赤本や参考書が現代風にリニューアル
今まさに受験シーズンですが、大学受験に欠かせないものといえば「赤本」です。
「赤本」 約20年ぶりにリニューアル
赤本といえば、赤い表紙に大学名が書かれていて、大学や学部ごとに、過去に出題された問題や傾向などがまとめられた資料集のこと。その赤本が去年、およそ20年ぶりにリニューアルしました。内容や背景について、赤本を出版している、株式会社世界思想社教学社 上原寿明社長に伺いました。
株式会社世界思想社教学社 上原寿明社長
去年「赤本」70周年ということがありましたので、表紙についても検討してみようということになって、若い人や高校生に意見を聞きましたら「今の赤本は非常に迫力があっていいんだけども、圧が非常に強い」「もうちょっとマイルドなものにしたらどうか」ということですね。パステルカラーを使って、だいぶソフトになっています。大学の文字も、以前は目立とうということで、だいぶ強く大きく、ということだったんですけれども、今は受験生の方に馴染むようなデザインや文字を考えています。
赤本の表紙の赤い色は変えていないのですが、表紙の上の部分に帯状に入れていた色(前の年は濃い紫)を変更して、柔らかい淡い色、パステルカラーにしました。2025年版は緑のパステルカラーですが、今後1年ごとに水色、薄い紫と、3色で回して、色を変えていく予定です。
また「大きく大学名が書かれていることで周りに志望校を知られる、持ち歩くのが恥ずかしい」という声を受けて、大学名の文字を小さく、フォントも柔らかく変更しました。
赤本 思い出やリニューアルの反応は
赤本は、現役の受験生はもちろん、親や祖父母世代にも馴染みがあると思いますが、街で、赤本の思い出や、今回のリニューアルについて、表紙の写真を見せながら聞いてみました。
・「確かに威圧感はあったかもしれないですね。10冊くらいバーっと並んでいると赤い!そして文字が大きい!太い!みたいな。なんか、おとなしい感じ。「受験に勝つぞ!」はないかもしれない。今度こっちの新しいのが普通になる時代が来たわけですね。」
・「使ってました。2年前ですかね。数十冊買ったので、お金を使ってしまって親に申し訳なかったなと。過去のやつに愛着、イメージがあるので「これ本当に赤本なのかな?」って、見たときには思うかもしれないですね。」
・「親がすごく期待していたので、受ける予定もない大学の赤本30冊くらい買っていたのは引いちゃいましたね。シンプルな感じになりましたね。時代の流れに沿って、意見を汲み取って反映させるのは、いいことなんじゃないですか。」
・「15年前です。持っている赤本の大学によって「この人はこの程度か」とか思われるところあるじゃないですか。そういった意味で、ユーザーライクというか、お客さんの体験に沿ったいいリニューアルなのかなと思いましたけど。」
「細かいところまで気を配る今の時代ならでは」という声が複数ありました。一方で、厳しい受験を乗り越えたという男性からは「その威圧感やプレッシャーに負けていたらダメだ」という声も上がっていました。
ただ、リニューアルに好感を持っていた方は「もうそもそも威圧感に勝とう」という時代ではないのでは?と話していました。
教科書も新しい本に!日本史の教科書を英訳
ここまで「赤本」のリニューアルについてのお話でしたが、高校生向けの「教科書」でも、意外な形でリニューアルされたものがあります。通常は学校で使われる、ある歴史の教科書が、今の需要に合わせて、社会人向けの本として、新たに去年出版されました。歴史を中心に教科書や学習参考書などを扱っている、株式会社山川出版社 編集部 井上拓人さんのお話です。
株式会社山川出版社 編集部 井上拓人さん
高校の日本史の教科書で「詳説日本史」という教科書がございまして、その教科書を英訳したものです。弊社の野澤武史社長が、もともと社会人のラグビー選手をやっていて、いろんな外国人の選手がたくさんいるなかで「日本のことをもっと知りたい」「何かいい書籍はないか」と聞かれたときに、あまり薦められる書籍が世になかったんですね。「詳説日本史」を英訳したものを出せば、国内でも海外でも必要とされるだろうということで、始まったのがきっかけです。巻末には、英語の索引と日本語の索引をどちらも付しているので、どちらで引くことができるのも、この本のポイントですし、特にビジネスパーソン、海外で働いたり海外とやり取りがある方は、今増えていると思いますので、外国人と話す際に、日本の歴史を発信する目的で、使ってもらえればいいなと考えています。
この本のタイトルは「英文詳説日本史」。元となった「詳説日本史」は400ページほどだったのが、こちらは500ページほどになりました!構想から10年ほどかけて、去年3月に出版しました。
例えば、前方後円墳は英語で「keyhole―shaped kohun」。鍵穴のような形をした古墳と訳されています。
日本の歴史を英語で伝えたい日本人はもちろん、日本を訪れる外国の方、さらに一部海外の書店でも扱われているので、外国の人にも日本の歴史に興味を持ってほしいと話していました。
受験の資料集も、教科書や参考書も、需要に合わせたいろんな形で進化していますね。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)