自然を感じ歩く、味わう 開通5周年!みちのく潮風トレイル 釜石で記念イベント
岩手県沿岸部を含む長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の全線開通5周年を記念した「鵜住居トレイル&畜養ウニ剝(む)き体験ウォーク」が1日、釜石市鵜住居町で行われた。地元の観光地域づくり会社かまいしDMCと市が共同で企画。県内外から約20人が参加し、海沿いの景色や旬の味を楽しみながら歩いた。
潮風トレイルは、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ全長1025キロの自然歩道。東日本大震災を経て、被災地に人を呼び込む復興支援策として検討が進み、2019年6月9日に全線が開通した。
釜石区間は国指定天然記念物の三貫島や太平洋を望む海岸線、江戸時代から三陸を結ぶ生活の道として多くの旅人が往来した浜街道、震災後の復興の歩みを感じる市街地をめぐる約68キロのコース。市関係者らによると、「景色がよく自然を体感できるが峠道が多く、どちらかと言えば玄人向けかな」ということだ。
そこで、初心者や歩き慣れていない人にトレイルの楽しみ方を知ってもらおうと、アップダウンの少ない特別コースを用意。鵜住居地区の海岸沿いの景観を楽しみつつ、復興まちづくり、震災の教訓にも触れることができる往復約6キロのルートで、同社の菊池啓さん(56)がガイドを務めた。
三陸鉄道鵜住居駅をスタートした参加者は、片岸海岸の防潮堤や鵜住居川水門の上を通って根浜海岸へ。地元で「夫婦岩(めおといわ)」と呼ばれる岩石、震災の津波や地盤沈下で失われたものの人工的に再生された砂浜を眺めながら歩いた。
観光施設「根浜シーサイド」のレストハウスではウニ剝きに挑戦。唐丹湾で人工的に育てられた畜養のキタムラサキウニが提供され、参加者はキッチンバサミを使って殻を割り、中に残る海藻などをピンセットで丁寧に取り除いた。スプーンで身をすくってパクリ。「おいしい」と顔をほころばせた。
海の恵みを堪能してウオーキングは後半戦に。震災で被災した鵜住居小と釜石東中の跡地に建てられた釜石鵜住居復興スタジアムへ移動し、施設の特徴など説明を聞いた。そして、同小中の児童生徒が津波から避難した経路をたどって追体験。新しい街並みを進んで、駅に戻った。
同市浜町の藤元裕一さん(71)、福子さん(71)夫妻は普段からウオーキングを楽しんでいて、潮風トレイルに興味があった。「車で通る時には気づかなかったことを発見したり、感動がたくさん。歩くことで釜石の良いところを知った。鳥のさえずりを聞いたり風を感じたり、自然を体験するぜいたくな時間だった」と笑顔を重ねた。ウニ剝きでは漁業者の細やかな仕事ぶりを実感。おいしさを届けてくれていることに感謝した。
5周年を迎えた潮風トレイルは、英紙タイムズが掲載した記事「日本で訪れるべき場所14選」で取り上げられるなど、海外からも注目を集める。同社や市では誘客に期待し、コース整備に取り組む考え。今回の企画のような魅力発信につなげるイベントを秋頃にも催したいとしている。