雨雲(2000年)は六曲一隻にプラチナ箔を貼った抽象画。実態が判然としない黒の塊が、確かに動いている。「魂」を感じさせる。「柚子」(制作年不詳)「紅梅」(同)といった植物の静物画も生命力あふれる色がいい。

不思議なのは鉛筆の素描「ミルクを飲む子供」(同)。牛乳鉢に唇を付けた子供を描いているが、地の白よりミルクが入っているだろう鉢の中の白が違って見える。優れた美術家の筆力は、こうしたマジックすら生み出すのか。
(は)

<DATA>
■浜松市秋野不矩美術館「≪有為転変≫ 変化してやまぬ創造の源Ⅳ ~ 理 ~」
住所:浜松市天竜区二俣町二俣130 
開館:午前9時半~午後5時
休館日:月曜(月曜が祝日の場合は次の平日)、年末年始(12月29日~2025年1月3日)
観覧料(当日):一般(大学生・専門学校生を含む)310円、高校生150円
会期:2025年1月23日まで

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【ちいかわ最新グッズ】雑誌付録の「めちゃかわ文具」が胸熱すぎる!尊いコンビのいろんな姿が見られるよ♪

    ウレぴあ総研
  2. 似合ってないかも。アラフォーさんにはNGなボブヘア5選〜2025年〜

    4yuuu
  3. <見苦しい嘘>娘の友だち、毎回わが家のトイレで失敗。付き添ってほしいと親に言ったら責任逃れ…!

    ママスタセレクト
  4. まわりと差がつく!地味とは言わせない【グレーコーデ3選】おしゃれ上級者の着こなしを紹介

    saita
  5. 【リアル給与明細】33歳、医療事務。生活費で手一杯……。教育費が貯まりません【FPが解説】

    4yuuu
  6. 元神宿のリーダー・羽島みき、結婚を発表!

    Pop’n’Roll
  7. 「ペットボトル」と“キッチングッズ”の2つを組み合わせると…?→「便利!」「考えた人すごい」

    saita
  8. 熊本の2月開催イベントまとめ

    肥後ジャーナル
  9. JR摂津本山駅の改札前にある『セブンイレブン』が一時閉店してる。再開はいつ?

    神戸ジャーナル
  10. 【ヒプムビ】映画『ヒプノシスマイク』Creepy Nutsら豪華アーティスト提供の劇中新曲トレーラーが公開決定! 木村昴さんらキャスト登壇の完成披露プレミア試写会で日本〝初〟インタラクティブ映画を300名が先行体験

    PASH! PLUS