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ヒトリからチームへ、”対話”するケンカシーンに息をのむ! 舞台『WIND BREAKER』東京公演が開幕【レポート】

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(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

舞台『WIND BREAKER』の東京公演が2025年1月10日(金)、シアターHにて開幕した。2025年1月3日(金)〜1月5日(日)にCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演された大阪公演に続き、同名ヤンキー漫画を原作としたストーリーが熱く展開される。東京初日の前日に行われた公開ゲネプロの模様をレポートしよう。

にいさとるによる『WIND BREAKER』は週刊少年マガジン公式アプリ「マガジンポケット」にて連載中の話題作。テレビアニメ化され、2025年4月にはSeason 2の放送も決定している。待望の舞台化となった本作では、演出・植木豪と脚本・三浦香がタッグを組んだ。超不良校でありながら“防風鈴(ボウフウリン)”として街を守るヤンキーたちと、敵対する“獅子頭連”のぶつかり合いを描く。

偏差値は最底辺、喧嘩は最強、“落ちこぼれ”の吹き溜まりと称される風鈴高校。そんな超不良校でケンカのてっぺんをとるため、街の外からやってきたのが主人公・桜 遥(石川凌雅)だ。白と黒に分かれた髪色、左右で瞳の色が異なる珍しい風貌。冒頭、桜が歌い上げる壮大なナンバーには“ヒトリ”になった過去と今の心境が強さと悲しみをもって体現され、一気に物語の世界へ引き込んでいく。

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

そんな桜が、高校入学前に商店街で喧嘩に巻き込まれていた橘ことは(髙橋果鈴)を助けたことから運命が変わっていく。かつて周囲から恐れられていた風鈴高校は劇的に変貌し、現在の生徒たちは“防風鈴(ボウフウリン)”と呼ばれ、街を守る存在となっていた。ヒトリだった桜が他人のために戦うようになり、上級生にピンチを救われ、同級生を助けていく……シリアスなシーンに時折吹き込まれるのが、桜に秘められていた年相応な愛らしさ。絶妙なコミカル要素が、スピード感と共感性をバランスよくもたらしてくれる。

桜に変化をもたらすのが、ボウフウリンの面々だ。同級生の楡井秋彦(横山賀三)は武闘派ではないものの情報通。柔らかな空気で場を和ます貴重な存在だ。対して、最もミステリアスなのは蘇枋隼飛(安藤夢叶)。煙に巻くような言動もさることながら、凛とした佇まいや掴みどころのない戦闘スタイルは目を引く。入学前からボウフウリンに認められていた杉下京太郎(中本大賀)は、レベル違いの強さはもちろん、随所で描かれる忠誠心から滲む人間味が魅力的だ。

入学前の桜を助けたボウフウリン四天王の一人で多聞衆・筆頭の柊 登馬(高橋駿一)は、堅実ゆえ苦労人という一面も。重量感のある攻撃と多彩なバク宙を使った防御は非常に華やか。そして、圧倒的存在感を醸し出すのが総代・梅宮一(佐奈宏紀)。温厚な人柄だからこそ持つ、分厚く重たい責任感が一挙手一投足に込められている。

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

やがて、ボウフウリンは不戦協定を結んでいた隣接するチーム、“獅子頭連”と対立することに。天真爛漫に会場の空気をさらったのが、頭取・兎耳山丁子(今牧輝琉)。名前を体現するような跳躍力に軽やかな身のこなしは畏怖の念を抱くほど。戦いのきっかけを作り、桜と対峙することになるのが十亀 条(里中将道)。得体のしれない威圧感を与え、不気味な強さを秘める。ボウフウリンとはまるで異なる、恐怖心が煽られるチーム感に飲まれそうになってしまった。

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

大きな見どころは、やはり迫力あふれる喧嘩シーンだろう。序盤からこれでもかと盛り込まれ、チームをかけたタイマン勝負決着まで勢いが衰えることがない。殴り殴られ、蹴り蹴られ、アクロバットを盛り込んだ予測不能のアクションが次々に繰り出されていく。至近距離でメンチを切り合ったり、机が吹っ飛んだりと舞台上の緊迫感が客席までとめどなく流れ出してくるのだ。「拳は時に言葉より相手を知る言語になる」という劇中の言葉通り、”対話”と表現するにふさわしい。

ワイヤーアクションやダンスといった華やかな演出はもちろんのこと、キャラクター同士のぶつかり合いを見事に体現したキャスト陣の身体能力にも感嘆せざるを得ない。特に主人公として多くのポテンシャルを求められていたのが、桜演じる石川だろう。唸るような低い歌声から、荒々しくも生き生きとしたアクションに至るまで全身全霊でこの物語にぶつかっていた。

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

(C)にいさとる・講談社/ 舞台「WIND BREAKER」製作委員会

原作を知る人にとって期待を裏切らないシーンもありながら、想像をはるかに超えて具現化されている場面も。もちろん、原作未読であっても世界観に惹き込まれる。終盤シーンでのある演出は、特に息をのんだ。

ラップからバラードナンバーまで、心揺さぶる歌唱パートもたっぷり。キャラクターごとに個性を感じるダンスシーンも圧巻だった。最初から最後まで、感情移入せざるをえないドラマティックな展開に間違いなく夢中になるだろう。

東京公演は1月19日(日)まで。ぜひ会場に足を運んでほしい。

取材・文=潮田茗 撮影=佐藤 薫 高田真希子

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