本能寺の変はなぜ起きた?
メインパーソナリティ・パンサー向井の周りには、個性豊かなパートナーが勢ぞろい。さらに、お笑い芸人やタレント、アーティストなど、愉快 なゲストが毎日やってきます。
ふらっと こども電話相談室
2025年2月5日放送
パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q.明智光秀が起こした本能寺の変の理由はなんだったと考えますか?(東京都 にこちゃん 12歳 小学6年生)
(回答した先生)加来耕三さん/歴史作家
向井おにいさん:今日は歴史についての質問っていうことなんですけど、にこちゃんは歴史が好きなんですか?
にこちゃん:大好きです。特に戦国時代ですね。
向井おにいさん:戦国時代、面白いよね。好きな武将とかいるんですか?
にこちゃん:やっぱり織田信長がいちばんです。
向井おにいさん:どんなところが好きですか?
にこちゃん:まわりの敵を恐れずにどんどん我が道をゆくスタイルがすごいかっこいいなと思いました。
向井おにいさん:そうだよね。
にこちゃん:はい!
向井おにいさん:じゃあ、にこちゃんの聞きたいことも信長に関してのことなんでしょうか?
にこちゃん:はい。明智光秀が起こした本能寺の変の理由はなんだったと考えますか? あと、織田信長はうつけ者と聞きましたが、今で言うとどのぐらいヤバかったんでしょうか(笑)。
向井おにいさん:ははは、なるほどね(笑)。さあ今日はですね、歴史に詳しい加来耕三先生が来ているので、ちょっと話を聞いて・・・。
にこちゃん:ああっ! 加来先生!
向井おにいさん:えっ、知ってる?
にこちゃん:はい、ユーチューブですごい、勉強させてもらってます。
向井おにいさん:すごいねえ。
にこちゃん:ひゃあー!
向井おにいさん:その加来先生と今からお話できるから。
にこちゃん:はい、よろしくお願いします!
向井おにいさん:すごい、にこちゃん本当に歴史が好きなんだね。
にこちゃん:わあ!(笑)。
向井おにいさん:じゃあ加来先生、お願いいたします。
加来先生:はい、加来耕三です。
にこちゃん:こんにちはー!
向井おにいさん:すごいテンション上がってる(笑)。
にこちゃん:うれしいです、ほんとに。
加来先生:にこちゃんは織田信長と明智光秀はどっちが年上だと思う?
にこちゃん:明智光秀が年上だったと聞いてます。
加来先生:正解ですね。
向井おにいさん:すごい。
にこちゃん:ふふっ。
加来先生:信長が生きていた時代の記録では、明智光秀は最低でも6歳年上、最高で18歳年上。
にこちゃん:18歳!? そんなにですか?
加来先生:それだけ幅があるんですね。明智光秀という人は何年に生まれて何歳で亡くなったかわからないわけですね。
向井おにいさん:なるほど。
加来先生:それで非常に重要なのは、よく小説なんかでは黒幕がいて明智光秀を操ってという話があるんだけれども、私はそれはないと思っているんです。
にこちゃん:えっ、なんですか?
加来先生:三日天下という言葉がありますよね。明智光秀が信長を倒して天下を取ったのは実質11日間。わずかな期間だということで三日天下というふうに言うんですけども、前もって企んでいろいろ計画を練っていたら11日間で崩壊したりすることはないだろうと。だから、黒幕がいてという話は小説では面白いかもしれませんけども、歴史の世界ではちょっと考えにくいんですね。
にこちゃん:はい。
加来先生:意外なんですけども、織田信長が織田家の中でいちばん頼りにしていた武将は明智光秀なんですよ。
にこちゃん:えっ、そうなんですか?
加来先生:うん。いちばん初めに城を渡して「城持ち」にしたのは・・・。城持ちというのはのちに大名という言い方をしますけれども、初めに城持ちにしたのは明智光秀なんですよ。
にこちゃん:確か、坂本城。
加来先生:おっ、よく勉強してますねえ。もうひとつ、亀山城がある。
にこちゃん:亀山城・・・。
加来先生:要するに、京を東西から扼(やく)することができる二つの城を光秀に任せているんです(扼するとは「重要な所を押さえる」という意味です)。
にこちゃん:へえー。
加来先生:そして光秀という人は信長の軍団の幹部としてはいちばん遅れてやってきた人なんですよね。にもかかわらず、信長は光秀をいちばん初めに城持ちの待遇にして、城も二つ渡して、京都で馬を集めてパレードをやったんですけれどもそのときの総指揮を全部任せたのも光秀なんですね。
にこちゃん:すごいですね(笑)。
加来先生:光秀は本当に信長にいちばん信任されていて、信長はなにかあると「光秀、光秀」なんですよ。そこで考えてほしいんですけれども、光秀は信長より6歳ないし18歳も年上です。だんだん疲れてくるわけです。
にこちゃん:ああ、おじいちゃんですもんね。
加来先生:そうなんです。光秀さんは大病もしていて、寝込んだこともあるんですね。
にこちゃん:寝込んじゃうんですか。
加来先生:はい。この時代の武将というのは、自分の子どもが跡を取って代わってくれないとなかなか死ねないわけです。光秀には玉という娘がいますね。細川ガラシャのことです。光秀の長男は玉さんの下にいるんですね。そうすると光秀さんはよっぽど頑張って長いこと働かないと、長男にバトンタッチできないわけです。
にこちゃん:はい。
加来先生:大病はしているし、信長よりもはるかに年上だし、疲れてきたから本当はもうやめたいわけですよね。でも信長は信任していてなにかあると「光秀さん、光秀さん」と来るわけですね。光秀はとても疲れてきたんではないかと思いますねえ。
にこちゃん:ああー、そうですよね。
加来先生:うん。光秀さんという人は非常に真面目な人であんまり愚痴をこぼしたりすることもできなくて、信長さんと揉めてもその話ができるのは奥さんだけなんですね。煕子(ひろこ)さんっていう奥さんがいるんですけども、煕子さんは病気で光秀さんより先に亡くなってしまうんです。
にこちゃん:そうなんですか!?
加来先生:光秀さんは話し相手がいなくなるわけですよ。
にこちゃん:ショックですよね。
加来先生:娘の玉さんも結婚して細川家に行ってしまいますでしょ。そうすると光秀さんは孤独になってくるわけですね。
にこちゃん:つらいですね。
加来先生:つらいと思うなあ。でも、そこのところが信長さんはわからなかったんじゃないかな。
にこちゃん:ああー、わからなかったんですね。
加来先生:光秀さんに「もう引退して、ちょっとゆっくりしたらどうか」と言ってあげればよかったのに、それを言わなかったわけですね。信長自身が死ぬまで仕事をした人ですから。
にこちゃん:そのすれ違いだ。
加来先生:そう、結局そのすれ違いで、いちばん仲が良かったがゆえに、パーンと割れたんではないかな。
にこちゃん:ああ・・・。全部つながりますね。
加来先生:そうなんです。それで、信長の最後のセリフが「是非に及ばず」。
にこちゃん:かっこいいですよね!
加来先生:あ、知ってますか? すごいねえ。よく勉強してますねえ、にこちゃんは。
にこちゃん:ありがとうございます(笑)。
加来先生:是非に及ばずというのは、本能寺で襲われて「敵は誰か?」と聞いたときに、明智光秀だと知った信長が「それならもう仕方がない」と言ったわけですね。是非に及ばず、と。信長はここで初めて理解したのではないかな。
にこちゃん:ああー。
加来先生:光秀はちょっと疲れすぎていたんじゃないか、仕事を振りすぎたんじゃないか。そういうことに初めて気がついたんじゃないのかなあ。
にこちゃん:なるほど、なるほど。
(回答者プロフィール)加来耕三(かく・こうぞう)さん。歴史作家。赤穂浪士の大石内蔵助も教えた東軍流という古流剣術の宗家に生まれ、歴史研究の道に進みました。歴史上の人物の功績や地域の歴史を掘り起こし、これまでに350冊以上の本を書いています。監修を務めた『コミック版 日本の歴史』シリーズは累計180万部以上のロングセラー。テレビ・ラジオへの出演も多く、歴史番組の時代考証など幅広く活躍しています。
(TBSラジオ『パンサー向井の#ふらっと』より抜粋)