年収ダウン転職でも後悔しない方法とは?地方移住のマネープランを専門家に聞く
「地方に移住して、やりたい仕事に挑戦したい。でも、年収が下がるのはやっぱり不安……」
UIJターン転職を考える人の中には、そんな葛藤を抱える方も少なくありません。マイナビ転職の調査では、「移住を伴う転職における年収変化」について、平均約80万円年収がダウンしたという結果が出ており、前職よりも収入が下がってしまうケースが珍しくないようです。
しかし一方で、生活満足度の向上や余暇時間の増加など、金銭以外のメリットを得ている人も。
「やりたい仕事」と「安心できる暮らし」を両立するためにはどんな対策が必要なのでしょうか。
今回は、地方移住やUIJターン転職を検討する方に向けて、「収入が減っても安心して暮らすためのマネープラン」について、ファイナンシャル・プランナーの高山先生に解説いただきます。
ファイナンシャル・プランナー 高山 一恵 株式会社Money&You取締役の他、中央大学商学部客員講師や一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事を務める。CFP®、FP技能検定1級。「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂出版)など、マネー関係の著書・監修は数十冊に及ぶ。
家計を見直し、収入ダウン後の家計をシミュレーションする
一般的に地方企業の給与水準は、都市部の企業の給与水準と比較すると低い傾向にあり、UIJ ターン転職をする場合、年収が下がる方が少なくないようです。
やりたい仕事に挑戦したい!好きなところに住みながら仕事がしたい!と思う一方で、年収ダウンは気になるものですよね。
収入ダウンになっても生活ができるのかどうか、まずは現在の自分の家計の把握・分析をしてみることが大切です。
毎月、どの費目にどれくらいのお金を使っているのかを把握・分析するには、「家計簿アプリ」が便利です。
今どきは、便利な「家計簿アプリ」がたくさんでており、買ったものをひとつひとつ入力しなくても、スマホのカメラでレシートを撮影すれば、買った品物や金額、お店まで読み取ってくれます。
家計の状況は棒グラフや円グラフで表示され、支出を分析することが可能なので、明らかに無駄遣いをしているところなど、節約ポイントが簡単にわかります。
その上で、例えば収入が現在の7割、8割程度に減少したとしても暮らせるのかをシミュレーションしてみましょう。その時に収入だけでなく、移住先の家賃や物価など、生活事情をできるだけ調べ、現在よりも減らせる支出はないかどうかも把握すると良いでしょう。
一般的に都心部よりも家賃や食品、日用品、お子さんがいる場合には教育費が安くなるなど、地方に移住したことによってコストを削減できるところも多々あるでしょう。
たとえ、収入が今よりも70%、80%程度に減少しても、「この支出を削減できれば暮らせる」というのが分かることで安心感につながります。
ただし、地域によっては、車がないと生活が不便な場合もあります。
車を持つ場合には、車の購入費だけではなく、購入後もガソリン代や保険料など何かと維持費がかかります。
車は生活コストを押し上げますので、移住を希望している場所には実際に現地に赴き、車が必要なのか、もし車を必要とする場合には、購入以外にカーシェアリングなどの手段も選択できるのかという点を把握しておきましょう。
さらに大切なのは、現在「貯蓄」ができる家計かどうかです。現在はもちろんのこと、転職後も手取り収入の2割程度は貯蓄できることが理想です。
これまで特に心身の不安なく生活できた人でも、環境がガラリと変われば調子を崩し、予期せぬ出費があるかもしれません。
仮に体調不良などで連続3日間休み、4日目以降も仕事に復帰できなった場合には、会社員であれば健康保険から「傷病手当金」を受け取りながら休むことができますが、ここで受け取れるのはざっくりいうと、月収の3分の2。残りの3分の1は、これまでの貯蓄から穴埋めして生活しなければなりません。
また、実際に移住するとなると、引越し費用や住宅費など、まとまったお金がかかります。転職する前に生活費の6ヶ月〜1年分程度の貯蓄は確保するようにしましょう。
地方移住後の年収ダウンで後悔しないように事前にチェックすることは?
移住転職で年収が下がっても後悔しないようにするためには、なぜ、自分が移住転職をしたいのか「目的を明確にする」ことです。
おそらく、年収が下がってもやりがいのある仕事に就きたい、趣味や友人、家族との時間を増やしたい、親の介護のために帰る必要がある、子供の教育のためにこのエリアでどうしても子育てがしたいなど、さまざまな目的があって転職を考えているはずです。
年収が下がったとしても、目標が達成できるのであれば満足度は高いはず。目的が曖昧になっている方はぜひ、目的を明確にしましょう。
とはいえ、いくら好きな仕事につけたとしても、想定以上に生活レベルが下がったとなれば耐えられなくなってしまう方もいるでしょう。
そんな時に頼りになるのが移住先の支援制度です。事前に移住先に支援制度があるか調べておくことをお勧めします。
支援内容は各自治体によりさまざまですが、主な内容は以下のようになっています。
●移住支援事業:移住者を支援する金銭的補助
●就業支援:地方での就職や企業を支援する金銭的補助
●住宅支援:住宅取得やリフォームにかかる費用補助
詳しい自治体の支援制度は、移住を希望する地方自治体に問い合わせる他、「全国自治体支援制度検索/ニッポン移住・交流ナビJOIN」*1などで調べることができます。
各自治体の支援内容を詳しく調べ、自分に合った補助内容があるかどうかを確認しておきましょう。
さらに、転職先を選ぶ際には転職先の「福利厚生」もしっかりチェックしたいところです。
最近はユニークな手当を支給しているところも多く、「家賃補助」や「社員食堂」などのメジャーなものに加えて、会社の保養所を格安で使えたり、書籍の購入費を支給してくれたりするところもあります。
そういった視点も持って転職先を探してみると、「年収ダウン転職」のダメージを少し和らげることができるでしょう。
地方移住転職・IUJターン後、豊かに過ごすためには
私が過去に相談を受けた方の中にも、地方に移住転職をした方がいます。その方は大幅に年収が下がりましたが、現在とても充実している様子。
移住転職をする前は高収入を得ていたものの、生活のほとんどを仕事に費やし、趣味を楽しんだり、家族、友人と遊んだり、旅行に行ったりする時間は取れなかったといいます。
また、激務だったため睡眠時間も短く、体調も崩しがちに。結局、高収入を得ることができても、外食が多かったり、ストレスからネット通販で無駄な買い物をしてしまったりで、貯蓄はほとんどできていなかったそうです。
ところが移住転職後は、残業もなく、家族や友人と交流する時間も十分にとれ、料理も自炊で健康的な生活になったとのこと。収入は下がったものの、とても充実した暮らしをしているようです。
移住転職の目的を明確にすることにも関連するところですが、年収以外の価値、例えば、友人・家族との関係、趣味の時間、健康などといったところに、自分がどれくらいの価値を見出しているのか、という点が、移住後に豊かに暮らせるか暮らせないかの大きなポイントになりそうです。
移住後の年収ダウンには、資格・投資で収入面を補う方法も
とはいえ、収入も多くて、豊かに暮らせるのがベストですよね。地方移住後の生活をより豊かにするためには、収入面の補完も視野に入れておきたいところです。
そこで、無理のない範囲で「副業」「資格取得」「投資」などにチャレンジしてみるのもおすすめです。
たとえば、資格を取得する際にぜひ活用したいのが「教育訓練給付金」です。国の支援制度を活用することで、学びの費用負担を軽減できます。
教育訓練給付制度とは、キャリアアップを目指す人が、自分で費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し終了した場合、その経費の一部を支給する制度のことをいいます。ざっくりいうと、給付金をもらってキャリアアップできるお得な制度ということです。
教育訓練給付は、「一般教育訓練給付」と「特定一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の3種類があり、雇用保険に加入していて一定の条件を満たした方に給付されます。
雇用保険の加入期間や目的などによって利用できる給付と給付金額が異なりますが、2024年10月から「特定一般教育訓練給付」と「専門実践教育訓練給付」の給付金額が拡充されており、より多くの方が活用しやすくなっています。キャリアアップを目指す方は、ぜひチェックしてみてください。
また、2024年からスタートした新NISA制度を活用すれば、投資から得られた利益が非課税となり、資産形成の効率が高まります。
加えて、新NISAの「つみたて投資枠」では、金融庁の厳しい基準をクリアした商品のみがラインナップされているため、つみたて投資枠でラインナップされている投資信託でコツコツ積立投資をしていけば、一般的な方でも中長期的且つ安定的にお金を増やせる可能性が高くなります。
たとえば、国内、海外の株、債券に投資している投資信託の利回りは4%程度ですが、仮に毎月2万円を4%の利回りで30年間運用することができれば、1388万円(投資元本720万円)になります。
新NISAはいつでも売却することができるので、途中で売却し生活費や楽しみのために使っても良いですし、使わずに老後資金に充てることも可能です。
お金の不安を乗り越えて、地方移住転職でも自分らしいキャリアを
以上、移住転職のお金の不安を和らげるためのポイントをお話しさせていただきました。
UIJターン転職では、年収が下がる可能性がある一方で、生活の質や心の豊かさが向上するケースも多く見られます。
大切なのは、「自分が何のために移住転職をするのか」という目的を明確にし、その目的に沿った暮らしを実現するための準備をすることです。
家計の見直しや支援制度の活用、福利厚生のチェックに加え、資格取得や投資などによる収入補完も視野に入れることで、安心して新しい生活をスタートできるでしょう。
ぜひお金の問題をクリアにして、自分の夢の実現のために頑張ってくださいね!
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制作:マイナビ転職