【高知グルメPro】フレンチなのにシノワとは?高知でいただく本格ガレットの店「le garçon chinois(ルギャルソンシノワ)」フードジャーナリストが行く高知満腹日記
高知市の中心エリアからほど近い、菜園場商店街に隣接した桜井町にあるその店から、灯りが漏れていた。
外には、椅子と丸テーブルが三つほどおかれ、フランス語で「le garçon chinois」と書かれた赤い枠のドアと窓から、室内が見える。
中をうかがうと、レストランのようである。
温かみのある明かりに照らされて、カウンターの数人のお客さんがくつろいでいた。
一階は、厨房と向き合うカウンター席と、2人掛けテーブルが二つ置かれている。
折しも、カウンター席はマスターと楽しそうに談笑する常連客で埋まっていた。
その自然ななじみ方が、この店の居心地の良さを語っている。
我々は4人だったので、2階に案内された。
JAZZの演奏シーンを写したモノクロ写真が飾られた階段を登っていくと、素敵な空間が現れる。
4人掛けテーブル席と2人掛けソファー席が置かれたその空間は、友人の家に招かれたような、暖かみがあった。
メニューを見ながら、食前酒にジントニックを頼む。
静かに流れるJAZZボーカルを聴きながら、ジントニックを飲み、前菜を待つ。
心地よい。
音楽に身を任せ、ジントニックを飲んでいると、まどろみたくなってくる。
ほどなくしてサービスの女性が、ラギオールのナイフとフォークをセットした。
最初は「鶏レバーのパテ」と「パンドカンパーニュ」が運ばれる。
パテを食べれば、レバーが隠し持った甘みと鉄分の旨みが、優しく滲む。
そんなバテを、パンドカンパーニュに塗りつけて口に運び、赤ワインを合わせた。
うむ、幸せだ。
次は、ハムと卵、チーズを乗せた蕎麦粉のガレット(クレープ)の中でも定番中の定番、「ガレットコンブレット」である。
ちなみにコンブレットとは、「完璧な」という意味で、この組み合わせこそ最強だろう。
溶けたグリュイエールチーズにハムが乗せられ、真ん中には半熟の卵が鎮座している。
食べれば、チーズのコクにハムの塩気と卵の甘み、そしてガレットの素朴な味わいが加わって、唸る。
まさに、完璧の組み合わせである。
おそらく高知で、本格的ガレットがいただけるのは、ここだけだろう。
お次は、「ムール貝 白ワイン蒸し」が運ばれた。
フライパンのまま運んでくるとは、センスがいいね。
黒い貝殻から、オレンジ色の身がのぞいていて、思わず喉が鳴る。
貝をいただく前に、蒸し汁を少し飲んでみた。
ああ、これは、蒸し汁だけで白ワインが飲めちゃうね。
食べ方はこうである。
二枚貝の一枚を外し、その一枚の貝殻をスプーン代わりにして、身を外し、口に運ぶ。
ムール貝はこう食べなくちゃ雰囲気が出ない。
食べたら、すかさず白ワインを飲む。
もはやここは、フランスブルターニュか。
最後は「鶏肉とポテトの香草焼き(ロティサリーチキン)」が運ばれた。
ローズマリーと共に焼かれた鶏は、味をふっくらと膨らませ、「早く食べて」と、誘いかける。
ナイフで切って口に運べば、皮はバリッと香ばしく、肉はしっとりとほぐれていく。
そして、たっぷりと含んだ肉汁を舌に流す。
大きめに切って、頬ばり、口の中を鶏のエキスで溢れさせる。
今度は赤ワインだな。
鶏肉で気持ちを充足させたら、デセールといこう。
「季節のタルトはなんですか?」と聞くと、「イチゴのタルトです」と答えられた。
「焼いたタルトの上にイチゴを乗せているのですね?」と、聞くと、「いえ、イチゴも焼いています」というではないか。
イチゴのタルトは、焼かれて凝縮したいちごの甘みがいい。
ついでにフランス菓子の定番である「タルトブルダルー(アーモンドタルト)」も頼む。
ナッツが乗ったタルトブルダルーは、アーモンドクリームがいい。
メニューの数は多くない。
だが自分の好きな料理だけに絞って、的確な料理を出しているところがいい。
最後にご主人に聞いてみた。
「なぜフランス料理なのにシノワという店名なのですか?」と。
すると洒落た彼は答えた。
「ずっと上海でフランス料理の店をやっていたんです」。
中国の給仕人。そういうことだったのか。
フランス人にしか出せないような慣れ親しんだ、安定した味わいは、彼が歩んできた人生の味なのだろう。
店舗情報
le garçon chinois(ルギャルソンシノワ)
住所:高知県高知市桜井町1丁目2−23
電話: 080-2970-8930
営業時間:火曜〜木曜:18:00〜23:00
金曜:18:00〜00:30
土曜:12:00〜15:00(ランチ)/18:00〜00:30
定休日:日曜日・月曜日
インスタグラム:@legarconchinois_takashi