市政を経営に転換へ 新春市長インタビュー
2025年の年頭を飾る企画として昨年10月に就任した萩原鉄也伊勢原市長にインタビューを行った(聞き手/本紙編集長高橋準治)。
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―就任から3カ月の振り返りをお願いします。
あけまして、おめでとうございます。皆さまにおかれましては、健やかに新年をお迎えのことと、お慶び申し上げます。
昨年10月1日に市長の職に就任し、その4日後に本市最大のイベント「伊勢原観光道灌まつり」がありました。雨が心配されましたが、終わってみれば28万人もの方にご来場いただきました。市長としてご挨拶をするたびに、多くの皆さまに声をかけて頂き、叱咤激励を頂いたのがとても印象に残っています。その後も行く先々で、市民の皆さまから温かいエールと期待の声を頂く、あっという間の3カ月でした。
―市政を「運営」から「経営」と掲げました。
本市でも今後、本格的に人口減少が進み、市政運営は一段と厳しさを増します。特に社会保障関連経費の増加や公共施設の老朽化対応をはじめ、人件費の高騰や近年の物価高により市の財政は厳しい状況です。こうした状況を乗り越えるには、民間企業のような発想が不可欠であるため、「市政運営」から「市政経営」への転換を掲げました。民間企業は利益を求め、あらゆる経営資源を活用して経営目標を達成します。行政においても、伊勢原の特性や地域資源を最大限活用しながら、市の財産である市民の皆様や関係団体、多くの企業と協力してまちづくりを進める必要があります。また、今の時代、行政でも「稼ぐ」という視点が大事です。より多くの施策を実現するためにも、様々な方法で財源確保に努めます。そして、実際の事業においてはコスト意識はもちろん、改善を繰り返し、時には思い切った見直しも行います。
さらに、これらを担う人材育成も重要です。今以上に職員の能力を引き出し、新たな発想を創造する市役所とするためには、まずは職員一人一人が「経営感覚」を持たなければなりません。私が「経営」の先頭に立って、持続可能なまちづくりを進めていかなければと考えています。
災害対応力向上へ災害対応力向上へ
―自然災害が頻発・激甚化する中で、災害に強いまちづくり、防災意識の向上、地域の防災力強化のために力を入れて取り組んでいくことは?
昨年は、全国的に自然災害が多い年となりました。本市も例外ではなく、夏季の危険な暑さをはじめ、8月の南海トラフ臨時情報の発表や県西部を震源とした地震、そして台風10号の影響に伴う豪雨により、国道246号の新善波トンネル法面の崩落や市内各地での土砂崩れ、河川のはん濫など、激甚災害の指定や災害救助法が適用されるほどの大きな被害がありました。現在も、災害復旧作業が継続している状況です。
いつ発生するかわからない大規模災害に対し、これまでの災害対策を検証し、大規模地震や頻発・激甚化する風水害に備えた取り組みを進める必要があります。
そのためには、自主防災リーダー研修会や総合防災訓練等を通じて、自助、共助、公助が実践的に支え合う仕組みを構築するとともに、高齢者や障がい者、女性に配慮した災害対策の充実や、市職員の災害対応力の向上に努めます。
さらに、マンホールトイレの整備や下水道施設の耐震化、河川の治水対策、急傾斜地対策などに取り組むことで災害に強いまちづくりを目指します。
―市長自身が思う伊勢原の魅力や強みについて教えてください。
本市は都心から約1時間で訪れることができる交通アクセスの良さと大山・日向などに代表される歴史文化や豊かな自然にも恵まれ、温暖な気候で大変暮らしやすい地域です。また、水稲や野菜、フルーツ、畜産など多彩な農業が営まれ、四季を通じて農畜産物を地産地消できるところも魅力です。
市の強みは、100を超える地域の医科・歯科診療所である一次救急から高度医療が整った三次救急までそろった恵まれた医療環境であり、この強みを生かし地域の医療体制の充実、医療機関の連携を図ることで「日本一の健康都市」を目指したいと考えています。
さらに、伊勢原駅北口地区再開発事業をはじめ、新東名高速道路の全線開通、小田急電鉄の総合車両所の整備、伊勢原大山インターチェンジ周辺の産業基盤整備など、これまでにない大規模な基盤整備が計画されています。これらのプロジェクトを着実に推進することで伊勢原の生活の利便性・経済インフラは大きな成長を遂げると考えています。こうした伸びしろのあるまちということも市の強みの1つであると考えます。
―ありがとうございました。【次号に続く】