さぁ、街へと躍り出よう!日常をダンス会場に変える「はまダンス」とは
【滋賀をみんなの美術館に】
いつもの街のいつもの商店街。
その往来の真ん中で、ダンスを踊っている女性たちがいました。
フラッシュモブ?
ミュージカル映画の撮影??
突如街中で踊りはじめた彼女たちの目的はいったい……?
正解のない自由な踊り「コンテンポラリーダンス」
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
お寺、琵琶湖岸、そして教会……
大津市内のあちこちでダンサーが踊っているのは、「コンテンポラリーダンス」です。
決まった型があるわけでもなく、音楽に合わせて踊るわけでもなく、自分の中から生まれてきたものを自由に表現するダンスです。
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
でもなんでコンテンポラリーダンスを大津のあちこちで踊っているのでしょう?
実は今「はまダンス企画」と呼ばれる滋賀県在住のアーティスト集団によって、「大津のダンス」を新しく作るプロジェクトが進められているんです!
自分の体と街の歴史から生まれる「大津のダンス」
この日は「はまダンス企画」による、大津の魅力をダンスで伝える映像の撮影が市内の「ナカマチ商店街」で行われていました。
この日の撮影に参加したのはこちらの三人の女性たち。
経歴も出身も様々で、ダンスもほぼ未経験な彼女たちが「ナカマチ三人娘」として、街中で踊る様子が撮影されます。
三人娘の振付を担当するのは、大津市にて『比叡平ダンスクラブ』を開いている佐藤健大郎さん、野田まどかさん。
日本のコンテンポラリーダンスの黎明期から活動されているダンサー夫妻です!
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
振付担当といってもコンテンポラリーダンスでは、決まった動きを人に教えるわけではありません。
いわば佐藤さんと野田さんは“料理人”。
“食材”である参加者たちの個性を引き出した振付(料理)を提案するのだそう。
今回作る「大津のダンス」のテーマは”みずうみの風のゆくえ”。
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
人間が住む前から続く「大津という土地がもつ歴史」。
クラシックバレエなど、かつては貴族の嗜みだったものが庶民化して、様々な表現が生まれた「ダンスの歴史」。
そして一人ひとりの「身体がもつ歴史」。
それらを重ねあわせて新たなダンスの振付を今ここで作ろうというのですが……
「ではお酒で酔った時のみなさんの失敗談を聞かせてください」
え!風はどこにいったの?!
彼女たちは失敗談を語ることに照れくささをおぼえつつも、
「私は泣き上戸で……」
「飲み過ぎた夜に……」
と、自分たちの体の歴史をさらけだしていきます。
話を聞き終えた佐藤さんは……
「はい、整いました」
なんともう振付が完成したということで、早速ダンスをはじめることになりました!
大津の街へと踊り出てみた
まずはナカマチ商店街の中にあるブティック「ナギサクラブ」を訪れ、ダンスに使う衣装を選びます。
「バーゲンみたいやなぁ!」
色とりどりの洋服がずらりと並ぶ中、初対面同士で最初はぎこちなかった三人もうきうき。
すっかり打ち解けた後は、商店街のど真ん中に文字通り”踊り出て”、コンテンポラリーダンスが始まりました!
ダンスの振付は三人娘の酔っ払った体の歴史から生まれたもの。
ゆらり、ゆらりと。
お酒や買い物の楽しさで酔ったように揺れる三人娘の体は、大津の街の商店街を吹き抜ける「風」になびいているようで。
不思議とそのダンスは街の風景になじみ、生活の場である商店街が華やいでみえました!
筆者も踊ってみた
するとそんな「ナカマチ三人娘」を見つめる怪しい人物の姿が……
この記事を書いている私です。
「ふむ……私も踊りたくなったぞ」
衣装選びのついでに選んでもらったサングラスをちゃっかりつけて一緒に踊ってみます。
実は振付には私の失敗談も含まれています。
失敗をダンスに変え、共有し、笑う。そんな「さらけ出す」気持ちよさがあり。
背骨を大きく動かす振付によって、久しぶりに体全体を使って呼吸ができた清々しい感覚を味わえました。
「なんやなんや」
「ダンスしてるんやって」
ダンスの撮影が進む中、興味を持って集まってきた地元の人たちが見学を始める一幕もあり、
散歩中のわんちゃんも交えて撮影させてもらえるなど、気づけば大津の商店街にはコンテンポラリーダンスによる交流の場が生まれていました!
身体を通して大津の魅力を再発見する
そもそもなぜ大津で新しくダンスを作ることになったのでしょうか。
「はまダンス企画」代表であり、バレエ講師・ダンスアーティストとしても活動している千代その子さんに話を聞きました。
「大津やダンスに歴史があるように、身体にも一人ひとりの歴史があるんですよね」
大津に住んでる人と、大津を訪れてくる人。
その人たちが自分の体を使ってこの街でダンスを作れば、自然と体から大津がにじみでてきて、街の魅力の再発見につながるのではないか。
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
そう考えた千代さんは、「浜大津の辺りでもっとたくさんの人と出会えることを一緒にしてみませんか?」と知り合いだった佐藤さんと野田さんとを誘い、「はまダンス企画」を2024年に立ち上げました。
「暮らしの中にダンスがあったら面白くなるよね」
2024年度は『旧大津公会堂』や『大津聖マリア教会』でだれでも参加できるワークショップを開催していますが、ダンスを「習う」教室は開いていないといいます。
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
「だって、上手になることが目的ではないから」
コンテンポラリーダンスの面白いところは、いかに上手に踊るかではなく、いかに自分を解放できるかということ。
「子どもたちにとってダンスは人との関わりを学べる場ですし、コンテンポラリーダンスでは個性や特性がそのまま魅力になります」。
(写真提供:はまダンス企画 撮影:中川敬介)
芸能の神様・蝉丸を祀る『関蝉丸神社』があり、古来より東西の文化の交流地だった大津は、アートとの相性がとても良い街なのだそう。
「いつでも気軽にダンスに触れられるまちにしたい」
コンテンポラリーダンスを普及するはまダンス企画の目標について千代さんはそう語ります。
人との関わりも、そして自分の心と体も乖離しがちな現代社会。
そんな世の中においてダンスは、身体を整え心を元気にする力があるし、肩書も立場も年齢も関係なくフラットに人と人とをつないでくれる。
「だからダンスって身体と心、人と人とをくっつける接着剤みたいですね」と千代さんは語っていました。
「最近ちょっと息苦しいな」と思うなら、パッと大津の街へと躍り出て、体を使って大きく息をしてみませんか!
今後の「はまダンス企画」のスケジュール
2024年11~12月にかけて、はまダンス企画によるコンテンポラリーダンスのダンスワークショップが開催されます。
「こども編」「おとな編」とあり、興味があれば誰でも気軽に参加できます!
【こども編】※対象:5~12歳
ダンスファシリテーター:千代その子
11月30日(土)10:30~11:30 12月1日(日)13:00~14:00
12月14日(土)10:30~11:30 12月21日(土)10:30~11:30
参加費:1500円 定員:15名(先着)
会場:大津聖マリア教会(大津市京町1-2-21)
申し込みはこちらから:https://forms.gle/1yvmdoYSZZUQdmty5
【おとな編】※対象:中学生以上~おとな
ダンスファシリテーター:佐藤健大郎、野田まどか
11月29日(金)13:00~14:30 11月30日(土)19:00~20:30
12月10日(火)10:00~11:30 12月21日(土)19:00~20:30
参加費:1500円 定員:15名(先着)
会場:旧大津公会堂(大津市浜大津1-4-1)申し込みはこちらから:https://forms.gle/1yvmdoYSZZUQdmty5
また2025年2月24日(月・祝)には旧大津公会堂ホールにて、「風」をテーマにしたダンスパフォーマンスが上演される予定です。
こちらも経験者・初心者問わず参加可能とのことなので、「踊ってみたい!」という方は応募してみてはいかがでしょう!
はまダンス企画2024
「みずうみの風のゆくえ」作品制作&パフォーマンス■顔合わせ
2025年1月12日(日)10:30~16:30
■作品制作
1月26日(日)9:30~15:30 2月8日(土)13:30~20:30
2月9日(日)10:00~12:30
※スケジュールは最大時間です。参加できない日時がある方は事前にご相談ください
■リハーサル
2月11日(火・祝)12:30~16:30 2月23日(日)9:00~16:00
■本番
2月24日(月・祝)9:30~18:00対象:小学3年生~おとな 参加費:5000円
定員:15名(先着)
作・演出:佐藤健大郎、野田まどか
サポートアーティスト:千代その子
出演申し込みはこちらから:https://forms.gle/vrfZgdzBXq8E4ou47
(取材・文:結城弘 写真:赤井悠大)
記事を書いた人結城弘(ゆうきひろ)/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、呑み鉄、地酒開拓。各SNS⇒ Twitter(X)/ Instagram/ note
「はまダンス企画」問い合わせ先
メールアドレス hamadance.shiga@gmail.com instagram @hamadance.shiga/
『滋賀をみんなの美術館に』プロジェクトは「しがトコ」が企画・取材を担当し制作しています。この記事は、滋賀県公式のポータルサイト『滋賀をみんなの美術館に』でも公開されています。
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