高崎翔太を客演に迎え、メンバーの色とりどりの個性がさらに開花ーー『エーステ』の劇中劇を脚色した神戸セーラーボーイズ 定期公演Vol.3開幕
神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.3 『なんて素敵にピカレスク』『天使を憐れむ歌。』ゲネプロ
2024.12.20(Fri) AiiA 2.5 Theater Kobe
12月20日(金)から神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeでスタートした神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.3『なんて素敵にピカレスク』『天使を憐れむ歌。』。今回はMANKAI STAGE『A3!』〜AUTUMN & WINTER 2019〜の劇中劇「なんて素敵にピカレスク」と「天使を憐れむ歌。」を一部脚⾊し、神⼾セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)版でおくる。
2024年は、3月に『神戸セーラーボーイズ SF「Boys×Voice 403」』、8月に定期公演vol.2 舞台『銀牙 -流れ星 銀-』をAiiA 2.5 Theater Kobeで上演。9月には小劇場の神戸三宮シアター・エートーに会場を移し、Boys☆Act ~maple『果てなき夢のその先へ』を約1か月半にわたっておくり、様々な経験を積んできた彼ら。この定期公演vol.3では、昨年11月の定期公演vol.1『ロミオとジュリアス』『Water me! ~我らが水を求めて~』以来1年ぶりに古谷大和が演出を担い、1年でめきめきと成長した姿を大舞台から届けた。
とある街を仕切るマフィア「カポネ・ファミリー」を中心に闇社会で生きる男たちの姿を描いた『なんて素敵にピカレスク』では、ファミリーのルチアーノ役を明石侑成、ランスキーを中川月碧(るきあ)が演じ、複雑な人間関係に翻弄されながらも、信頼と友情を築いてゆく様をたっぷりのアクションを交えて繰り広げた。
オープニングからアクションやダンスで魅了し、観客の心をがっちりとつかんでいく。カポネ・ファミリーを追う警察役のデューイ役を演じたのは石原月斗(ゆえと)。二つの顔を持つ狡猾な人物像を、光と影をまといながら熱演した。ランスキーの弟・ベンジャミン役は崎元リスト。病院のベッドの上で兄たちを案じるベンジャミン。彼が登場すると優しい空気に包まれる。そして、ボスのカポネを演じたのは客演の高崎翔太。神戸セラボのメンバーやアンサンブルの渡部恒司、福永樹、目黒幸輝が舞台上を駆けめぐり、激しいガンアクションを繰り広げる中、カポネは動かざること山の如し。高崎の肝の据わった堂々たる存在感からは、得体のしれない凄みが滲み出ていた。
また、ルチアーノとランスキーが感情をぶつけ合う場面では、明石と中川が息の合ったコンビネーションで緊迫感を漂わせる。明石、中川、石原によるバトルアクションでは爽快感も感じさせるスピード感で魅了。3人の身体能力の高さも堪能した。
続いて『天使を憐れむ歌。』が幕を開ける。人間の女性に恋をした天使のミカエルを中心に、天使たちの葛藤を描いた本作。主人公のミカエルを、今回初めて主演の座を射止めた髙橋龍ノ介が優しくも力強く演じた。
オープニングは、観客を物語へいざなう天使ラファエル役の髙山晴澄(はると)。『なんて素敵にピカレスク』のダークな世界観とは一転、ファンタジックな世界が瞬く間に広がった。「絶賛声変わり中」という髙橋だが、中世的な声色でミカエルの純真さをよりクリアに描く。
大天使メタトロン役の奥村頼斗(らいと)は、ここでも頼もしい存在感を発揮。天使ウリエルを演じた細見奏仁は重要な任務を背負ったがゆえの葛藤を表情豊かに演じきった。主要キャストで唯一、人間である医師フィリップを演じた田中幸真(ゆうま)。医師としてどうあるべきか、田中もまたフィリップの揺れ動く心のうちを繊細に見せた。
人生の選択を迫られたとき、どう生きるべきかと問いかける本作。メンバーは、ファンタジーとリアルの間を行き来しながら、1枚1枚、レイヤーを重ねるように奥深い世界を構築。エンディングはただただ美しく、5人のハーモニーも聞きごたえ充分だった。
『なんて素敵にピカレスク』と『天使を憐れむ歌。』では、アンサンブルで神戸セラボのメンバーたちも次々と登場する。ミカエルが恋をした人間の女性を演じていたのは誰なのか、こちらも最後までお楽しみに。
お次はライブパート! と、その前に、『なんて素敵にピカレスク』でカポネを怪演した高崎翔太が幕前に登場。芝居とは打って変わってコミカルな言動で会場を盛り上げ、さらに期待感をあおっていく。そして高崎の掛け声でライブスタート!
クリスマスムードたっぷりな神戸セラボのオリジナル曲「Special Holiday」でオープニングを飾り、観客とも声を合わせて早くも会場が一つに。
続いては部活コーナー。まずはボーカリスト・明石侑成、ギタリスト・崎元リスト、ピアニスト・細見奏仁からなる音楽部が「365日のバースデイ」を。曲が進むにつれ3人の呼吸が一つになり、見事なコラボレーションを見せた。
続いてはフラメンコが得意な田中幸真を中心に、髙橋龍ノ介、髙山晴澄も加わったフラメンコ部が登場。頭のてっぺんからつま先まで、全身で情熱的に踊る3人。振付は田中が考案した。
最後はダンス部。中川月碧、石原月斗が持ち前の色香を振りまきながら、今回初めて激しいソロを踊ったという奥村頼斗とともに様々なダンスで魅了。こちらは大人の余裕も醸し出していた。
写真撮影、動画撮影OKのオリジナル曲「いらんことしい」では高崎翔太もステージに登場。メンバーとともに弾けるようなパフォーマンスで会場を沸かせた。MCで高崎が新しい衣装のお披露目でもあると神戸セラボに水を向けると、中川は「個人的に眼鏡も新しくしました!」とアピール。こちらの新衣装、中学生のメンバーは半ズボンとのこと。そんな情報も踏まえてのランウェイタイムもあり、それぞれの個性が輝くウォーキングで盛り上げた。
これからの季節にもぴったりな新曲「CHOCOLATE LOVE」などを経て、一人ずつご挨拶を。今回、それぞれ作品にどう向き合ってきたのか、初日を迎えるまでの日々を振り返った。
最後はおなじみのオリジナル曲「ボクラカラー」を。澄みわたるハイトーンボイスを響かせる明石と奥村。浮遊感のあるダンスでひときわ“浮上”する崎元。一方、石原はクールでエッジを効かせたダンスで魅せる。元気いっぱいながらも、時折大人びた表情を見せる中学生の髙山。同じく中学生の髙橋はスイートな声色とキュートな笑顔で釘付けに。いつもニコニコの田中は、周囲をさらに明るく照らし、細見は歌にピアノにダンスにと大活躍。そしてリーダーの中川は、確かな存在感で神戸セラボを一つにまとめた。「ボクラカラー」ではメンバーの客席降りもあり、会場の盛り上がりも最高潮に。
そんな本公演のあとには連日豪華ゲストが登場するアフタートークも。最後はメンバーによるお見送りもありと、抱えきれないほどのプレゼントをもらった気分にもなった。芝居、ライブを通して、また一つ大きく成長した姿を見せた神戸セラボの9人。一瞬しかない今をめいっぱい駆け抜けた。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=ハヤシマコ