「更年期じゃないの!?」婦人科を受診した結果は「うつ」でした。作者の「うつ経験」を描いた漫画が話題
イラストレーターでコミックエッセイストのハラユキさんは、「うつ病は、真面目で完璧主義で几帳面な人がかかる」というイメージをもっていたそう。そんな彼女が自身のうつ経験を描いた『誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド』は、うつと診断されてから通院・治療の過程を丁寧に描いたコミックエッセイです。今回は著者のハラユキさんに当時の心境を伺いました。
<あらすじ>
著者・ハラユキさんは「やる気が出ない」「だるい」「悲しくないのに涙が出る...」という症状に悩まされていましたが、几帳面でも神経質でもなく、能天気で楽観的な性格で自分が「うつ病」だとは疑いもしなかったそう。しかし楽しいことをしていたのに、気分が急に落ち込んでポロポロと涙がこぼれたハラユキさん。「やっぱ私どっかおかしい!」と気がついて、メンタルクリニックに駆け込みます。診断は、軽度~中度のうつ。メンタルクリニックを受診し、服薬をはじめた彼女でしたが、数日後、さらに体調が悪化してしまいます。「私の不調ってひょっとして...更年期!?」更年期がうつの原因と思い、婦人科を受診するのですがーーー
「更年期うつでは‥?」婦人科を受診してわかったこと
血液検査を受け、女性ホルモンの量を調べますが、「女性ホルモンの量は下がっていない」との結果が。生理周期の乱れや量に変化もなく、生理の時の痛みも悪化はしておらず、婦人科医から「更年期障害である可能性はかなり低い」と診断を受けたといいます。
―――「更年期うつ」を疑った時の心境、婦人科を受診するまで感じたことを教えて下さい。
ハラユキさん:その時はまだ『自分はうつになりにくい性格なんじゃないか』とどこかで思っていたので、まだ、『更年期うつ』の方がしっくりくると思ったんです。年齢的にも『それならしょうがないよな、納得できるな』と。婦人科に行くまでに不安なことは特になかったかも...。それよりも、原因がなんなのか、とにかく早くハッキリさせたいという気持ちでした。更年期なら更年期でその対策に頭を切り替えられるので。
―――婦人科を受診して、「更年期うつ」ではないとわかったときはどんな心境だったのでしょうか。
ハラユキさん:これは本当にびっくりしました。その時はもう更年期うつでほぼ決まりだろうと思っていたので。体調じゃなくて精神的なものなのかなぁ、とさすがにちょっとショックだった気もします。ただ、婦人科に行ったことで更年期障害の対処法を婦人科の先生にいろいろと教えてもらえて、『更年期って怖い!怖い!』と思っていたけど、『ちゃんといろんな治療法があるんだ』と思えて安心ところもありました。ケガの巧妙でした(笑)
メンタルクリニックの診療時間を有効活用するために始めたこと 起こった変化
更年期障害の可能性がなくなり、うつ病であると確定したハラユキさん。婦人科を受診したことで更年期対策を知ることができ、「更年期怖くないかも!」と思えたそうです。また、うつ症状の原因は様々で、うつによって治療法が違うことを知ったといいます。
ハラユキさんは、診療時間の有効活用を目指し、事前に質問を考えておくことにしました。たとえば、「うつ病にしては症状が軽い気がしていて、病気かどうか、薬を出す基準はどこ?」「うつ病にならないタイプだと自分では思っているのに、うつになったのはなぜ?」など、診察時間に担当医に質問するようにしたそうです。
―――事前に質問を考えておくことで、起こった変化を教えてください。
ハラユキさん:診察時間を有効に使えるようになった気がします。私はインタビューの仕事をしているので、いい情報を引き出すためには質問の仕方や内容が大切だと知っているんです。最初の方はぐったりしててそんなことは考えられなかったんですが、だんだん体調が良くなってくると、せっかくプロと話す機会だし、『知りたいことは全部教えてもらおう』と思えるようになりました。
―――「『なぜうつになったのか』は突きつめて考えすぎない方がいい。なぜならうつは、医学的にもわかっていないことが多い病気だからです」という医師の言葉にホッとしたとのことですが、なぜ安堵の気持ちが生まれたのでしょうか。
ハラユキさん:うーんなんだろう...。その道の専門家が「わからない」というのはある意味、原因を決めつけるよりも人間的に誠実な気がしたんですよね。あと私は「どうしてうつになったんだろう!?」と頭がぐるぐるしていたんですが、専門家でもわからないならしょうがないか、ってちょっと開き直れたのかもしれません。
「精神科医への5分インタビュー」を楽しめるようになって気付いたこと
診察中に「先生もっと覇気があってもいいのに」と感じたハラユキさん。しかし初診では「この低いトーンが不思議と落ち着く‥」と感じていたことを思い出し、「変わったのは私の感じ方の方だ!」とハッとします。ハラユキさんは仕事柄インタビューが大好きで、元気になってきたことで「精神科医への5分インタビュー」を楽しめるほどになったそうです。
―――本作品中では治療に対してご自身で調べたり、体調の変化をよく観察している様子が印象的でした。特に気持ちが落ち込んだときに心がけていたことはどんなことでしょうか。
ハラユキさん:完全に落ちていたときは、何かを心がけるような元気はなかった気がします。動けないから休むしかなかったという感じです。でも、うつが寛解してからは、自分の気持ちの落ち込みに敏感になりました。完全に落ちてからではなく、落ちていく途中の段階で早く手をうつのが大事だ
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心の声に耳をかたむけることは、未来の自分を救うことに繋がるのかもしれません。うつ病や治療を通して、ハラユキさんがご自分と向き合う姿勢は、「自分を助けるヒント」をそっと届けてくれます。