【倉敷市】倉敷物語館 ~ 美観地区の入り口にある、貸室としても人気の交流スペース
倉敷美観地区の入り口に位置し、江戸時代から受け継がれた長屋門が見事な場所を知っていますか?
毎年開催される「春宵あかり」や、「ハートランド倉敷」などのイベントで会場としても使われており、ゆっくりできる休憩スペースと、一般のかたが使える貸室が魅力的です。
美観地区を観光で訪れた際、最初に寄ってほしい場所「倉敷物語館」を紹介します。
倉敷物語館はどんな場所?
倉敷物語館は東大橋家住宅を一部改造し、市民や観光客の交流の場所として2009年4月24日に開館しました。
コインロッカーや車いすの貸し出しがあり、美観地区観光の最初に立ち寄るのに最適な場所となっています。
貸室が空いていれば、授乳室として借りることも可能です。
庭や物語館を眺められる場所にはベンチがあり、カフェや多目的トイレも完備されているので、誰でも気軽に休憩できます。
まち歩きに疲れた際、休憩に寄ってみるのもいいですね。
▼物語館の東側には林源十郎商店への「ちかみち」もあります。
「ちかみち」の札がある門から抜けていくことも可能です。
▼倉敷物語館の長屋門には、情報コーナーとしてコインロッカー・自動販売機・各種パンフレットが設置されています。
ちなみに2020年までは同じ場所に観光案内所がありました。「倉敷館観光案内所」のリニューアルオープンに伴い、移転しているので気をつけてください。
展示室はどんな展示がされているの?
展示室は、倉敷の歴史を年表で展示していたり、倉敷市の日本遺産ゆかりのものが展示されています。
展示物の一部を紹介します。
倉敷市の日本遺産ストーリー
倉敷市には、3つの日本遺産ストーリーを構成する文化財が多数あります。
倉敷市の日本遺産ストーリー・一輪の綿花から始まる倉敷物語~和と洋が織りなす繊維のまち~
・荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~
・「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~
構成文化財を紹介する資料、映像などが視聴できるので、倉敷観光に役立つでしょう。
躍動感あふれる、阿智神社秋季例大祭の模型
展示室中央にある阿智神社秋季例大祭の御神幸行列(ごしんこうぎょうれつ)のようすを、ミニチュアで展示されているものを紹介します。
毎年10月に行われる秋季例大祭の御神幸行列は、江戸時代から続く伝統的な行事です。
ちなみにこの模型、何で作られていると思いますか?
なんと、「和紙」で作られています!
広島在住のかたが1人で5年かけて取材し、今にも動き出しそうな躍動感あふれるお祭りの行列を再現した作品です。
お祭りの雰囲気が伝わる素敵な作品になっているので、ぜひショーケースをのぞいて、お祭りの雰囲気を味わってみてください。
素隠居(すいんきょ)とは
このお面、見たことありますか?
一見すると不気味にも見えて、もしかすると子どもは怖がってしまうかもしれません。
上記写真の左に展示されているのが、素隠居の元祖「じじとばば」のお面といわれています。
阿智神社秋季例大祭で獅子舞の足の役を年配のかたが行なっていました。でも、足腰が弱って、続けていくのが難しくなります。
そこで、「じじとばば」のお面を作らせて、若者にこのお面をかぶらせたことが始まりです。
そして、この「じじとばば」のことを明治時代ころから、「素隠居(すいんきょ)」と呼ぶようになりました。
昔はフルフェイスのお面だったため非常に暑く、うちわであおぎながら歩いていたそうです。
子どもたちが寄ってきて、まとわりついてくるのをうちわで追い払ったりしていたことから、今では素隠居にうちわで叩かれると「福がある」といわれるようになりました。
お祭りやイベントで素隠居が歩いているのを見かけた際には、頭をうちわで叩かれて、倉敷ならではの文化に触れてみてください。
美観地区の景観を残す岡本直樹「倉敷鳥瞰絵図(ちょうかんえず)」
次に、倉敷市出身の画家の岡本直樹(おかもと なおき)さんが倉敷市中心部を描いた鳥瞰絵図を紹介します。
鳥瞰絵図は写真撮影不可ですが、取材のため許可を得ています
アメリカやフランスで画家として修業後、帰省のたびに面影が薄れてゆく故郷の町並みを鳥瞰絵図に残すために制作されました。
倉敷に長く住まれている地元のかたは、「そうだった、ここにこれがあったなぁ」と指さして昔を懐かしまれていましたよ。
1963年度版と2005年度版が並んでいるので、倉敷の移り変わりを眺めて、街の変化を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
地元愛が詰まった、毎月変わる「チョークアート」
油絵を趣味で描く倉敷市在住の小野肇(おの はじめ)さんが描いた、チョークアートが展示されていました。
毎月、季節に合わせたチョークアートを展示されるので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。
誰でも使える魅力的な貸室
貸室は倉敷市民に限らず、またプロ・アマチュアなども関係なく、借りることができます。
ピアノの発表会やライブ、個人の作品の展示会、婚活イベントの会場、結婚式の前撮りの着替え室として、さまざまな用途で使われているのです。
和室5部屋、会議室、多目的ホールの貸室は有料で提供を行なっています。最新の貸室利用料金は、公式ホームページを確認してください。
建物にはエレベーターがあり、トイレは2階にあります。
倉敷の雰囲気を味わえ解放感がある会議室となっているので、リピーターも多いとのことです。
多目的ホールは、ライブ演奏や展示会としてよく使われます。
次に、倉敷物語館で受付やイベントの企画をしている須山寛子(すやま ひろこ)さんにお話を聞きました。
倉敷物語館・主任の須山寛子さんにインタビュー
インタビューは2019年2月の初回取材時に行なった内容を掲載しています。
──倉敷物語館で働くようになった経緯を教えてください。
須山──
社会人になっていろいろな職場を転々としてきたのですが、まちづくりにもともと興味があり、30代になってから地域活性化やイベント企画運営を学べる大学へ通いました。
大学で非常勤講師として講義を行なっていた、「倉敷まちづくり株式会社」の社長に声をかけていただいて、ここで働き始めるようになったんです。
──倉敷物語館で、どういうお仕事をしていますか?
須山──
基本的に、貸室の受付や、イベントの企画・運営を行なっています。
貸室を借りにいろいろなかたが来られて、さまざまなイベントをされるので、自分のやりたいこととマッチできたら、コラボしたりしていますね。
切子あかりについて
──須山さんが発案された切子あかりについて、教えて下さい。
須山──
美観地区にある「ファーザークリスマス」の合田さんの呼びかけによって、お盆のあいだ美観地区の家々の軒先に2009年から飾り始めた「切子灯篭」がきっかけです。
もともと物作りが好きだったため、正三角形と正方形の十四面体である切子の作り方を覚えて、あかりとして提案できないかと発案しました。
そして、美観地区の和の空間を照らすあかりとして「切子あかり」は誕生しました。
──毎年3月に美観地区で行われている「倉敷春宵あかり」のイベントのなかでも、この切子あかりが一番好きです。
須山──
ありがとうございます。
夫が発案した、和傘をキャンバスにプロジェクションマッピングを映し出した、和傘マッピングも最近は人気ですね。
倉敷物語館での仕事について
──物語館のなかで、お気に入りの景色を教えてください。
須山──
やはり、2階から眺める美観地区ですね。
茶室から眺めるお庭も風情があって、お気に入りですね。
──お仕事に対して、どういうところにやりがいを感じますか。
須山──
県外から来られるお客様と出会うことも多いので、そういう出会いのなかで違った目線からの倉敷のいいところを教えてもらうことも多く、刺激になっていますね。
まちづくりをされている年配のかたから引き継いで、この倉敷の良さや伝統を守っていき、まちに活かしていきたいと考えています。
趣味と実益を兼ねているので、やればやるほど面白いですね。
──企画されたイベントからもその須山さんの想いが伝わってきます。
須山──
イベントを企画することは昔からやりたかったことなので、すごくこのお仕事は自分に向いていると思います。
切子あかりの展示イベントなどを通して、みなさんからよかったと言って帰ってもらうのが何よりもうれしいですね。
おわりに
倉敷物語館は、毎年3月の春宵あかりや11月のジャズストリートなどで何度も訪れており、個人的に思い出の多い場所です。
美観地区の歴史と文化を守り、地域活性化へとつなげる想いが須山さんのお話と笑顔から伝わってきました。
倉敷物語館を訪れて倉敷の文化に触れたり、イベントをチェックして参加したりしてみてはいかがでしょうか。
きっとステキな出会いと発見があるはずですよ。