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Hey! Say! JUMPの八乙女光が6年ぶりの舞台で主演を務める舞台『Bug Parade』東京公演観劇レポート

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『Bug Parade(バグ・パレード)』舞台写真

Hey! Say! JUMPの八乙女光が6年ぶりの舞台で主演を務める舞台『Bug Parade』。いまもっとも注目を集める演出家・劇作家の小沢道成が書き下ろした新作オリジナルストーリーだ。煌びやかで、おしゃれで、どことなく怪しいサーカスのようなポスタービジュアルとリンクするステージ美術。舞台の両翼にはハーフミラーが並び、中央奥にレトロな回転木馬の屋根を思わせる装置が覗く。

『Bug Parade(バグ・パレード)』舞台写真

八乙女演じる主人公・春翔は、ある朝、仕事に着けていくネクタイの選択に迷ってしまった。2本のネクタイのこっちか、そっちか。毎日できていたはずのルーティンなのに、なぜ?そして春翔は大きなリュックにネクタイを2本とも突っ込み、いつもの街へ出かけ、いつもとは違う一日を送ることになってしまう。

どうしよう、どっちを選んだらいいんだ、こっちにすると言っているのに、どうして周りは違うというのか。

『Bug Parade(バグ・パレード)』舞台写真

追い詰められていく春翔の心情を、身体全体で表現する八乙女の演技に目を見張った。ときに観ているこちらが焦ってしまうほど危なっかしかったり、こうしなさいよと助言したくなったり、すっかり心を持って行かれている。春翔は自分の選択に自信がない、というか、自分が選ぶと、選んだほうに、必ずといっていいほど間違いが起きる、……気がするのだ。他人から何気なく言われた「おかしい」という一言がずっとコンプレックスで、自分で自分をがんじがらめにするほど考えすぎ、やっと選択したと思ったら時すでに遅し、なんてことも。八乙女の動きを追いながら、何度も客席で生唾を飲んだ。

いつもと同じはずの日常に浮上した「Bug(バグ)」=誤作動や奇妙な動きが、「Parade(パレード)」=華やかな行列のごとく次から次へとめくるめく春翔のその一日は、あなたにとっては明日かもしれない。

一難去ってまた一難とはこのこと。“バグ”が発生するたび、春翔も観客も一緒に吞み込まれていった。春翔とわたしたちを呑み込んでいくのは、一人10役以上を演じ重ねていく6人の共演者たちだ。

『Bug Parade(バグ・パレード)』舞台写真

伊勢佳世、長井短、内村楓太、ぎだろー、竪山隼太、篠井英介ら6人で約70役を演じ分ける、と事前情報で聞いていたので、観る前までは、果たして見分けられるだろうかと少々不安で緊張した。が、そんな緊張は必要なかった。場面転換は一瞬で、人々の関係性も、どういうシーンなのかもほとんど説明されないのに、呑み込まれるまま観ていればすっと分かるのだから、静かな驚きだ。

逆に、くどくどと説明がないぶん、観ているこちらの自由な感受性が高まっていき、観客の心情を大事にしてくれているのだと分かった。それだけの演技力を出演者全員がぞんぶんに発揮し、確かな見ごたえがある。

選択できないのは優柔不断だからじゃない。おかしいのは、自分なのか、周囲のほうか、どちらもなのか。

『Bug Parade(バグ・パレード)』舞台写真

主人公の春翔のみならず、ほかの登場人物も迷い、疑って、揺れ動く。その姿やセリフにわかる!と思ったり、ぜんぜんわからない!と思ったり、気づくと自分を重ねていた。だからこそ観劇後は、これからはもうちょっと自分の心の変化を大事に見てみよう、もうちょっとやさしく自分の心に、できれば自分ではない人の心にも寄り添ってみたい、と感じられたのだと思う。

人の心も、動きも、選択も、予測不能で摩訶不思議。俳優と観客が同じ時空を共有するリアルなステージでこそ、どっぷりと浸れる物語。ぜひライブで、目の前で、堪能してほしい。

取材・文=丸古玲子

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