社員へコメを配って福利厚生×地域貢献×農家支援を実現 ファストコムがプラットフォームを開始
ファストコムホールディングス(東京都中央区)は4月28日、社員にコメを配布することで福利厚生と地域貢献を結びつけた新たなプラットフォーム「UCHINO」の提供を5月1日から開始すると発表した。
食べきれないコメは福祉施設や子ども食堂に寄付、農家には前払い
「UCHINO」は、社員に毎月コメを提供し、社員が配布されたコメを消費しきれなかった場合や、「自分よりも必要としている人に届けたい」との希望があった場合は、「返納米制度」として、返納されたコメを福祉施設や子ども食堂などに寄付をする仕組みだ。
社員に配布されるコメは、契約農家に対して前払いで報酬を支払うため、農家の安定した生活の支援につなげることができるなど、取り組みを通じて、米農家支援、SDGs推進、人道支援を実現させ、従業員、企業、社会が「Win-Win」になる持続可能な活動モデルを構築する。
導入した企業に社員に一人当たり3kgのコメを配布することを推奨しているが、配布するコメの量は導入企業のニーズに応じて柔軟に設定することができる。
背景には、コメ農家を取り巻く経営環境の悪化
同社が「UCHINO」の開始を決めたのは、農業生産資材や肥料の価格が高騰でコメ農家の経営が深刻な打撃を受けているためだ。
農林水産省の調査によると、生産資材は過去20年平均に比べて1.2倍に上昇、肥料は約1.5倍に高騰している。コメの価格が上昇しているにもかかわらず、利益を出せているのは規模の大きな農業法人のみで、収益力の悪化や高齢化を理由に米生産農家の倒産や廃業が相次いでいるのが実情だ。
また、帝国データバンクによると、2024年に発生した米生産農家の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は6件、休廃業・解散(廃業)が36件発生し、計42件の米生産農家が生産現場から退き、過去最多だった23年の35件から年間最多件数を更新している。
ファストコム、コメ配布の福利厚生を2018年から実施 秋田県鹿角市で
ファストコムホールディングスでは、2018年から社員に福利厚生として毎月コメを配布する「UCHINO米プロジェクト」を拠点のある秋田県鹿角市内の農家の協力で開始している。
「UCHINO米プロジェクト」でも、社員が消費しきれないコメは寄付に充てられる返納米制度があり、地域の子ども食堂やひとり親家庭などを支援する社会貢献活動も行っている。
7年目に突入した2025年からは、複数の農家との連携が進行中で、「UCHINO米プロジェクト」を通じて、社員の生活を支えるだけでなく、農家への安定的な収入提供と社会貢献を実現している。
「UCHINO米プロジェクト」をほかの企業からも導入したいという声が挙がり、同社では「株式会社UCHINO」を設立することで、新たな福利厚生を提供するサービス展開を始めることにした。
同社は秋田県鹿角市から誘致を受けて2017年5月にオフィスを開設、同市の求人・ローカルメディアの運営など、秋田県と連携した地域活性化に取り組んでいる。
また、「UCHINO米プロジェクト」で福利厚生としてコメを配るだけでなく、コメのルーツに触れることで、あらためて食べ物の貴重さを実感してもらうことを目的に、同市で社員による農業体験も実施している。
ファストコムホールディングスの発表の詳細は同社のプレスリリースで確認できる。