『アマチュア』ラミ・マレックが爆発に怯む演技は『ダークナイト』ジョーカー病院爆破シーンを参考にしている
『ボヘミアン・ラプソディ』ラミ・マレックが殺しの“アマチュア”ながら壮絶な復讐劇に挑むスパイ・スリラー映画『アマチュア』から公開されている予告編の最後には、マレックが演じる主人公チャーリー・ヘラーが、倉庫か工場のような場所で敵対者を拘束し、歩き去りながら背後で爆発を起こす瞬間がある。最初は堂々と歩き去ろうとしていたつもりのチャーリーは、自分で起こした爆発に自分で驚き、身をすくませて走って逃げる。
この怯む演技は、監督作『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーの名場面を参考にしているとマレックは認めている。同作で犯罪道化師ジョーカーは看護師に扮してゴッサム中央病院を乗っ取り、院内に仕掛けられた爆弾を次々と爆破しながら病院を立ち去る。正面道路に出たところで、手に持っていた起爆装置を起動させるのだが、ボタンを何度か押しても反応しない。カチカチ、カチと押し続けると、背後で大きな爆発が起こり、ジョーカー自身もビックリして走り去るという有名なシーンだ。
マレックは『アマチュア』での爆破シーンにて、「ヒース・レジャーのことを考えさせられた」と米掲載の記事に語っていた。「ジョーカーのようなキャラクターでさえ、爆発に怯むわけです。だから、ああいったものから立ち去るときに、瞬きもしないというのは現実味がない。僕たちは、できるだけリアルなものを目指したのです」。
この度マレックは米にて、同エピソードについて改めて言及。「演技の観点からそういった瞬間を見ると、“背後で何かが爆発しているような日に、俳優はフィジカル的にどうすればいいんだろう?ただ歩き去るというのは、ほぼ不可能だろう”といつも考えていました」と語っている。
「そういうことをするにはどう訓練するのだろうと考えた時に、ノーラン映画はカメラの前で全てを実際に撮影するんだよなと思ったのです。だから、ジョーカーのような人物でも怯むのだから、その瞬間に与えられた信ぴょう性というのが、僕の中に残ったんです。」
『アマチュア』で演じたチャーリーという男は、戦闘経験を持たないCIA分析官だから、実際の爆破を初めて身近で体感して身をよじらせるのは極めて自然な反応だ。マレックは、そこにリアリティを追求するチャンスがあると感じた。
「僕がとても尊敬する俳優たちが、瞬きをせず、あるいは振り返りもせず、まるでテニスボールのように手榴弾を後ろに放り投げるのに、何テイクも費やしたと考えているのを見たことがあります。そこで僕はそのアンチテーゼとして、何がみんなを笑わせるのかを考えた。怯えるのには、ある意味、あまりにもあり得なさそうだからこそ、不条理さがあります。だからこそ筋が通っていて、それこそ僕たちがあらゆる側面から本作の物語に取り入れようとしたリアルさなのです。」
劇中でチャーリーは、卓越した戦闘スキルを持たないからこそ、持ち前の頭脳と分析官として培った知識を駆使して、妻を殺したテロリストへの復讐を企てる。本編では、聡明なマレックが思慮をめぐらせて完成させたリアルなキャラクター像が、スリリングな物語と共に堪能できる。
映画『アマチュア』は公開中。