『セツアンの善人』葵わかな、木村達成のコメント、白井晃のメッセージが公開 メインビジュアル、公演詳細も
2024年10~11月、世田谷パブリックシアターにて(兵庫公演あり)上演される、『セツアンの善人』のビジュアル、公演詳細、コメントなどが公開された。
第二次世界大戦中、ナチスにより市民権を剥奪されたドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが亡命先で執筆し、1943年にスイスのチューリッヒで初演された『セツアンの善人』。ブレヒトは、第一次世界大戦への徴兵経験から、反戦を訴える作品や、資本主義を風刺した作品など、社会性の強い戯曲を多く世に送り出したが、それと同時に叙事的演劇や異化効果といったメソッドも提唱し、その偉大な功績から20世紀最大の劇作家と称されている。『セツアンの善人』にはそうしたブレヒトならではの醍醐味が存分に味わえるエッセンスがふんだんにちりばめられいる。
本作の演出はブレヒトから大きな影響を受けているという白井晃。そして、ドイツ文学者の酒寄進一が翻訳を手がけ、国広和毅が音楽監督を務め、パウル・デッサウの楽曲を基に、歌ありライブ演奏ありの臨場感のあふれる舞台を、強力なスタッフ陣と共に創出していく。
出演者は葵わかな、木村達成、渡部豪太、七瀬なつみ、あめくみちこ、栗田桃子、粟野史浩、枝元萌、斉藤悠、小柳友、大場みなみ、小日向春平、佐々木春香、小林勝也、松澤一之、小宮孝泰、ラサール石井。二役を演じ分ける葵わかなにも注目したい。
上演台本・演出 白井晃 メッセージ(チラシより)
この世の中でホントに善人でいることができるのか?善意と言われても、無料の奉仕などあり得るのか、自己満足もしくは何か裏にあるのではないかと疑ってしまう。そんな殺伐とした世界に私たちは生きている。
真に人と人とが信じあえて、思いやれる時が来たらと願っても、そんなことなど絶対にあり得ない、信じる方が愚かだと思えてしまう。私たちは諦めの中に生きている。だからこそなお、今このブレヒト作品を上演する意味があると思ったわけなのです。パンデミックや災害、戦争の悲壮を身近に感じる中で、社会の原理が本質的に変わることを目指すべきとした、かつてのブレヒトのメッセージはより一層強力に心に響くのです。
演劇に社会を変える力など、もはやありはしないのかもしれない。
それでも、主人公シェン・テを今の世界を生きる人間として描くことで、少しの時間だけでも演劇の力を信じたいと思うのです。
出演・葵わかな コメント
シェン・テと、シェン・テが劇中で演じるシュイ・タの二役を演じます。なかなか複雑な構造の二役に挑戦することになります。シェン・テはとてもお人好しな性格で神様から善人だと認められ、逆にシュイ・タは周囲から冷酷な人物だと評価されています。果たして本当にそうなのか、見ている人によっても色々と感じ方が変わるような役でもあると思うので、そういう部分も楽しんでいただけるように頑張りたいです。
今回、演出の白井さんとは初めてご一緒させていただきます。白井さんは俳優の新境地を開拓してくださる印象があったので、私も新しい挑戦ができることをとても楽しみにしております。
『セツアンの善人』は80年以上前に書かれたお話ではありますが、素敵な共演者の皆様と演出の白井さんと共に、今を生きる私たちにも響くようなメッセージをしっかりと表現していきたいです。また音楽の力によって、より親近感や楽しい瞬間も生まれるような作品になればいいなと思っております。
出演・木村達成 コメント
失業中のパイロットの青年、ヤン・スンを演じます。ヤン・スンは一見すると嫌な奴のように思えるのですが、とても人間らしくもあって、そういったところに親近感を覚えています。白井さんの演出作品にはこれまで二度出演させていただきましたが、いつも自分はどうあるべきなのかといったことや、人のために何かをする自己犠牲の気持ち、観客の皆様に与える影響などについて考えるきっかけを与えてくださり、自分が変わる瞬間に何度も立ち会っていただきました。今回、世田谷パブリックシアターで『セツアンの善人』に出演することになり、改
めてそういったことをたくさん考えられる稽古が待っていると思うと、少し不安でもあり、同時に楽しみでもあります。
約1年ぶりの舞台出演となりますが、この作品を観ていただいた皆様に、“面白そうな奴だな”と思っていただけたら幸いです。