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クマゼミが映す都市の気温上昇 セミ前線は今どこに?

TBSラジオ

ことし、「セミが鳴いていない」「静かすぎる」という声が、7月上旬ごろちらほら聞かれました。さすがに最近はもうセミの声が響いているようですが、少し前に騒がれた、この「セミ静かすぎ問題」、何があったのか?

「セミが静かなワケ」空梅雨&猛暑で異変

害虫駆除の会社でセミの生態にもくわしい、東洋産業株式会社の大野 竜徳さんに伺いました。

東洋産業 株式会社 大野 竜徳さん

例年ですと、だいたい7月に入ったら、もうセミの声がどこかからは聞こえてきてたのが、それがもうだいたい「10日ぐらいは遅れて」聞こえてました。おそらくですけれども、今年梅雨が非常に短かったんですね。雨が降る時間がすごい少なかった。で、ちょうど幼虫が成虫になる時っていうのは、最後に木の根からしっかり汁を吸って、お腹いっぱい水を飲んで、元気な状態でで土を掘って上に上がってくるんですけども。空梅雨になってしまうと、地面がカチカチの状態になって水がない状態なんですね。すると、セミ自体も元気がない状態で、地面が硬くてなかなか掘れないし、上がったら上がったで暑いしっていうので、多分おかしいなっていう状態になってたんじゃないかなと思います。

セミは、何年も土の中でじーっと過ごして、夏になると地上に出てきて鳴き始めるんですが、「いま出よう!」って思うタイミングのサインになるのが、土のしめり気なんです。たとえば、雨が降って、土がしっとりしてくると、「そろそろかな」って感じで出てくるイメージ。

でも、今年は6月に雨が少なかった「空梅雨」で、地面がカラカラ。土が乾いたままだと、「あれ、まだ時期じゃないのかも?」とセミが戸惑って、出てくるタイミングを逃してしまったようなんです。

さらに、梅雨が明けたあと急に猛暑に。その暑さで、セミがちょうど地面から出てきて羽化しようとしている時に、体力を消耗して、うまく飛び立てずにそのまま命を落とした…というケースも多かったようです。

アブラゼミもミンミンゼミも来ない夏?

「今年はおかしいかも」と感じた人が多かった7月。この違和感をいち早く察知していた人が、埼玉にいるということで、会ってきた!およそ15年間、セミの抜け殻を集め続けて4000個。蕨市在住の、堀内 伸一郎さんに、聞きました。

堀内 伸一郎さん

(あ!いました。セミの抜け殻)

今年は「アブラゼミ」も「ミンミンゼミ」も遅いんですよ。ミンミンゼミもね、午前中鳴いてる時あるんですけどね、今年は鳴かない、ミンミンゼミが。

太極拳の人と毎日会うんですけど、その人たちの挨拶が「まだ鳴かないね」とかね。朝「おはよう」じゃなくて、「今年は鳴かない、鳴かない」ってみんなで言ってましたよ。だから心配してたんですよ。ひょっとしたらこのまま出てこなくなっちゃう可能性があるとか、そういう悪いことも想像するぐらい…遅かったからね。

取材中もセミの抜け殻を次々と捕まえる堀内さん(77歳)

堀内さん、ただの「抜け殻コレクター」じゃありません。

じつはこの方、「蕨ひがし自然観察クラブ」という市民団体の代表。この蕨市民公園で、地域住民と毎週、セミの抜け殻を集めて、記録する調査を15年間続けていて、暑さや日当たりの違う2つの場所を比べながら、セミの「種類の変化」を観察。セミの生態をくわしく解説する「セミセミナー」も実施。「全国でも、こんなに続けている活動はすごい」として表彰されたこともあるんです。

そんな堀内さんの調査でも、「鳴き始めは遅かった」。しかも種類によってはまだ聞こえないものもあるそうで、この暑さで、出てきたセミも木にしがみつくだけで精一杯。本来「ミーンミーン!」と鳴いてメスを呼ぶはずのオスたちも、声を上げる余裕がないようです。

「えっ、これセミだったの?」 クマゼミの声、関東で急増中

そして堀内さんの活動で、もうひとつの大きな変化がわかったということで、それがちょっと注目されています。再び堀内さんのお話。

「蕨ひがし自然観察クラブ」堀内 伸一郎さん

〈シャアシャア…〉と鳴いてるんだけど、これが「クマゼミ」。一般の人が聞いてもね、クマゼミが鳴いてるという、鳴き声は知らない人の方が多いんですよ。まして関東の人は、クマゼミはほとんどいないから、「今これ鳴いてるのがクマゼミですよ」と言ったら「えっ、知らなかった。これがセミと思わなかった」、鳴いてててもね、気が付かないんです。

ここ数年でクマゼミの比率が急上昇していますね。5~6年前からバーンと上がってますね。で、気温も5~6年前から急上昇しています。パターンが似てるんですよね。クマゼミはもともと西の方の温暖な地域のセミですから、それが北上してくるということは、温暖化の影響かなということがあるんで。蕨が今、北限に近いところなんですけど、群馬県とか長野県とか鳴き声を聞いたとかいう話はあるんですけど、そこでもちゃんと「抜け殻」調べて、そういう仲間が増えてくれれば、セミ前線がどこまで北上してるか。それが広まっていけばいいかなと思ってます。

蕨の公園で、いま増えているのは、暑さに強いクマゼミ。15年前は1割だったのが、今年は7割以上。反対に、この場所でかつて主流だったアブラゼミの数は減少傾向に。堀内さんは、木を植えた際に幼虫が運ばれてきた可能性があり、その後の気温上昇によって、定着できる環境が整ったのではないかと話していました。

こうした市民レベルで「セミの抜け殻を調べて環境変化を学ぼう」と言う取り組みは、各地で実施されていて、長野ではいつ・どこで・どんなセミが鳴いたかを、録音してデータ共有している取り組みもあります。

環境の変化に敏感なセミは、都市の温暖化を映し出すバロメーターになっているようですが、誰でも見つけられる「セミの抜け殻」も、長く観察することで「環境の変化」が見えてくることが、堀内さんの活動を通してわかりました。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」取材:田中ひとみ)

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