東広島市のふるさと納税寄付額右肩上がり
寄付を通じて自治体を応援できる「ふるさと納税制度」が始まり今年で17年。自治体間の競争が進む中、東広島市もPRに力を入れており、2024年度の寄付受入額速報値は、前年より約1億円増え、過去最高の4億3000万円と右肩上がり。市の委託を受け22年度から返礼品の開拓などを行う観光地域づくり法人・ディスカバー東広島は「魅力的な返礼品を通して、全国に東広島市のファンを増やしたい」と意気込んでいる。(橋本)
多様な返礼品 事業者も増加
地域の魅力を全国に発信
東広島市が好調の理由の一つが、ふるさと納税サイトの導入を増やしたこと。22年度までは3サイトだったが、現在は12サイト。寄付件数は6400件から1万件に増加。利用者の多いサイト「ふるなび」「さとふる」「Amazonふるさと納税」を網羅したことで、全国の寄付者がアクセスしやすくなった。
サイトを増やしながら、返礼品の開拓も推進。22年度は290品だったが、現在は409品。市内の異なる酒蔵の日本酒を10カ月連続で届ける「日本酒の定期便」など複数社の商品を組み合わせた品を作り、好評。ジャンルも食べるものから、調理グッズなどの雑貨まで、バラエティー豊かになった。自動車や新幹線などの総合試作メーカー・オーエイプロトの洗練されたデザインの三輪車両、高屋町のy’sゴルフアカデミーのオーダーメードのゴルフシャフトなどもある。24年度の人気返礼品ランキングの上位は、「牡蠣のカンカン焼きセット」「防災食セット」「チーズケーキ」だった。
選ばれれば売り上げにつながるため、事業者にとってメリットがある返礼品。しかし、制度上のルールの厳格化などがあり、ハードルが高いと感じている事業者も多い。そこでディスカバー東広島は、制度やメリットの分かりやすい説明・案内をガイドブックで伝えているほか、事業所を訪問して新規の提供や返礼品の追加を提案するなどしている。返礼品の登録事業者は増え、22年が80社で、24年が101社となった。
ふるさと納税は、寄付する人にとっては地域貢献と節税、自治体にとっては財源確保や地域産品のPRにつながる。4月には、ふるさと納税サイトでは伝わりきらない市の魅力を掲載する「東広島市ふるさと納税特設サイト」を公開するなど、寄付者の関心を高める取り組みも実施。
ディスカバー東広島は「返礼品は、市を代表する品から地元住民も意外と知らない品まで多種多様。さらに充実させて、地域の魅力を広く発信していきたい」と話している。
記者の目
東広島市への寄付額が伸びているのは、ディスカバー東広島の返礼品開拓に負うところが大きい。寄付者が自治体を選択する判断基準の一つが返礼品だからだ。牡蠣や地酒など地域の特産品を中心に、企業の特徴を生かしたユニークな商品など多岐の返礼品を提供している。こうした返礼品は、企業の知名度アップと商品を全国にPRする格好の場であり、東広島の伝統や文化を発信する機会にもなる。
一方で、ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすることで、翌年の所得税や住民税が控除されるため、寄付者が住む市の税収を減少させる懸念もある。東広島市の場合は、税収の減少が若干、寄付額を上回る。
寄付金が税収の減少を上回るためには、さらに返礼品を充実させ、寄付者の市への関心を高める取り組みが不可欠なのはいうまでもない。(日川)
寄付金の使途は?
ふるさと納税制度で集まった寄付金は、東広島市のまちづくりに、どう活用されているのだろうか。
市が今年度当初予算に充当した寄付金は3億8485万円。地域の振興・循環に力を入れているのが特長だ。農業分野では、集落農業の省力化支援に1900万円、東広島こい地鶏などの販路拡大事業に1800万円を、それぞれ充てている。教育分野では、遠隔授業や学年をまたいだ交流に活用する「ラーニングルーム」の整備に2120万円、小中学校の図書購入に2465万円を投じる。
市民文化センターと黒瀬、豊栄、安芸津の生涯学習センターを総称した「文化・学習センター」の指定管理には1億5802万円を組んだ。
東広島市在住の人は、ここに掲載している返礼品を受け取ることができません。商品が欲しい場合は各事業所でお買い求めください。
プレスネット編集部