「ホルムズ海峡封鎖」の可能性は極めて低い イランと中国の依存関係
6月24日の「おはよう寺ちゃん」（文化放送）では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、ホルムズ海峡封鎖について意見を交わした。
イランの国家財政は事実上、中国に依存している
米国のドナルド・トランプ大統領は、イランに対する米国の攻撃について、即座に「目覚ましい軍事的成果」と称賛し、イランの核施設は「完全に壊滅した」と語った。ただ、攻撃の成果を完全に評価するには時期尚早だという声も出ている。
イランは今回のような攻撃から身を守るため、核施設の多くをフォルドウの山岳地帯を含む地下深くに埋設している。
イランの国営通信は6月22日、米軍の攻撃に反発する保守強硬派が多数を占めるイラン国会が、原油輸送の要衝ホルムズ海峡の封鎖を求める方針を承認したと報じた。最終決定は国防・外交政策全般を統括する最高安全保障委員会（SNSC）または最高指導者ハメネイ師に委ねられる。
「そしてイラン側はアメリカ軍基地に報復と取れる攻撃を行った、という流れがありますが、田中さんこの辺りはいかがでしょうか？」（寺島アナ）
「一番最悪なのはホルムズ海峡封鎖で、日本への影響でいえば石油のかなりの部分が一時的に手に入らなくなってしまう、というようなことを警戒している人がいるんですが……。そういった最悪シナリオは当初から“可能性が低いだろう”と思われていました。現状の進行を見てみるとトランプ大統領がSNSで、事実上の手打ちをするみたいなことを言っているんですよ」（田中氏）
「そうとも取れるような発言をしているんですね」（寺島アナ）
「イラン側もカタールの米軍基地への攻撃を事前にカタール側に伝えていた、と。当然カタールに伝えればアメリカ側に話がいくに決まっていますから、アメリカに伝えたことになります。打ち込んだミサイルは象徴的な意味で、アメリカのバンカーバスターと同じ本数である、と」（田中氏）
「14発ですね」（寺島アナ）
「イランも“限定的にやるよ”と。アメリカ側もトランプ大統領のSNSの発言のように限定的である、と。そういったことを受けて、いま石油の先物価格が急激に減少して、この数時間で約9%低下したわけですよ。今回のイスラエルとイランの戦争状態が始まる直前くらいには落ちているわけです。そういったことを考えると、市場からすると一時期のような“ホルムズ海峡封鎖”みたいなことを含んだ悲観シナリオは大幅に後退した、というのが今のところの流れじゃないかと思います」（田中氏）
ペルシャ湾の入り口に位置するホルムズ海峡は、世界で1日に消費される原油の約20％が通過する供給の大動脈。原油輸入の9割以上を中東に依存する日本へのタンカーの8割が通過するとされる。封鎖されれば日本のエネルギー調達に大きな影響が出るのは確実だ。
「イランはこれまでも“核開発は飽くまでも平和目的だ”と言っていて、本来の原発ですと3～5%の濃縮で済むところ、後発の原発でも5～20%の濃縮度でいけるわけですが、それを60%にしていたところがあります」（寺島アナ）
「核兵器開発をしよう、という意図はあったんじゃないですかね？ それに対してイスラエル側が先制攻撃をかけたのは、イスラエルにとっては非常に脅威として感じている、と。アメリカ側も共同してバンカーバスターを打ち込んだのは、同じように脅威を感じているということなんでしょうけど。少なくともイランとアメリカの間では限定的にやるよ、って形ですが、不確定要素としてはイスラエルですよね。イスラエルがこの2国の対応を見て、今後どう案を練っているのか？ イスラエルのネタニヤフ政権は今回の攻撃で国内的にはかなり支持を固めた、という見方もありますので。それをさらに強めていくとしたらイラン側に対して強硬姿勢を見せることになります。こういったことが不確実要素になるかもしれません」（田中氏）
田中氏はイランがホルムズ海峡を封鎖する可能性は極めて低いと指摘。
「経済に話を戻すと、日本のマスコミは“ホルムズ海峡封鎖の可能性”など言いますが、これは日本にとって一番避けたいことですよね。日本の最新の石油備蓄数は247日分くらいなんです。ただ石油っていろんな用途がありますから、すべての用途に十分対応できるか、というとそうではないんです。だからホルムズ海峡封鎖なんてなったら、日本の経済が存亡の危機なんですが……。実際には、そういった極端なシナリオは当初から無いだろうと。なぜかというとイランは石油収入にかなり依存しているんです。国家予算のうち国民からの税金以上に石油収入によって国家財政を回しています。その大半は中国なんです。イランと中国の仲は非常に良いですから、イランの国家財政は事実上、中国に依存しているっていう形ですよ。それを自ら首を絞める形になるホルムズ海峡封鎖ってことになるとしたら、それは現体制が崩壊直前で軍部やテロ組織をコントロールできなくなったときに……。ってことがあるかもしれないけど、その可能性は極めて低いと思います」（田中氏）
〈出典〉
【分析】イラン核施設に被害、だが核開発の競争は加速した可能性も | CNN(https://www.cnn.co.jp/world/35234609.html)
ホルムズ海峡封鎖「承認」 イラン国会、決定はまだ │ 東京新聞（https://www.tokyo-np.co.jp/article/413795）
