幻に終わった張家界ドローン旅。だ からこそ見えた“撮る視点”の磨き方[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.52
張家界ロケ計画の舞台裏から生まれた「Vlog機材戦略」
5月、私は中国・湖南省の張家界(ちょうかかい)を訪れ、絶景の奇岩群を空撮しながら、Vlog形式で旅の記録を残す予定でした。あの映画「アバター」の舞台とも言われるこの幻想的なエリアで、ドローンとカメラを駆使して映像を仕上げるつもりで、機材も撮影ルートも万全に準備を整えていました。
しかし、出発直前、実家に不幸があり、すべての予定をキャンセルして日本へ戻ることに。長い時間をかけて組み上げてきた旅が実現できなかったのは残念でしたが、その過程で得られた「機材の気づき」は、これからの旅にとって大きな収穫でした。
Xiaomi 15 Ultraの限界を知る—"歩き撮り"という課題
張家界での撮影を想定して、自宅周辺や香港の街中で機材テストを重ねました。
旅の主力カメラとして想定していたのが、Xiaomi 15 Ultraです。静止画・動画・望遠すべてに強く、23mm~100mmの光学域に加え最大400mm相当のデジタルズームも可能で、これまで訪れた松島や沖縄・古宇利島などでも、空撮以外のシーンはほぼこれ一台で対応してきました。
下はほぼすべてをXIAOMI 15 ULTRAで撮影しています。(一部空撮はDJI MINI 4 PRO)
しかし、歩きながらの動画撮影を試してみたところ、手ブレ補正の限界に気づかされました。階段や段差の多い街中では映像が大きく揺れ、見ていて酔いそうになるレベル。Vlogとして成立させるには、このままでは厳しいと判断しました。
実際にXiaomi 15 Ultraを歩きながら撮った映像をご覧ください。
Insta360 X5の導入で得た"動的な目線"
最初は、すでに所有している Osmo Pocket 3 で歩き撮りをカバーすることも考えました。
ジンバル搭載で手ブレには非常に強く、暗所や室内でも安心感があります。ただし、実際にテスト撮影をしてみると、張家界のようなスケールの大きな自然地形を歩きながら撮影するには、やや画角が狭く、動きの自由度も限られると感じました。
特に、岩の間を縫うような構図では、もう少し「周囲の広がり」や「撮影後の構図の調整」ができるカメラの方が相性が良いと判断しました。
そこで選んだのが、Insta360 X5です。360度撮影により、あとから自由に構図を決められる。これにより、撮影時は「どこを向けるか」にとらわれず、あとでじっくり構成を考えることができるようになります。
香港のビル街でテストしたところ、滑らかな歩行映像と自然な第三者視点のような見せ方が可能で、「この視点は旅Vlogに必要不可欠だ」と確信しました。
次の動画は、手元撮影はXiaomi 15 Ultra、街歩きはInsta360 X5で撮影しています。
やはり、ドローンは欠かせない
地上の映像だけでは、その街の全体像や地形の特徴はどうしても伝わりづらいものです。
だからこそ、空からの一枚の映像が持つ力は大きい。街の密度や山のかたち、自然と人工物の対比などを、言葉なくして伝えてくれるのが、ドローンの映像です。
[caption id="attachment_115779" align="aligncenter" width="1280"]
先日の沖縄 でDJI MINI 4 PRO で撮影した古宇利大橋[/caption]
私にとっての信頼の相棒はやはり、DJI Mini 4 Pro。軽量で、機内持ち込みも可能。NDフィルターやLog撮影にも対応し、編集耐性も高い。天候にもよりますが、旅における"空からの語り手" として、常に持っていたい存在です。
行けなかった張家界のスケール感は、やはり地図で見るとよりイメージしやすいかもしれません。
実際に私が撮影候補地として想定していたエリアのひとつ、「張家界国家森林公園(武陵源)」の 位置はこちらです:
Google Mapsで張家界国家森林公園を開く
理想のVlog撮影体制:「2+1」(+1)
今回の検証を通じて、私の中で今後のVlog的な旅撮影における理想の機材構成が明確になってきました。基本は、3視点を押さえる「2+1」体制。持ち物に余裕がある場合には「2+1+1」として臨むのが理想です。
基本:2+1 体制
Xiaomi 15 Ultra:静止画/動画/望遠/スナップ撮影のベースカメラInsta360 X5:動きのある"動的視点カメラ"DJI Mini 4 Pro:空から全体を伝える空撮カメラ
余裕がある場合に加える:+1
Osmo Pocket 3:室内・暗所・狭所での安定補助的カメラ
次の旅のための、今回の気づき
張家界の旅は実現しませんでしたが、それによってかえって「自分にとって旅とは」「記録とは何か」という根本に立ち返る時間を持てました。今回見えてきたVlog撮影の機材バランスと視点の使い分けは、これからの旅、そしてANAのSFC修行の記録にも大きな力になってくれると感じています。
まとめ:行けなかったからこそ、見えてきたこと
旅の映像を記録するというのは、単に"記録する"だけではなく、"どの視点でどう切り取るか"の積み重ねだと思います。
地上でのリアルな瞬間を Xiaomi 15 Ultra で動きのある移動シーンを Insta360 X5 で街全体の文脈を DJI Mini 4 Pro で環境に応じて Osmo Pocket 3 で補完
それぞれの機材に得意分野があり、それをうまく組み合わせることで、旅の記録がより立体的で奥行きのあるものになります。
近いうちに、改めて張家界を訪れたいという思いは変わりません。
また、現在進めているANAのSFC修行でも、今回の機材体制を活かすことで、移動の記録や訪れ た街の表情を、よりしっかりと映像に残せると感じています。
行けなかったことは残念でしたが、その分、次の旅に向けた準備は整いつつあります。この先も、「旅を記録する」という視点で、機材とともに旅を続けていきたいと思います。