【倉敷市】第19回くらしき市民茶会(2024年9月29日開催)~ 老若男女問わず誰でも気軽に本格的な茶道に触れられる一日
2023年12月に関東から倉敷へ移住してきた私は、関東在住時から茶道をしています。
「茶会」と聞くと、着物を着て正しい作法でお茶を飲まねばならない緊張する行事のイメージがありましたが、倉敷では市民が気軽に参加できる「市民茶会」が催されているとのこと。
せっかく倉敷市民になったので、この秋に開催された第19回くらしき市民茶会へ足を運んでみました。
第19回くらしき市民茶会とは
2024年9月29日(日)に倉敷市芸文館において、市民茶会実行委員および倉敷市文化振興課の主催する第19回倉敷市民茶会が開催されました。
今回参加したのは、表千家流と裏千家淡交会倉敷支部(以下、「裏千家」と記載)の二団体。午前9時30分から午後3時の受付回まで、表千家流は芸文館アイシアターを会場に、裏千家は芸文館別館四階和室を会場に、お茶席が設けられました。
参加者のようす
会場に到着すると、着物姿の女性や袴(はかま)姿の男性が受付で迎えてくれて、伝統文化を感じに来たことを実感します。一方で、参加者は着物姿もありますが平服での参加者も多く見受けられます。また、杖をついた高齢の参加者から小学生以下の子どもの姿まで、老若男女幅広い年齢層の参加者がいました。
私も、この日は友人のお子さんと一緒に会場入り。私たち大人はお茶が好きなので楽しむ気満々ですが、未就学の友人のお子さんが一緒に楽しめるかドキドキしながら、まずは裏千家の会場へ向かいます。
会場中が和気あいあいと盛り上がった裏千家淡交会倉敷支部
私が裏千家で茶道をしており、お点前(てまえ)の流れや作法を知っているので、お子さんにも見通しを説明しやすいだろうと思い、はじめに裏千家の会場へ足を運びました。
到着すると前のお席が始まっていたので、私たちは待合(まちあい)という部屋に入ります。ここで、次に始まるお席に向けて気持ちを穏やかにして、会記を眺めたりお喋りを楽しんだりしながら過ごします。
着物を着た女性に案内されて、いよいよ私たちの入るお席がやってきました。会場は、待合から一つ階段を上がった先にある四階。倉敷市芸文館の別館は三階までしかエレベーターがないので「裏千家の会場は四階和室」との表示を見たときに首をかしげましたが、三階のお部屋のなかに階段があるとは。さらに、期待が高まります。
会場は開放感あふれた広い和室。その和室を囲むように参加者が続々と入ってきます。
全員が入場したのを確認すると、秋らしい暖色がうっすらと色づいた橘香堂の生菓子「金風」が参加者の元に届きました。今回の倉敷市民茶会オリジナルの和菓子ということもあり、参加者の目がキラキラと輝きます。
懐紙(かいし)や黒文字(くろもじ)も付いているので、手ぶらで参加しても安心。
子どもたちには茶券の有無にかかわらずかわいらしいお土産が配られ、会場中が和やかな雰囲気に包まれながらお点前が始まりました。
お点前中も、正客(一番偉いお客さま)が「今回のお菓子は、懐紙も黒文字も付いていて親切ですね」「子どもたちに配られたお土産を見て、私たちもあたたかい気持ちになりました」などお話をしてくださり、場が盛り上がったところでお抹茶が運ばれてきます。
多くの参加者がほぼ同じタイミングで飲み始めるので、作法がわからなくても大丈夫。私は同行した友人に作法を尋ねられたので一緒に飲みながら確認しました。私たち以外も和気あいあいとお茶席を楽しんでいるので、声の大きさも気になりません。
みんなで楽しくお茶を飲んでいたら、あっという間にお席も終了の時間。最後はお点前に使ったお道具を拝見して会場を後にします。
老若男女問わず参加しやすい椅子と机が用意された表千家流
続いて、芸文館アイシアターへ移動して表千家流のお点前を拝見します。
表千家流は、会場の前に椅子が並べてあり、そこに会記がありました。
表千家流の会場は、和室の裏千家とは打って変わって机や椅子が並べられていました。子連れの参加者が子どもをベビーカーに乗せたままお茶を楽しんでいたり、杖をついた参加者が安心した表情で椅子に座ったりする姿があり、年齢に関係なく誰でも歓迎する気持ちが伝わってきますね。
表千家流の和菓子も裏千家と同じ橘香堂のものですが「深山の秋」という名が付いたかわいらしいお菓子。こちらも、今回の倉敷市民茶会のみで食べられるお菓子です。
お菓子を楽しんでいるとお抹茶が提供されます。こちらも裏千家とは異なる種類のお茶が使用されているので、裏千家と表千家流で食べ比べ・飲み比べできるのがうれしいですね。
おわりに
茶券を持っていないお子さんへのお土産、懐紙や黒文字の準備、椅子席でのお点前など、老若男女問わず参加できる環境が整ったくらしき市民茶会。
裏千家での正客のように茶道に精通した人たちも参加するからこそ、初心者も本格的なお茶席体験ができる仕組みも整っていたことが印象的でした。
倉敷市は、日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」が認定される元北前船寄港地のある街。そのため、港町を中心に商人が集まり、たしなみとしてお茶文化が親しまれてきました。
これからも、倉敷の文化のひとつであるお茶に親しみをもつ人が一人でも増えるよう、続いていってほしいイベントです。