水軒一文字・新波止での落とし込み釣りで43cmチヌ【和歌山】平鯵狙い遠投カゴ釣りは不発
2025年6月28日、和歌山県の水軒一文字新波止は嵩上げ工事中で様相が変わっていたが、釣り座は選び放題で釣果も全体的に好況。岩カニのエサの落とし込み釣りでチヌ43cmを手中にした釣行をお届け。
水軒一文字新波止で嵩上げ工事
名物の平鯵(ひらあじ)を筆頭に、チヌ(クロダイ)、グレ(メジナ)、ヒラスズキなど様々な釣果があがっている和歌山県の水軒一文字は、新波止と旧波止の2つの波止の総称だが、水軒一文字に渡す水軒渡船のホームページに気になる情報が掲載されていた。「※新波止のかさ上げ工事が始まり新波止の3.5番周辺にフェンスが設置されました、新波止は1番~3番まで渡れます。フェンスよりも奥側は安全のため立入禁止になります。」という情報だ。
新波止は波止の上から海面までの高低差はあるものの、長大かつ広大で足場が良く、釣り座は選び放題の屈指の好釣り場だが、工事の進捗次第で今後は釣りが出来なくなることもあり得るのではという思いがよぎり、偵察も兼ねて今のうちに釣行しておこうと、6月28日の釣行を決めた。
なお、筆者(私)は、水軒一文字の詳細については、過去の投稿「関西の沖波止紹介【水軒一文字】 乗船時の注意点と新・旧波止の特徴」が詳しく書いているので、関心のある方は参考にご覧いただきたい。
始発便でも大盛況
自宅から3時間半徹夜で車を走らせて、水軒渡船の駐車場に到着したのは深夜2時半過ぎだったが、駐車場は9割方埋っていた。当日は夏季出船ダイヤで、始発便深夜3:10発。既におかみさんによる乗船受付が始まっていて、早々と駆けつけていた釣り人達が次々と船内に乗り込んでいた。
慌てて私も乗船手続きを済ませて船内に入る。その後5人ほどが乗船し、船内はほぼ満員の大盛況となり、始発便は海神様への祈りを捧げたおかみさんに見送られ、定刻どおり出船した。
工事で大きく変わった新波止
新波止の船着き場は1番から5番まであったが、嵩上げ工事で1番から3番までに制限され、これまで釣果がよくあがっていた4番、5番には渡れない。次善策として2番の船着き場で降りて、3番寄りに釣り座を構えようと考えた。ところが2番の船着き場で降りた瞬間に、波止の形状の変化の大きさに驚かされた。内向き(陸向き)がまるで旧波止のように、嵩上げされた部分により後ろ壁がそびえ立つ形状になっていたのだ。
これは遠投が必要な平鯵狙いのキャスティングが難しくなったなと思い、3番方向に移動して、若干後ろ壁部分が遠く足場の広い場所を見つけてそこに釣り座を構えた。3番の船着き場以西の灯台の区域には、立ち入り禁止の看板とファンスが設けられていて入れない。
この記事が掲載された以降では、工事の進捗によって釣り座が構えられない区域も変わって来る可能性があるので、新波止への釣行を考えている方は、水軒渡船のホームページを必ず見て直近の工事の状況を確認するようお勧めする。
平鯵狙い遠投カゴ釣りは不発
前半は遠投カゴ釣りで平鯵を狙う。過去の釣行で平鯵を釣った経験から、私はオリジナルの誘導パイプテンビンのタックルで臨んだが、当日は悪いことに向い風が吹いていて遠投が難しかった。しかも平鯵のポイントは通常よりもさらに遠目の沖だったようで、向い風にも負けず熟練の技で超遠投ができる一握りの常連だけに挑戦権があった。
夜明け後に3番の船着き場付近で超遠投を駆使した常連2人が平鯵の釣果を次々と積み重ねていく様を見て、これは自分には無理だと、偶然釣れたイソベラ1匹の寂しい釣果を得ただけで釣果6時過ぎに平鯵釣りから撤退し、チヌ狙いの落とし込み釣りに切り替えることにした。
チヌ落とし込み釣りに転戦
チヌ落とし込み釣りの釣り方は、新波止であっても旧波止と同じで内側の垂直立下の形状になっている壁面ギリギリにエサを落としていく。今回は新波止が旧波止よりも海面との高低差が大きいので、タックルは落とし込み釣りの専用竿のうち4.5mを使用した。
それ以外は定番の組み合わせで、ストライプカラーの落とし込み・ヘチ専用の3号ラインを巻いた落とし込み専用リールをセットし、ラインの先には市販の目印仕掛けを接続し、ハリスは硬めの1.7号を直結する。チヌ針は大物に備えて口元にしっかり掛かるよう針は軸がやや太めの3号を選択し、チモトにはガン玉2Bをかませる。
濁り潮の影響か苦戦
まずは船着き場3番付近を中心に探り歩くが、ベラやフグのエサ取りが岩カニをつつくばかりで、本命のチヌのアタリはなく、さらに壁面近くに白っぽい濁り潮が寄ってきて、ますます落とし込み釣りには悪い状況になった。
周りの様子をうかがうと、各所で平鯵が釣れていたほか、フカセ釣りで波止グレやアイゴなども釣れていて、各所で好況の様子。以前の釣果情報でチヌの二桁釣果が掲載されていたので期待をしていたのだが、私には本命のチヌも脇役のカンダイのアタリもなく、苦戦が続いた。
場所変更でチヌの気配
状況を変えようと、8時前に東方向に大きく移動し、1番の船着き場付近から再スタートした。このエリアでは濁り潮は及んでおらず、海水の透明度が少し高めで波止の壁を少し洗うような波気もあった。この壁面付近の様子を見て、ふと頭をよぎったのは、別の釣り場でチヌを釣った時の過去の海面コンディションの記憶。「これ、イケそうじゃないか?」という思いで奮い立ち、探り歩いた。
すると8:30頃からエサ取りのアタリが急に活発になり、魚の活性が上がってきたことを確認。そして8:40頃、モゾっとした感触が竿先に伝わったが、半信半疑で反応できずで、これがまずかった。仕掛けをあげてみると、岩カニが噛み潰されていた。これはエサ取りの仕業ではなく、本命のチヌが岩カニを噛んだ跡に他ならない。「ああー」とうめいたが後の祭り。とはいえ、好転の兆しだと思い直して、一層集中力を高めて歩を進めた。
43cmチヌを捕獲
当初は9時便で帰る予定だったが、条件の好転は捨てがたい。水軒渡船に波止上から電話して10:30便に迎えの便の変更をお願いした。この決断が9:20頃、大当たりとなった。
ケーソンがズレた箇所の壁面を攻めた時、上層で目印の落下速度が一旦緩み、その直後に竿先を抑え込もうとする引きがあった。今度は躊躇せずアワセを入れるとヒット。
しかし、魚はリールのスプールをサミングしていた指を跳ね飛ばす物凄い強い引きで抵抗してきた。これはカンダイのアタリ、根に潜られたら一巻の終わりとロッドワークで何とか海面に浮かせようとするが、ラインブレイクも怖い。不安と攻めの思いが交錯する中、魚の4度の抵抗の末、何とか浮かせた魚体を見て驚いた。魚体は黒い。カンダイだと思っていたが、正体は本命の良型チヌだった。
ならばタモ入れは海面で空気を吸わせて魚の勢いを止めるのがセオリー。アワセも一発必中ならタモ入れも一発必中で成功。
ずっしりとした重みを携えた43cm良型チヌがタモ網に収まった。各所で好況な様子だっただけに、自分も仲間に加われた喜びも相まって、至福の喜びに浸った。
最終釣果
その後も釣れそうな気配はあったが、タイムアウトで納竿。10:30の迎え便で波止を後にした。最終釣果はチヌ43cm1匹とイソベラ1匹だった。
全体的に好況だっただけに、帰る釣り人たちの様子は全体的に明るく、乗船場で出迎えたおかみさんも次々と釣果報告を受けて喜びの面持ちだった。
例年になく早い梅雨明けとなり、暑さの中でも深夜から訪れた釣り客への特別サービスとして、この日はおかみさんからアイスキャンデーのプレゼントがあった。
常連たちの素晴らしい釣果には到底及ばないが、私も釣果が得られたことで、プレゼンントされたアイスキャンデーの味はまた格別に感じられた。帰宅後、釣果は酒蒸しにして賞味し、大満足の釣行日となった。
<伴野慶幸/TSURINEWSライター>