ケールが「甘~い野菜」に!北海道の冬に育つとこんなにおいしい様々なメニューも
真冬の寒さが特に厳しい北海道上川地方で、苦~いイメージの野菜が大変身。
新たなブランド野菜誕生への取り組みを追いました。
縮れた葉っぱは、青汁の原料でもある葉物野菜『ケール』。
苦い味のはずですが、噛むと甘みが出てきて、苦みやエグ味がないんです!
その美味しさの秘密は、画期的なビニールハウス。
冬場にあるはずの"あの"設備が、ありません。
寒さが厳しい土地で、常識を覆す野菜栽培に注目です。
青汁のイメージが覆る?
真冬の北海道旭川市中心部の屋台村で、期間限定で行われた『ケール』を使ったフェア。
『ケール』は、キャベツなどの原種とされる葉物野菜で、ヨーロッパではよく食べられています。
栄養価が非常に高く、野菜の中でも栄養価が高いとされているブロッコリーと比べても、カルシウムは3.9倍、β‐カロテン(ビタミンA)は4倍、マンガンは4.4倍もあります。
しかし、日本では独特のエグ味や青臭さのため、青汁の原料のほかは、ほとんど普及していません。
このフェアで出されたケールは実は、真冬に地元・旭川市で収穫されたものなんです。
青汁のイメージとは違い、適度な甘みもあって、サラダにもよく合う『ケール』。
Ygeia(イギア)吉村栄佑代表は「一度食べたときに、茎までおいしかったので、一口大に切って、そのまま食感を楽しんでもらえたらと開発した」と話します。
開発の現場は、あのブランド米『ゆめぴりか』を生み出したことでも知られる、上川農業試験場です。
ハウスの中には青々としたケール!
でも、冬のハウスにありそうな設備がありません。そう、暖房がないんです。
極寒で暖房なし…だけど育つ秘密は
時には、マイナス20度を下回る気温になる、極寒の上川地方で、どうして暖房がないのに、野菜を育てられるのでしょうか。
上川農業試験場・精算技術グループの野田智昭研究主査が教えてくれます。
「ハウスの外張りが二重で、内張りがあるという構造になっている。ケールの周辺は2℃から3℃くらいあると思う」
ハウスは、外側は二重構造、内張りもあり、さらに、トンネルの中で栽培することで、日中に太陽で温まったハウスの内部を、極力冷えないようにしています。
そして新たな発見もありました。
「冬に栽培すると、ケール独特のえぐみ、青臭みが本当になくなる。甘みが本当に乗ってくるのも驚いた」
ケールは、寒さに負けないために水分を減らし、糖分を蓄積。その結果、サラダにしても、日本人の舌にあう野菜に仕上がったのです。
上川農業試験場は去年、『ゆきあまケール』としてブランド化。
今シーズンは葉物野菜が高騰するなか、暖房代ゼロで、流通経費も安い地元の"冬野菜"に、野田さんは、十分な競争力があると自信をのぞかせます。
1年中農業ができる強み
旭川市の野菜農家、守屋大輔さんは、冬場に出荷するホウレンソウに加え、昨シーズンから『ケール』の栽培を始めました。
独自に栽培研究も重ね、地元スーパーだけでなく、北海道外にも出荷しています。
「栽培作物を守るために、暖房を使うことは一切していない。暖房の燃料代はかかっていない」
夏場は主にトマトを栽培している守屋さんは、冬野菜の栽培を始める前は、旭川市内でアルバイトで仕事をする生活を送っていました。
「一年中、農業をやったほうが自分の力になると思った。アルバイトをやっているときに比べたら収入はぐんと上がった」
冬は虫も出ないし、病気の心配も少ない。
そして成長が止まっているため一気に急いで収穫する必要がない。
冬栽培ならではのメリットも感じています。
今後は規模を拡大して、夏場だけに採用している従業員(約10人)を全員、通年雇用したいと考えています。
新メニューの開発も
旭川市中心部の『はれて屋台村』で、無農薬野菜などを使ったカレーなどを提供するYgeia(イギア)の吉原栄佑さん。
去年の末に、期間限定で『ケール』を使ったメニューを提供しました。
「旭川で店を構えている僕からすると、旭川でとれたものを旭川で、自分のお店で消費したい。すごくいい経験になったし、これからも継続してチャンスがあればケールを使ったメニューを提供していきたい」
極寒の大地から新たなブランドへ―。新野菜『ケール』の期待が高まっています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年2月3日)の情報に基づきます。