昇格を目指す藤枝MYFCが“静岡県勢決戦”でJ2首位の清水エスパルスに突き付けられたもの
藤枝MYFCはアウエーのIAIスタジアム日本平で、清水エスパルスとの“静岡県勢決戦”に挑んだが、力およばず1−0で敗れた。昨年は5−0と大敗した相手でもあり、スコアだけ見れば接戦だが、須藤大輔監督も「0−5で負けたほうが良いとまでは言えないが、もっと理想を掲げながらやっていかなければいけない」と認める通り、内容面でスコア以上の差が見られたのは確かだ。
18対4というシュート数が示す通り、チャンスの数でも清水が圧倒的だった。藤枝は前半44分にエースの矢村健が清水ゴールを脅かし、GK権田修一の間一髪のビッグセーブに遭うなど、勝機が全く無かったわけではない。
しかし、トータルで自分たちらしさを出せず、首位を走る清水との差を見せつけられた。プレーオフ圏内の6位以上、そしてJ1昇格を目指す藤枝にとって、この試合が後半戦に向かうための教訓になったことは間違いない。
主将の杉田「完敗。相手のペースがずっと続いて…」
キャプテンの杉田真彦は「完敗ですね。何もできなかったわけじゃないですけど、相手のペースがずっと続いて。自分たちのサッカーができなかったというのが明確に見えた」と振り返る。
大きな理由の一つは、自分たちでボールを保持して攻められず、得意とは言えないロングボールが多くなってしまったことだ。
もちろんロングボールも意図して使えば有効だが、藤枝と同じ3−4−2−1でシステムを噛み合わせてきた清水に対して、簡単に蹴ってセカンドボールを拾われて、そこから清水の攻撃を受ける悪循環に陥った。もちろん最初のうちはスタジアムの雰囲気に飲まれたり、清水の圧力に押されるのは想定できたこと。問題なのはその状況を90分の中で、ほとんど変えられなかったことだろう。
「4バックの方が自分たちは嫌なのに相手は3バックで来た。個人のところで絶対に対処しよう、チームより個人で勝とうみたいなことを(相手から)感じました」
杉田はそう振り返るが、清水は守備で藤枝をマンツーマン気味にはめながら、攻撃に転じると逆に素早くボールを動かして即時奪回を狙う藤枝の守備を外し、ウイングバックの背後などを狙ってきた。
後半22分にもたらされた北川航也の決勝ゴールは象徴的だった。藤枝側のロングボールを左の山原怜音が拾ったところからプレスのズレを突かれ、最も危険な乾貴士をフリーにしてしまった。
杉田は「やってるときはなぜあそこがフリーなんだという感じになっちゃったんですけど、ああいうところのマネージメントが足りない。乾選手はああいうのを常に狙っていて、自分たちのウィークポイントを見極めていた。それに気づけなかった自分たちもいた」と振り返る。
このシーンではプレスがハマらない状況だった。3バック右の川島將が前重心になった背後で乾、ドウグラス・タンキ、北川の3枚に、山原康太郎と中川創の2人で対応しなければいけなくなった時点で、ほぼほぼ詰んでしまったところがある。
前から守備に行く時はそのままウイングバックが高い位置を取るが、相手ボールの時は基本的に5−4−1で構えてからコンパクトにプレッシャーをかけていくのが藤枝の守備だ。
しかし、ロングボールが増えると全体が間延びして、セカンドボールからそのままウイングバックの背後を狙われるのは藤枝にとってよくない状況と言える。
「だからこそボールを保持しなきゃいけない。相手に渡しちゃいけないところだと思います」と杉田。この得点シーン以外にも、右サイドの北爪健吾に縦突破を許して、何度も危ないシーンを迎えており、内容面を振り返ればむしろ、よく1失点で済んだという結果だった。
「もっとボールを動かすのがわれわれのスタイル」と自負する須藤監督は試合後のロッカールームで「もっともっと我々の時間を作らなきゃいけない。0−0でOKだとか、やられてもOKだとか、そういうマインドで片づけてしまっては成長がない」と選手たちに伝えたという。
清水と同水準の強度を藤枝にぶつけてくるチームも、アウエーのチームを飲み込むようなスタジアムの雰囲気も、今後の戦いで感じることはあまりないかもしれない。しかし、藤枝が目指すステージを考えれば、こうした相手にもビビることなく向き合いながら、自分たちがやるべきプレーを繰り出していくことが求められる。
そのためにはメンタル面はもちろん、技術面、予測面でもベースアップしていく必要があるだろう。ちょうどシーズンの折り返しに、そうした基準を同県の首位チームに突き付けられたことが、藤枝にとって大きな糧となるはずだ。